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死へと誘う


「きゃあああっっ」


女の金切り声が聞こえてきて、その時ちょうどニルヴァの部屋の前を通り過ぎ歩いていたラドラスは、あまりの切迫した声に何事かと振り返った。


ニルヴァの部屋のドアがバタンと開いて、中から侍女カレンが飛び出してきた。


カレンは廊下でラドラスにかち合うと、あっと声を上げて、咄嗟に口を押さえた。


「カレン、どうしたっ、何があった?」


押さえた口で、カレンはもごもごと聞き取れない声を出す。


「カレンっっ‼︎」


急かされてようやく、カレンが口を開いた。


「ら、ラドラス様っ、大変ですっ、ちょっと来てくださいっ」


カレンに促されて、ラドラスはニルヴァの部屋に入った。


そこには、倒れたイスと、ニルヴァの姿。


「ニルヴァっっ」


ラドラスはすぐさま、駆け寄った。


振り乱れた銀の髪、倒れ伏しているため、顔は見えないが、気を失っているのだろう、ぴくりとも動かない。


「ニルヴァ、どうした? 大丈夫か?」


ニルヴァを抱き起こし、上向きに抱え込んだ。


色を失った蒼白の顔に、言葉を失った。


頬にそっと、触れる。ラドラスの手の体温をするすると奪っていくほどに、その頬は冷たい。


いや、抱えている身体自体が、もはや冷え切っているのだ。


すぐに、ニルヴァの胸に耳を当てる。


とくとくと弱々しい音が、聞こえた気はしたが、その命が消えかけていることは、ラドラスにもすぐに理解できた。


「に、ニルヴァ、」


名前を呼ぶ。だが、その青い瞳は見られない。


「ど、毒を……」


背後で呟いたカレンの声がするりと耳へと入ってきた。


「毒を、お飲みになって……それで、」


「ど、毒だと⁉︎」


ラドラスはニルヴァを抱きかかえて立ち上がった。


その拍子に、ラドラスの視線がテーブルの上に留まる。そこにはラドラスが用意したジュエリーボックスが、ぱかりと蓋を大きく開けた状態で、放置してあった。


中から転がり落ちているのは、ダイヤのリング。


(……これが)


原因か。


衝撃を受けた。今までに受けたことのないような衝撃が、ラドラスを襲った。


(ここまで、俺との結婚を……)


「ん、」


腕の中で苦痛に歪むニルヴァの顔を認めると、ラドラスはショックで動かなくなっていた足をこれでもかというほど、動かした。


長い廊下を走る。


「ニルヴァ、揺れるが少し我慢してくれ」


中庭を目指して、ラドラスは駆けた。

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