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気づいたことは


「ニルヴァ、ご機嫌はいかがかな?」


王トラウルの城へとやってきて、一ヶ月ほどの時間が過ぎた。


蛇の毒の後遺症で、歩くこともままならなかったニルヴァの足も、今では花畑を走れるほどに回復して、元気を取り戻している。


ベッドに伏している間に、ラドラスとの結婚は解消され、驚いたことにトラウルと結婚することとなっているという。


そのことを聞いた時、驚きはしたが、それと同時に納得もしたのだ。


今回の毒蛇の事件は、ラドラスを慕う侍女カレンの嫉妬からの仕業だった。イロンが毒蛇ではないかと気がつき、カレンを疑ったラドラスが、問い詰めて発覚したと聞く。


ラドラスの城へ来て、わかったことがあった。


それはラドラスが侍女の間で密かに人気がある、ということだ。手のつけられない乱暴者として普段から敬遠されはしていたが、その容姿や恰幅の良さなどから、密かに想っている者も多いようだった。


(私の存在を鬱陶しいと思う人がいても、おかしくない……)


そしてラドラスが多くの女性を愛でていることも、侍女が向ける期待の眼差しから、知った。


(私との結婚なんて、……きっとつまらないと思ったに違いない)


ニルヴァは落胆した。


やはり、自分はどこへ行っても必要とされないのだ、と。


それなのに、今度はサンダンスの王であるトラウルが、ニルヴァを娶ると言い出したのだ。


ニルヴァは、ラドラスとの縁談の時と同じように、最初から半信半疑だった。


(どうして、私なんかを……)


疑いながらも、イロンに確認すると、それは事実だと言う。


「なぜ、こんなことになってしまったのか、という感じだが……」


イロンは苦笑しながら、薬草を煎じている。


「ニルヴァ、お前はトラウルを嫌いか?」


「そんなっ。まさか、そんなことはありません。トラウル様はお優しい方です。こんな私に良くしてくださって……」


だが、自分で言ったのにもかかわらず、その一言で胸の中のもやもやが、その量を増していった。


(もしかして、アイル王国に気兼ねし、私をどうしたらいいのか、持て余しているのかも知れない)


苦味が上がってくる。


ここでも厄介者なのだ、と。


(……早くここを出なければ、お二人のご迷惑になり、このサンダンスに悪い影響を与えてしまうかもしれない)


そう思っていても、後ろ髪を引かれる思いがして、ニルヴァはなぜだろうと考えた。


トラウルは毎日、ニルヴァの部屋へやってきて、ニルヴァの頬や髪を撫でていく。


(トラウル様はお優しく接してくださるのに、どうしてこんなにも物寂しいと思うのだろうか)


ニルヴァは自分でもその理由がわからなかった。


ただ、予感はあった。


陽気の良い日、花畑で花を摘む時、なぜか辺りを見渡してしまうからだ。


ニルヴァの銀の髪をかき混ぜて流れていく風を感じながら、辺りを遠く遠く見渡してみる。そして、何も変わりない景色を見ていると、心がとても落ち込むのだ。


こうして胸いっぱいに抱えた花束を、あのバラのアーチを抜けた場所に持っていき置いておきたい。そんな気持ちに急かされるようになり、自分は一体どうしたのだろうと思ってみたりする。


何の用もないのにイロンの診療所を訪ねたり、その診療所の帰り道に中庭をうろうろと遠回りして帰ったりする自分をおかしく思う。


(私は、……ラドラス様を、探しているのだろうか?)


ようやく、それに気がついた時。


胸がドキドキと高鳴り、顔が火照ってきて、その理由を知った。


(私、ラドラス様にお会いしたいのかな)


あれほど、恐ろしく思っていた存在だというのに、いつのまにか毎日、どこかで偶然にも出会えないかと、探してさえいるのだ。


ニルヴァは驚き、狼狽えてしまった。


(どうしたのだろう、私)


疑問で頭をいっぱいにしながら、きょろきょろと中庭を歩く。


けれど、いつまで経っても結局は、ラドラスには出くわさなかった。


そこにラドラスがニルヴァに会わないようにしている意図のようなものを感じて、ニルヴァはそれだけで重苦しい気持ちになった。


(今回の件で迷惑を掛けて、めんどくさい女だと思われたかも知れない……)


そんな風にラドラスに会えないだろうかと期待しては、結果、落胆するという生活を、ゆるゆると続けていたニルヴァにとって、心がざわつくような事態が、すぐそこまでに迫っていた。



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