神隠しの砂漠で! 説明タイム!
「まずは、私たちが魔法と呼んでいる物についてご説明いたします」
「おう、よろしく頼む」
「まず、この世界の魔法は、想像力を具現化する力、とされています」
「想像力の具現化? イメージしたものが、実現するっていうのかよ?」
「はい、ほぼその解釈で間違いありません。ですが、あやふやな想像では、実態や、効果を発揮する前に、魔法自体が消失してしまいます。現象を具体的にイメージすることで、初めて魔法が発動するのです」
「ワシが、強力な魔法を使う時に詠唱するのはそのためじゃ。言葉にすることで、魔法のイメージを固め、さらに集中力を上げる効果がある。複雑な魔法や、高威力の魔法ほど、繊細なイメージが必要じゃからな」
なるほど。今までメーロンはそうやって魔法を使っていたのか。
「ってことはだ、想像さえできれば、なんでもできる力。ってことなのか?」
「間違いではありませんが、言うは易しというものでしょうか。私自身、想像による魔法を使っていないので、なんとも言い難いのですが、イメージを完全に固めるというのは非常に高度な事のようです。少しの雑念でも入れば、即座に消失してしまいますから」
「以前、土の魔法で、セクシー美女を作ろうとしたんじゃがの、絶えず顔が変形するわ、情緒不安定になるわでなかなかのカオスっぷりじゃったぞい!」
「なんつーもん作ろうとしてんだよ……」
俺もやっちゃうかもしれないけどさ……。
「けどさ、なんで、この世界の人は、魔法が使えるんだ? 俺は使えないのにさ」
「それはおそらく、体の構造が違うのでしょう。この世界の人は、おへその下あたりに、魔力を発生させる器官をもっています。はじめに、ムサシを検査したとき、まずはそこを調べましたが、ムサシにはありませんでした。それゆえに、ムサシは魔力を生成できないのだと思います」
「見た目はそっくりなのになー。なんで体の造りが違うんだろう?」
「その点については、なんとなくだがわかる気がするな。きっと、異世界人とこの世界の人間では創造主が違うせいではないだろうか? 神が違えば、生まれるものもまた変わる……はずだ!」
「うーん……そうなのかな?」
そこだけ違うってことに、なんだか違和感を感じるけど……。まぁ証明しようのない問題だしな。それでいいか。
「次に、魔導石についてですが。魔導石は、竜の体内や、火山や深海。深い森の中などで発見されることが多いです。おそらく、魔力的な力がたまる場所に発生するのでしょう」
「それは、前も言ってたな。その魔導石ってのは、どうやって魔法を使っているんだ?」
「それについては、私が説明しよう。竜人族は、特に魔導石との関わりが深いからな。魔導石は、まだなにも手を加えていない状態だと、なんの魔法も使えない。つまり、ただ魔力を貯めこんだだけの石だ」
「魔力を貯めこんだ石……」
急にエルアが仕切りだした。
話題を取られたことが不満なのか、エバは氷のような目でエルアを見つめているが、今はそっとしておこう。
「そこに、一定の魔法を与え続けることで、魔導石が魔法を記憶し、魔導石の魔力を使って発動できるようになる。使用者は、術のイメージだけで済むのだ」
「それって、すごく便利じゃないか!? 自分の魔力は一切消費しないってことなんだろ!?」
「便利だ。だが、欠点としては、魔導石には魔力に限りがあるということ。そして魔法を記憶させる手間がかかるということだな。それに、魔導石には、記憶させるのに限度がある上に、一度に一つの魔法しか発動できない。さらに言えば、使えるのは記憶させた魔法だけだ」
「そうなのか……」
エバが、一つの魔法しか発動できないのは、魔導石を使っていたからだったのか。
それに、回復や索敵以外を使えない理由もわかった。
いままで、なんとなくそういうものだと思っていたけど、ちゃんとした理由があったんだな。
「それと、魔導石には、それぞれ特殊なオプションが付いている物もある」
「オプションって?」
「例えばなのですが、私の魔導石の場合、日光や月の光で魔力を充電することができます。これは、この魔導石にのみついている機能です。また、先日のフォレスディエナは、自身の生命維持のために魔導石を利用していました」
「なるほどな。それぞれに、特徴があるのか」
というか、いつの間にかエバが割り込んできたな……。
説明したがりだもんなコイツ。




