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神隠しの砂漠で! 紅い甲羅の悪魔!

「「うああああああ!!」」


 ずぅんずぅんと背後から巨大な何かが迫ってきている。

 なにか、というのは間違いだ。答えはわかっている。

 ……ベニサソリだ。



「お、お、お、お前なんとかしろよ! なんだよさっきの炎お! ぺちって! ぺちって弾かれてたぞ!?」

「う、うるさーい! 奴は炎に対して耐性が高いのだ! 仕方ないだろう!」

「じゃあなんであんなに自信満々だったんだよ!? 意味わかんねーだろ!」

「行けるのではないかと思ったのだ! 私、今成長期だから!」

「残念でしたー! 頭は自然とよくなるものじゃありませんー! 胸にしか栄養がいってねーんだよお前は! バカ!」

「む、胸は関係ないだろう! というか、バカとはなんだバーカバーカ!」


 つい先ほど、エバが砂中に身を隠しているベニサソリを発見した。

 下手に刺激して、怒らせる前にケリをつけたいと思い、俺はエルアに一撃で倒せるか? と、尋ねたところ、このトカゲ姫は自信満々に「任せろ! 我が炎に燃やせぬものはない!」と言ったのだ。


 だが、結果は現状を見る通り、見事にベニサソリを怒らせただけ。

 砂漠で赤色は目立つのか、ベニサソリはまっすぐエルアを狙って突進してきた。


 エバとメーロンは、それぞれ左右に避けて事なきを得た。

 俺も避けようとしたその瞬間、エルアに手を握られ、今まさに引っ張り回されているというわけだ。


「だいったいお前なんで俺を掴んでんだよ!? 俺まで一緒に追いかけ回されてるじゃねーか!」

「恐かったのだ! 私は、虫が嫌いなのだー!」

「なのだーじゃねーよおおおおおお! うおおおおおお!?」


 俺のすぐ横に、極太の針が突き刺さった。

 ギリギリのところで外れたが、もう距離が近い。

 

 考えろ、考えろ俺!

 どうする? どうしたらいい!?

 ……ってこんな状況で考えられるか!


 地面に影がうつった。

 鋭い先端が、ギラリと光っている気がする。

 それはどんどん大きくなり、とっさに俺は、エルアにタックルをかますようにして抱き着いた。


「ひゃあぁ!?」

「頭下げろバカ!」

「ぼむぅぅ……」


 俺は、じたばた暴れるエルアの頭を砂に押さえつけた。

 そして、上から抱きしめるようにして彼女をかばった。あまり意味があるとは思えないけど、何もしないよりはマシだろう。


 すでに、視界は薄暗くなっている。ベニサソリの針が迫ってきているんだ。


 もぅ、ダメだ!

 ここまで頑張ってきたけどもうダメだ!

 まさか、こんな砂漠のど真ん中でサソリにくし刺しにされて死ぬなんて。


 ああ、チクショウ、まだ家にはたくさんやり残したゲームがあるのに。

 だいたいリアルの恋愛だってしてないし、童貞だし美味しもの食べたり旅行もなんもやってねー!

 これから社会復帰して、平凡なサラリーマンになって毎日大変だけど家で待ってる奥さんと子供に癒されながら暮らすのを夢見てたのに……無念。


 …………あれ、痛くない。

 というか、急に静かになった?


 俺は、顔を上げて、頭上を見上げた。


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