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眠る間に


「ニルヴァ、安心してくれ」


眠気が勝って、目が開けられない。


ニルヴァは、うとうととまどろみの中を彷徨っていた。


陽の光のなんと気持ちいい午後。イロンが病人用にと作ってくれた食事を食べ終えたニルヴァは、少しだけベッドで横になり、そして目を瞑った。


イロンは、薬草を買いに市場へと出かけ、しんと静かな診療所にひとり。眠気に負け、夢の中を歩いていると、突然、空から声が聞こえてきた。


ニルヴァはその声に心底ほっとした。幼い頃に聞いたことのある声のような気もして、懐かしみを感じたのもある。


声はとても優しげで、慈しみを含んでいた。


「なにもかも、順調だ。大丈夫、お前は幸せになれる」


本当に? そう問いたかったが、夢の中で身体を揺らすのみだ。心地よい風をまといながら、夢の中をゆらゆらと浮遊する。


「兄上とお前の子は、きっと可愛らしいだろうな。お前も優しい母になり、……」


母? 私が母に?


「家族みんなで、幸せに暮らすんだ」


家族、幸せ。幼い頃からの望み。


それが手に入るのだと言う。


嬉しさが込み上げてきて、幸福感に包まれる。


「兄上はお前を愛し、そしてお前は……」


声が少し変化した。


「お前も、あ、兄上を愛して……」


言葉は続けられる。


「俺など、入りこむ隙間もなくて、……俺はお前をいつまでも、」


泣き声?


「いつまでも想い続けて生きる、のだろうか」


頬になにかが、落ちてきた。


「ニルヴァ、ニルヴァ、最後にお前のキスが欲しい」


そして、なにかが唇に触れた。そして、そのままに触れたまま、そのなにかが言葉を形づくった。


言葉が。するりと口の中から入ってくるような感覚。身体中に広がっていき、隅々までを幸せで満たしていった。


(愛している……)


次には、瞼に落ちてきた水滴。


例え夢の中だとしても、ニルヴァは不思議とそれが涙だということを知っているような気がしていた。



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