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神隠しの砂漠で! 新たな仲間!

「う、ううん……」


 エルアは、苦しそうな表情で眠っている。俺は、飲み水で濡らした布を彼女の額に乗せてやった。


「う……、ここは……?」

「お、起きたか」


 どのくらい時間がたっただろうか、エルアは目を覚まし、あたりを見まわした。

 まだ頭がはっきりしないのか、ぼんやりと俺を見つめ、やがて思い出したように険しい顔になり、そして今度は泣きそうな顔になった。

 なんというか、自分の感情にとても素直な子なんだな。


「お前は! ……まさか、私は……負けたのか?」


 状況を理解したのか、エルアはわなわなと肩を震わせている。それどころか、顔は青ざめていて、いまにも、再び失神してしまいそうな様子だ。

 負けたことが、そんなにショックなのだろうか? いや、まてよ?

 そういえば、勝ったら命令できるとかなんとか言っていたような……。


「おい、エルア。確かお前、勝った方がなんでも命令できるとかいってたよなぁ~あ?」

「ひっ! な、なんでもとは言っていないぞ!?」

「でも、命令できるんだろ?」

「……できなくもないがおすすめはしない……」


 それってできるってことじゃねーか……。

 え、ということは、俺。従者二人目ゲットってこと!? 

 しかも今回の従者は、最初敵対していただけあって、気持ち的に、なかなかえげつない命令とかできそうだ。エバ相手だと、なんだか悪いことをしている気になってしまって、そういう命令はできないからなー。ぐへへ。


「な、なんでそんなにいやらしい目をしているのだ!? ね、念の為に言っておくが、私にも拒否権はある! 竜人族の掟では、敗者は勝者を守護する盾となるのが習わしだ! え、えっちなお願いは遂行できないからな!」

「本当か~?」

「ほ、ほほほ、本当だ!」


 エルアは、きょどきょどとあたりを見回している。詰め寄られて動揺しているのか? それとも、嘘をついているのか……。

 なんにしても、下手に手を出して、返り討ちにされてしまったら、たまったもんじゃない。

 ここは、安全第一でいくか。


「ちっ!」

「貴様、欲望を隠す気がないな……」


 ギャルゲー名シーン30発につき合ってもらおうと思ったのだが……。残念だがあきらめるか。

 単純に戦力が増えたと思えば、それはそれでいいのかもしれない。エルアの戦闘能力は、さっきの戦いで十分すぎるほどわかったことだしな。


「はぁ、まぁいいか。とりあえず、お前は俺のために戦う、ということでいいんだな?」

「ああ、癪だが……ほんとーに癪だが、そういうことだ」

 

 どんだけ嫌なんだよ……。傷つくじゃんか……。


「ただし、私が仕えるのは、次の満月までだ! もっと長い期間、私を従えたいのなら、もう一度私と決闘して、再び勝つことだな」

「げ、マジかよ……」


 次の満月っていつだ? 確か、三日前が満月だったから……あと、27日くらいか?

 ここが、俺の世界と同じ周期だったらの話だけど……。


「それで、主殿よ。これからどうする?」

「あ、主殿?」

「む、私だって好きで言っているわけではない。しきたりなのだ!」

「主殿……かぁ」

「不満なのか?」


 うーむ。主殿、っていうのはなんだか違うな。悪い気はしないけど、どうにも距離が遠いというか。

 あまり、心理的に壁があると、エバみたいにどこか大事にしてあげないといけない雰囲気にもなりかねないしなぁ。

 それが悪いわけじゃないけど、どうせならもう少しフランクに接して欲しい。


「最初の命令だ、俺のことはムサシと呼べ」


 って、そういえば、戦い意外だと命令できないんだっけ?

 そう思っていると、エルアは、目をきょとんとして不思議そうな顔をしていた。

 ああ、きっとこんな命令を出す奴がいないんだな。そりゃそうだ、本当なら、相手を従わせるために決闘するんだから、わざわざ対等な立場に近づけようとする奴なんていないだろう。

 どうしよう、やっぱり主殿って呼ばせた方がいいのか?


「ふふ、お前は、いや、ムサシは変わっているな。わかったよ、これからは、名前で呼ばせてもらう」


 初めて、エルアが笑った。その瞬間、俺の心臓が飛び跳ねる。

 今の彼女には、戦っていた時の刺々しさはなく、とても穏やかな雰囲気だ。

 その笑顔は、まるで、日向に咲くひまわりのようで、太陽のような明るい笑顔で、思わず目を奪われてしまった。

 おかしいな、エバの笑顔だって可愛かったはずなのに、なんでこんなにドキドキしているんだ、俺は。ただ、彼女が笑っただけなのに、目が離せない……。まさか、こんなリアルギャップ萌えを体験するなんて。


「どうした?」

「え、ああ、別に。その、なんだ。これから、よろしくな、エルア!」


 俺は、いまだに早鐘を打つ心臓から意識をそらすように、さっと右手を差し出した。

 その手を見たエルアは、すぐに自分の右手を伸ばして、俺の手を掴んだ。

 彼女の手は、思ったよりもずっと柔らかく、そして暖かかった。


「ああ、短い間だが、よろしく頼む。ムサシ」


 こうして、俺の二人目の従者(期間限定)。エルアが、仲間に加わったのだった。


き、気がついたら、総合評価が38ポイントに!

評価してくださった方々、本当にありがとうございます!

こんごも、執筆をがんばりますよー!


※満月の日数が間違っていましたので、修正しました!

12日→27日

満月の12日後って……新月やないか私のアホぅ!

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