114時限目 少年、激昂する
闇ギルドの拠点は、残り一つとなった
「ここが最後じゃ」
「ジャーミル=バルロンもいるはず…。でも、何だろう…。この魔力の感じ…、死を誘うような負の魔力だよ」
「厄介な相手かもしれんの」
しっかりと気を持てとオレイアスが励まし
ドアを蹴り破る
その奥に鎮座していたのは黒いマントを身に纏った男
「待ってたぜ、お二人さん」
異様なオーラが二人の肌をピリピリさせた
この男…強い
直感的に構える仕草をする
「おいおい、俺はただの見物客だ。てめえらの相手はこいつだ」
男の後ろからヌッと現れた鎧姿の魔物
「首が…ない…!?」
「もしや、そやつデュラハンか!?」
「ご名答」
デュラハン
『首なしの騎士』の異名を持つ魔物
戦いの最中首を斬られて死亡したが
強い怨念を宿す魔物として復活し、斬られた首を求めているため常に彷徨い続けている
そして、尋常じゃないほどの強さを持っており
冒険者ギルドでも最高ランクのSランクに指定されている
負の魔力を持っているのは、こいつだったのか…
しかし、それ以上にオレイアスは驚いていた
「あり得ぬ!デュラハンを使役させるのは不可能なはず!」
「普通ならそうだ。だが、俺は闇属性の魔法に特化していてな、隷属化が俺の十八番だ」
「まさか…」
「そのまさかだ。俺が隷属化できるのは魔物だけ。つまり、デュラハンだろうがどんな魔物だろうが俺にとっては、玩具に過ぎない」
「玩具…だと?命を何だと思ってるんだ!!」
男の言葉にエルトがキレる
「命の価値なんざ、俺はこれっぽっちも興味ねえ。むしろ俺は、消えていく命を見るのが大好きでね。てめえらに待つのは、死だけだ」
パチンと指を鳴らした直後、デュラハンがとてつもないスピードで二人に襲い掛かる
振り下ろした剣が床にめり込む
その床は大理石
とても硬い石として有名だが、デュラハンはスライムを斬るかのようにサクッと斬ってしまうのだ
それは、いかに高ランク冒険者が持っている剣や斧といった武器も簡単に破壊してしまう
これが、Sランクに指定されている所以の一つである
デュラハンの武器に対抗できるのは、オリハルコンと呼ばれる特殊な魔力を放つ鉱石を混ぜた武器のみ
しかし、オリハルコンは滅多に発掘されないため、幻の鉱石として重宝され
僅か1グラムでも金貨5枚は下らないほどの値打ちがある
☆
エルトやオレイアスはその武器は持っていない
あるのはデュアル・ランスと鎖鎌
魔法を放っても、軌道を完璧に読まれ避けられる
このままではジリ貧になってしまう
攻撃を避けたエルトは、不意に躓いてしまう
それは、先ほどデュラハンが斬った床
もちろん、デュラハンはそのスキを見逃すはずがない
エルトに攻撃する
「しまった!!」
魔法で対抗しようとしても、発動のタイミングが遅かった
しかし、オレイアスがそれよりも速いスピードでエルトを抱え回避する
「ふぅ、間一髪じゃの」
「…あ、ありがとう」
「礼はよい。だが、奴の力は想像以上じゃの」
賢者すら苦戦する相手
分が悪いことはエルトも分かっていた
その時、2人の脳裏にある記憶が流れ込んできた
☆
これは…デュラハンの記憶?
「驚いたぜ。伝説の魔物 デュラハンにであるなんてラッキーだ!」
敵とみなしたデュラハンは、攻撃するが
「隷属化」
突然、体が言うことを聞いてくれなくなった
「へへっ、これでお前は俺の物だ。お前の意志に関係なく、俺の命令に従えばいい」
抵抗するが、全く無意味
そして、耳元でこう囁いた
「お前みたいな魔物、いくらでもいるんだからな。命なんてな、いくらでも変えられるんだよ。お前が死んでも俺は全然気にしない。好きなだけ使って好きなだけ捨てる。いつでも用済みに出来るんだからな」
そう言って高笑いした
その記憶を見たエルトは、このデュラハンは助けてほしいと察した
☆
「さあ、デュラハン!あいつらに止めを刺してやれ!」
その時、高濃度の魔力が充満していく
「な、何だ…この恐ろしい程の魔力は」
魔力の正体は、エルトが放つ魔力
「こやつ…、怒りで底上げしたのか?」
さらに魔力の濃度が高まっていく
「命の価値をゼロとみなすお前に、生きる資格などない」
普段のエルトとは思えないほど低い声で怒りの目を男に向けた
男だけでなく、デュラハンも怖気づく
2人に攻撃を仕掛けるのかと思いきや、
男だけに焦点を絞り、さらに圧をかけ
解呪
「何だ、何もしてこないじゃねえか!デュラハン、やっちまえ!!」
しかし、男の命令にデュラハンは動こうとしない
「何で動かねえだよ!!とっととやっちまえ!!」」
「無駄だよ。隷属化を無効化したから」
「なっ!?てめえ、許さねえぞ!」
男はもう一度、隷属化の魔法をかけようとするが、
エルトがそれを許すはずがない
男の両腕はすでに消えていた
「いぎゃああああああああああああああ!????お、俺の腕がぁあああああああああ!!!」
「全く見えんかったわ…。怒りでスピードを上げるとは恐ろしい男じゃ…」
賢者も呆気に取られていた
そして、エルトは言った
「デュラハン、無理やり隷属化された落とし前をつける時が来たよ。遠慮はいらないよ」
それを聞いたデュラハンは、男の前に立ち
「ま、待て…。俺を殺すのか…!?俺への恩を忘れたのか!?」
何とも醜い命乞いだ
「望んでもいないことをされたことの恨みはとてつもなく大きい。身をもって知れ」
エルトは冷たく突き放す
デュラハンの剣には怨念が纏っていた
“もうあんたの玩具じゃねえ!!”
最強の二人はその怨念を感じ取った
豪快に振り下ろされた剣は、男を真っ二つに引き裂いた
どうも、茂美坂 時治です。
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