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神隠しの砂漠で! 嘘!

「なんにしても、奇跡の力ってのはずいぶんと使い勝手が悪いんだな。これなら魔の力ってやつの方が良かったのかもしれない」

「ムサシよ、それは違うぞぃ。もしも、お主が魔の力を授かったとしても、そもそも、魔力を生み出せないお主にとっては意味を成さんじゃろう。どれほど破壊力のある大砲でも、込める弾が無ければ、単なる鉄の筒じゃ」

「むむ、確かに」


 そういう考え方もあるのか。

 たしかに、魔力のない俺が魔法を使えるのは、相応の対価を支払っているからこその奇跡なのかもしれない。

 

「だいぶ、魔法とか自分のスキルについてわかってきたよ。まだ、謎は残ってるけど、ありがとう、みんな」


 俺は全員の顔を見た。みんな、微笑んでいる。

 この平和な時間がいつまでも続けばいいのに、とそう思った。


「あ、そうそう、そういえば、一つ気になったことがあるんじゃが」

「え?」


 みんな、不思議そうな顔でメーロンを見つめた。

 もう、話は一段落ついたんだし、今日はこのまま眠るのかと思ってたけど……どうしたのだろう?


「いやのぉ、さっきエルアが言っとっことが気になってのぉ。確か、竜人族が決闘に負けた時は、全ての命令を受けるんじゃなかったかのぉ? 戦闘だけではなかったような……はて?」


 焚火の炎が、ぱちりと弾けた。


 全ての命令を受ける?

 エルアを横目で見ると、尋常ではない汗が顔から流れていた。

 ……コイツ、メーロン並みにわかりやすいんだが。


「おい、エルア」

「ひゃい!」


 びくんと、エルアの肩が震えた。

 もう、答えを聞くまでもないな。この反応を見れば十分だ。

 どおりでやたらと従者の説明の時にどもっていたわけだ。嘘をついていた後ろめたさがあったんだな。

 さが、これはいいことを知ったぞ。知ったけど……。

 ああ、もう、俺って本当にどうしようもないことを考えているな。


「エ~ル~ア~」

「ひ! そ、そんな目で私を見るな!」

「よくも嘘をついてくれたな、来い!」


 俺は、エルアの襟を掴んだ。ちょうど、先ほどエルアの消した場所が通り道になっているので、引きずるようにして外へと向かう。


「な、なにをする!? どこへ行くのだ! はーなーせー!!」

「ええい、観念しろ! これからた~っぷりイイコトしてやるぜ!」

「ひぃぃ!」


 血の気が引いたのか、エルアの表情がどんどん青ざめていく。ふん、嘘をついた罰だ。


「メーロン、『イイコト』とは、なんですか?」

「んん? それはのぉー」

「おいそこ! エバに変なこと教えるんじゃねーぞ!」

「わーっとるわ、はよ行けぃ」


 びしっと指さした俺を、メーロンは煙たがるように手を払った。

 エバもエバで、変に好奇心旺盛なところがあるからな……。心配だが、まずはエルアの問題から片付けてしまおう。


 そう思って、拠点を後にした。




「くっ、殺せ! 我が純潔を穢されるくらいならば、死んだ方がマシだ!」

「リアルにそんな台詞を聞くなんて思ってもみなかったよ……」


 拠点から歩いて十分ほどの場所でエルアを離した。

 拠点で燃える炎は、ここからでも明々と輝いており、目印のない砂漠でも見失うことはないだろう。ただ、拠点よりもだいぶ気温が低いのが辛い。さっさと話しを終わらせるか。


 俺は、エルアに顔を向けた。


 砂の上で、自分の膝を抱えるようにして座っている彼女は、寒さからか、それとも、今から自分がされることの恐怖からか、唇を震わせながら睨みつけていた。


 その恐怖は、勘違い(・・・)なのだが、さてどうしようかな。


「わ、私は、族長の娘だ! はっきり言って、相応の身分にいる。そんな私に手を出せば、いずれ暗殺されるかもしれんぞ!」


 どうにも、このトカゲ娘は、自分の立場をわきまえていないらしい。

 ……すこーし、いじめてやろうかな。


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