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廃城で! 言い訳!



 ふと、エバを見ると、彼女は無表情で俺たちを見つめていた。いやまぁ、もともと表情なんてなかったのだけれど、今は冷たい印象というかなんというか。

 彼女の金色の瞳が、ひどくくすんで見えた。


「人間は一夫一妻制ではないのですか?」

「その考え方は古いぞ、エバよ! 人類が滅亡しつつある今! 産んで増やして力を蓄えねばならんのじゃ!」


 エバが言い終わった直後、メーロンの怒声にも似た声が室内に響いた。

 このじーさん、即答したよ。すげぇな。

 俺も、じーさんの作った流れにのらないと、エバに浅ましい男だと思われかねん。いや、実際浅ましんだけどね。


「そうだぞエバ! これは、人類を救う健全かつ合理的な行為なんだ!」

「はぁ、それでは私の情報を更新しておきますね。男は複数の女を養う必要のある性別と」

「「ちょっとまった!」」


 俺とメーロンの声が重なった。

 エバがうるさそうに顔をしかめ、両手で耳を塞ぐ。


「なにか間違いがありますか?」

「いやそりゃお前、何もかも男任せってのはちょっと違うんじゃないか?」

「そうじゃそうじゃ! 人手の足りぬ今、重要なのは協力することじゃ! 男も女も分け隔てなく、狩りにでかけ、炊事をし、洗濯をする。それこそがこれからの人類のあるべき姿なんじゃよ!」

「しかし、男のほうが筋力的にも優れていますし、それならば食料を調達しやすい男性を多くしたほうが合理的では……」

「待つんだエバ! それは早とちりだ! いいか、機械のお前にはわからないかもしれないが、女は女のコミュニティを作り、その中で派閥が生まれる! もしも少ない人数でその派閥から追い出されたらどうする? もしかしたら自暴自棄になってコミュニティを破壊する可能性だってあるじゃないか! そういった危険性を未然に防ぐためにも、女は多いほうがいい!」


 自分で言っておいてなんだが、なんだこの理屈は……。暴論にもほどがある。

 エバは顎に手をついて何かを考え始めた。さすがに無理があっただろうか?


「なるほど確かに人の心理というものは私にはわかりません。そういった理由があるのでしたら、承知しました」



 納得してくれた!? 

 それでいいのか国の秘密兵器!

 うすうす感じていたが、この子、実はけっこうチョロいんじゃないか?


「お主、なかなか見所があるのぉ」

「はは……。ま、まあな」


 いや、俺もこんなにぺらぺらと話せるなんて思っていなかった。頭の中はいつだっておしゃべりだけど。

 それにしても、竜退治か……。まぁ、この世界って見たところ俺のいた世界よりもだいぶ文明が遅れているみたいだし、そんな人たちでも狩ることができるんだから俺でもなんとかなるだろ。

 それで、女の子たちとしっぽり楽しんだ後、白の蛇に頼んで自分の世界に帰ればいい。うん、完璧だ。


「あのぅ、ところでなんじゃがの」


 メーロンの弱弱しい声が聞こえて、視線を下げた。

 足元にあおむけで寝転がるメーロンは、青い顔をして苦しそうに呼吸をしている。

 理由に察しはついているが、念のため聞いておこう。


「どうした?」

「そろそろ……、ワシの腰をなおしてくれんかのぉ」


 だよね、ごめん。放置しすぎた。




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