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20時限目 女教師、制裁される

ラディールがエルトにキスしているところは、全校生徒に見られていた


「キャアアア!ラディール様、大胆~!」

「くそ!うらやましいぜ!」


などの声が出ていた


二人が立ち上がろうとしたときだった


「伏せて!」

エルトはラディールに声をかけてその場でしゃがむ


頭上から火球(ファイアーボール)が飛んできたのだ


「だ、誰ですか!?今の魔法を放ったのは?」


エルトたちの視線の先にいたのは、涙を流しながらゼェゼェと息を切らす女教師 ルビル=ミンスだ

エルトがいたクラスの担任だ


「あ、危ないじゃないですか!ルビル先生!」


ルビルの第一声が

「この、人殺し!」


「人殺し?エルトがですか?」

ラディールはエルトを後ろでガードする


「そうよ!退学した身でありながら、生徒を殺すなんてありえないわ!」


どうやら、ルビルは国王が屋上で話したのをほとんど聞いていなかったようだ


「先生?エルトは、ルディアたちからいじめを受けていたんですよ?取り巻きはエルトに謝りましたけど、ルディアだけは謝りませんでした。それどころか、自分で魔物と化して私たちを襲おうとしたんですよ?それを、エルトが食い止めてくれたんです。これのどこが人殺しなんですか?」


「ラディールさんには聞いてないわ!私は、そこのクソガキに聞いてるの!!」


王女はゆらりと前に出て

「クソガキ…?エルトの事をクソガキですって…?恩人に向かっての言葉として相応しいのですか?先生とは思えない発言ですね」

「そやそや!ウチらの命を救ってくれた人に何ちゅうこと言うてんねん!?」

「聞き捨てならねえな」

「何を根拠にクソガキなんて言う汚い言葉を使うんですの?」

「最低ね」


姫たちもエルトの前に出てきた


「な、何よ?だって、そのクソガキって、スラム街の出身でしょ?」

「先生?誰から聞いてスラム街と決めつけたんですか?」

「…えっと、それは…」

「そもそも、エルトはデソル村の出身ですよ?もうその村はないですけど…」

「…は?嘘を言わないで頂戴!」

「嘘やあらへんで。国王陛下がちゃーんと調べてくれたから間違いないで」

「お父様が嘘を仰っているとでも?」

「そ、そんなことは…」


ラディールはもしかしてと思い、カマをかける


「先生自身が、スラム街の出身じゃないですか?」


ルビルはドキッとする


その反応で姫たちは確信した


「自分がスラム街の出身だとバレたくないから、魔力値が1のエルトがスラム街の出身だと嘘の情報をルディアたちに広めたんですね?」

「で、出鱈目を言わないで頂戴!何を証拠に!?」

「ここにはないわ。でも、()()()()()にあるはずよ。ということで、賢者様お願いします」

「合点じゃ」


オレイアスはルビルが逃げないよう、束縛でガッチリと固定


無属性魔法 心の声(ボイス・ハート)をルビルにかける

全校生徒に聞こえるように拡声も同時にかけた



『冗談じゃないわ、魔力こそが学園の真価を問うのよ。それなのに、あの学園長、たった1しかないエルトとかいう男を入学させたっていうじゃない!そんな生徒、この学園に入らないわ。でも、私はスラムの出身だからいつばれてもおかしくない。それでも、この学園にいたい。…そうだわ、エルトを利用して、彼をスラム出身だとルディア様たちに伝えれば、自分の危機が免れる。よし、さっそくルディア様に報告しないと』


とか


『やっと、あのクソガキが去ってくれて良かったわ。でも、まだ終わってないわ。トップ5とか呼ばれている姫どもをどうにかしないと。あの人たちだって、私の事を疑うかもしれない。そうなる前に、何とか手を打たないと。ルディア様と共同して、あの姫たちを誰かに殺してもらおうかしら。ルディア様こそが、次の国王にふさわしいお方よ』


といった心の声が出てきた


魔法が終わると、ルビルはガクガク震えていた


「ルディア以上に最低な女ですね…。心酔しているルディアのために…、卑怯な手を使うなんて」

「エルトをダシにしてまでな…」

「いい人だと思っていたのに、性悪女なんですのね」

姫たちから蔑まれる


それ以上に怒っていたのは、国王 オリバートだった


「ルビル、お前は教師としての自覚が足りていないな。それに、私の娘たちを殺そうと画策したんだな」

「こ、国王陛下…、こ、これは…賢者とかいう自称を名乗ったただの女の芝居で…」

と慌てふためいたせいで、言い訳もあいまいだった


オリバートは

「黙れ!!」

さらに怒りを爆発させる


「お前は教師として、いや、人間として失格だ。この場にて、教師の資格を剥奪、そして、犯罪者奴隷として一生過ごすことを命ずる」


犯罪者奴隷は、奴隷の中でも最も厳しい奴隷だ


たいていの奴隷は解放されて数年何の犯罪もなく過ごせば、社会的に復帰が認められるが

犯罪者奴隷はそれが一切ない


脱出不可能の監獄でほとんど不眠不休で働かされるという過酷な環境で過ごすのだ


「そ、それだけはご勘弁を…、わ、私に、せめてもの猶予を…」


ルビルは土下座しながら国王に懇願するが


「猶予などない。決定事項だ。もうお前の事を庇う者はいない」

と冷たく突き放す


ルビルの人生は一気に絶望へと落ちていった


ルビルは、護衛たちに取り押さえられ、そのまま馬車で王城の地下牢に連行された



その後


学園長 サロアがエルトに近づいて


「エルト、すまない!教師や生徒の身勝手な行動に気付かず、君を不幸にさせてしまった…」

と深々と頭を下げて謝罪した


それに感化された生徒たちからも

「ごめんなさい…」

「本当は、いじめなんてしたくなかった…」

「俺たちの事、恨んでも構わない…」

と本音を告げた


それに対してエルトも

「いや、もう過ぎたことで、僕自身が気にしていないんですよ。そもそも、僕がこの学園に通うこと自体が間違いだったんです。だから、いじめなんて関係ないんです」

本音で語った


ある意味、学園の傷を広げないような言い方でもあった


翌日から学園は、国王の命により1週間休学となった

それは、全学園関係者の自宅謹慎処分を意味していた

どうも、茂美坂 時治です

随時更新します

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