無力な抵抗
鍵を回し、ドアを勢いよく開けると、ベッドに横たえていた身体を起こす女の姿が見えた。すかさずベッドの端に寄り、足を両腕で抱えて身体を縮こまらせている。
「なんだ、そんなに俺が怖いのか?」
ふん、と鼻で笑うと、ラドラスは唇を上げた。歩を進めると、さらにびくりと身体を揺らす。その度に、肩に垂らしている銀色の髪がさらさらと滑り落ちていった。
ニルヴァは慌てて毛布を搔き抱くと、身体に巻きつけるようにして引いた。
「そんなものを被っても、何の意味もない」
ラドラスはベッドに近づくと、毛布を剥ぎ取り、ニルヴァの腕を取った。その痛みにニルヴァの顔が歪む。
「お前は俺の奴隷だ」
「やめてください」
間髪入れず、ニルヴァが震えた声を上げる。
こうして毎回、ラドラスはニルヴァの腕を力一杯に掴み上げる。するとニルヴァの身体は震え始め、そして冷や汗が、額を流れていった。
掴まれた腕に痛みが走る。それは常に青痣として残り、ニルヴァにさらなる苦痛を与えた。
「まだまだ細い。もっと飯を食って、太れ。そうすればもう少し抱き心地も良くなるというものだ」
ラドラスがニヤと笑いながら、テーブルの上を見た。
食べかけのパンが残っている。
「これからは飯は全て、食べろ。一粒でも残してみろ、腕の骨を折ってやる」
腕を掴んでいる手に、ぐっと力を込めた。
ニルヴァはキッと睨みつけ、掴まれた腕を外そうともがいた。けれど、見事な筋肉を持つその太いラドラスの腕は、まるでビクともしない。
ラドラスに力で押さえつけられ、ニルヴァは唇を噛んだ。
「バカめ、俺から逃げられると思うのか」
ベッドの上にニルヴァの身体をなぎ倒し、その上にまたがり、のしかかる。
「いや、やめてください」
暴れる両手を頭の上へと押さえつけ、もう一方の手で頬を押さえられた。
「まるで、ひ弱なウサギのようだ」
はははっと笑うと、ラドラスはニルヴァの唇に、自分の唇を押しつけた。ニルヴァは唇を引き結ぶと、ラドラスは顔を離して言った。
「力を抜け。どこもかしこも力を入れてちゃ、抱き心地が悪い」
ニルヴァの、青い瞳から涙が零れ落ちた。
けれど、ラドラスはそれには構わず、ニルヴァの首筋の唇を這わせていった。