強敵
初感想頂きました!
嬉しいです!!
また頑張ります!!!
レベルが上がってからは狩りが非常に楽になった。
HPが上がったからだ。
攻撃を受けたことは転生したばかりに一回しか無いが、あの時でも一回は耐えられたのだから今は計算上七回受けても大丈夫だろう。
こんな単純計算でいいのか分からないし痛いのも嫌なので受けたいとも思わないが、一撃で瀕死にならないということは精神的にかなり楽だ。
そしてもう一つかなり大きいのが幻覚魔法だ。
たぶん狸の標準装備だと思うのだが今まで使おうと思わなかったことで知らなかったのかも知れない。他の野生の狸は生まれた時から使えるのだろうか?
鑑定で発見して以来使おうと思えば使い方が理解できてしまった。レベル1でもかなり使える魔法だ。相手に自分の位置を誤認させる効果がある。所謂「ふっそれは残像だ」的なことがお手軽に魔法でできてしまうのだ。
この魔法を使うことで今まで漁夫の利作戦をしていたがタイマンならゴブリンを倒せるようになっていた。
しかしこれは意外とひどい仕様だと私は思う。私のレベル1の時の貧弱、脆弱、虚弱なステータスの時にこの魔法の存在を知っていたらもっと簡単にレベル上げができたと思うのだ。まして鑑定のスキルを手に入れていなければ未だにこの魔法を使えていないのである。
私は声を大にして言いたい。
(もっと難易度低くてもいいんじゃない!?)
そうこう考え事をしていると従魔のうさぎちゃんが私を鼻先でつつく。
(あーかわいい、癒される!)
ただ単にかわいい動作ではなくこれは敵を見つけた合図だ。
うさぎちゃんについて行くとそこにはゴブリンが1匹。
まずは幻覚魔法を発動させて反対側に私を出現させる。幻覚の私に気が付いたゴブリンが私に背を向けたところに飛びかかり首筋をざっくり。ゴブリンの首から血が勢いよく吹き出して数秒でゴブリンが息絶える。
(ふーっ、そろそろ2匹とかでもいけるんじゃない?)
などと考えている私の横っ腹をうさぎちゃんが激しくつつく。
(褒めて欲しいのかなぁ?愛い奴めー)
振り向くとそこにはゴブリン?がいた。
?をつけたのは今まで倒していたゴブリンとは似ているが明らかに体が大きく腕なども太い。さらには武器も棍棒などではなくちゃんとした剣だし、防具も鉄製のもをつけている。即座に鑑定!
[ゴブリンジェネラル]
レベル2
HP520/620 MP60/60
ノーマルスキル
棍棒術(レベル3)
指揮(レベル2)
剣術(レベル1)
剛力(レベル1)
(やばいっ!格上だ!)
即座に逃げようとするが、ゴブリンジェネラルは剣を抜いて斬りかかってきた。私ではなくうさぎちゃんに。うさぎちゃんのHPではまともに受ければ即死、いや掠っただけでも死んでしまうかもしれない。
私はうさぎちゃんを庇おうとして飛び出そうとしたが、私が動く前にうさぎちゃんはなんとピョンとバックステップでかわしてしまった。
そのまま連続で切りかかってくるが、うさぎちゃんは華麗に避けている。
もともとうさぎちゃんのスピードが速いのと体が小さいのが幸いした。
だが一撃でも当たれば死んでしまうのだ。
私は幻覚魔法でゴブリンジェネラルの気を引いた。
ゴブリンジェネラルがうまく幻覚に釣られて狙いをうさぎちゃんから幻覚へと変えてくれた。
(今だ!うさぎちゃん逃げるよ!!)
しかしうさぎちゃんは逃げようとはしてくれなかった。隙を見て足を引っ掻いたり、噛み付いたりしている。
当たり前だ。私たちは会話ができないのである。
今ほど会話が出来ないことがもどかしいと思ったことはない。
勝つことはほぼ不可能。逃げることも不可能。
一応うさぎちゃんを置いて逃げる事は出来るがそんな選択肢はないに決まっている。
異世界から転生して初めてできた仲間だ。
見捨てられるわけがない。
(ならやるしかない。勝つしかないじゃん!)
私は覚悟を決めて戦いに向かった。
今の私たちの武器はうさぎちゃんのスピードと私の幻覚魔法だ。それをうまく使って勝つしかない。
こちらはうさぎちゃんはたぶん一撃で私も三回くらい攻撃を受けたらやられてしまうだろう。不利すぎる戦いだ。
幻覚魔法に敵の攻撃を集中させるのが一番いいだろう。
うさぎちゃんは出来れば避けることに専念してもらいたいが伝える術がない。
ゴブリンジェネラルが上段から剣を振り下ろす。幻覚を切り裂くが幻覚なので痛くもかゆくもない。その隙に私は相手の喉元に飛び上がり渾身のひっかき!ひっかき!ひっかき!
私の三連撃は最後だけからぶったがそこそこのダメージを与えられたと思う。ゴブリンですら一撃で葬るひっかきだ。もはや最初のジムリーダーをひっかきだけで圧倒できるとさえ思っていたが。
HPを確認して私は驚愕する。
HP420/620
100しか減ってない!?HP80前後あるゴブリンを一撃で倒せるんだぞ!しかもうさぎちゃんも足にちょくちょくダメージを入れている。防御力も普通のゴブリンとはちがうってことなの?
しかも見えないところから攻撃されたことに気がついたゴブリンジェネラルは闇雲に剣を振り回し始めた。これでは首への攻撃は危なくてできなくなってしまった。
隙を見つけては攻撃、隙を見つけては攻撃ということを辛抱強く続けてようやくHPが300を下回ったところで私にゴブリンジェネラルの蹴りが当たってしまう。蹴りというよりも足が当たっただけな感じだが猛烈な痛みをとともに私は吹き飛んだ。
HP24/75
足が当たっただけでこの有様である。
当たったのが剣ではなくて足だったことを幸運と思おう。剣なら死んでいたと確信できる。
そして私はあることに気がついた。
ゴブリンジェネラルのHPの減りがだんだんと早くなっている。私達が急に強くなったわけではない。考えられる要因は出血だ。HPと表現されていることでゲーム感覚でいたが現実では血が無くなれば体力が減る。少し考えれば当たり前のことだ。
徐々にゴブリンジェネラルのHPが減っていく。相手が動くたびに減る。隙を見つけて攻撃を入れる。新しい傷口からまた血が流れる。HPの減る速度がまた上がった。
正直私もうさぎちゃんも一撃くらえば負けてしまうが勝てる気がした。
もうゴブリンジェネラルのHPは100を下回っている。それに動きも最初に比べればかなり鈍くなった。私も足が当たって鈍くなったがまだ幻覚を駆使して避けられる範囲だ。
ゴブリンジェネラルのHPが10を下回った。
ゴブリンジェネラルのHPが0になった。
(やった…)
遂にゴブリンジェネラルは動かなくなり私たちは生き残った。勝ったのだ!
強敵を倒したことによる凄まじい達成感や喜びが体を駆け巡る。
うさぎちゃんも私も生き残った。
うさぎちゃんの方を見る。
光っている!
(まさかアレか!?)
………やらない後悔よりやる後悔を私は選んだ。…いや認めようただ言いたかっただけだ。
(・・・おや!?うさぎちゃんのようすが・・・!)