神隠しの砂漠で! 竜気! かいほおおおおおう!
「確かに、いきなり胸を揉んでしまったことは謝るよ。ごめん!」
「む、まぁ、素直に謝るのなら、私も……」
よし、いい感じに怒りが治まってきたようだ。最後に、彼女の傷ついた自尊心をフォローしなければ。
「それにさ、そんなに恥ずかしがることなんてないよ」
「……なに?」
「君の胸、最高に柔らかかったからさ。自信、持てよ!」
びしっと親指を上げて、エルアに向けた。
これは決まったな。やれやれ、まさか、昔やったギャルゲーの知識がこんなところで役に立つとは。
ゲームならこの後、『ふ、ふん。余計なお世話だ。……でも、あなたがよかったら、また揉んで?』って展開になるはず!
そんな期待を胸に、エルアを見ると、彼女は、俯いて肩を震わせていた。
…………あれれ?
「おーい、どうしたー?」
「きっさっまあああああ! バカにしているのか!?」
「うおおおおおおおおお!?」
エルアから、急に赤い光が放出され始めた。
彼女の赤銅色の髪は、血のように真っ赤に染まり、瞳はまるで爬虫類のような縦の瞳孔に変化している。
「竜気、解放!!」
エルアが叫ぶと同時に、彼女を中心に衝撃が広がった。
床に薄く敷かれていた砂を吹き飛ばし、色気のない岩肌が露出して、俺の視界が閉ざされてしまう。
「え、ええー、なにこのバトル漫画みたいな展開……」
砂煙の中で、呟くと、煙の一部が紅く輝いていることに気がついた。
煙が晴れるにつれて、その光は強く、大きくなっていく。まるで、火山が噴火している時みたいだ。
……もしかして、エルア、怒ってる?
「打ち震えよ、悔い改めよ! 我が内に燃ゆる怒り。すべてを灰燼に帰す、炎とならん!」
砂煙の中からあらわれた彼女は、角が大きく伸び、きれいな白い手には、緑色の見るからに鋭そうな爪と、手甲のような赤い鱗が生えていた。
スカートから覗く足も、太もも付近まで、手と同じ赤い鱗がびっしりと生えている。
顔こそ、角がと瞳が変化したくらいだったが、鋭い牙を噛み締めたその表情は、どうみても怒っているようだ。
なぜだ……なぜ怒る……! というか、そんなことよりも……だ。
もっと、少年漫画的で、なによりインパクトのある事実が、俺の頭から口にかけて、勢いよく走り抜けた。
「へ、変身したああああああ!?」
「変身ではない。これぞ、竜人族に代々伝わる奥義、竜気解放。私に流れる血と、心が、竜の力を宿らせたのだ。奥の手中の奥の手だが、致し方あるまい……お前、嫌い! 燃やす!」
そういって、エルアは槍をふるい、槍先からは、オレンジ色の炎が、放射状に広がってきた。
俺は、あわてて右手を突き出し、風の魔法で打ち消すした。
「っぶねええええええ! 奥の手中の奥の手をこんなことで使うんじゃねーよ!」
「うるさい! 死ねえええええええ!」
エルアが槍を突き出すと、ボーリング玉くらいの赤い火の玉が、足元に向かってきた。
これは……、消せない!
直感でそう感じた俺は、風では打ち消すこともできない炎を、間一髪のところで躱す。
ひゅぅぅぅうう……、ボォン!!!
弾けた火の玉の衝撃で、積もった砂が舞い上がる。
いや、そんなことよりも、あたった床が赤く変色している!? 一体何度あるんだ、その炎!?
「うおおおおお!? ちょ、やめ、マジでやめてください! 死んでしまいます!」
「竜人族の掟にのっとり、勝者だけが私に命令できる! 死にたくなければ私を倒すことだな!」
体勢が崩れたところに、続けて2発目が放たれた。ま、まずい! 俺は、自分に風魔法をあてて、それを避ける。
さらに、3発目、4発目。
5発、6発、7発……。
8、9、10……。
「って撃ちすぎだろおおおおおお!?」
「ええい、ちょこまかと! だが……!」
背中に硬い何かがぶつかった。
まずい、躱すことに夢中になっていて、壁際に追い詰められていることに気がつかなかった!
エルアは、俺の状況を察したのか、にやりと笑うと、槍を両手で持ち、低く構えた。
は、嵌められた!?
やっぱり、変身はいいですねー!
燃えますね!
冒頭部分を修正したら他も修正したくなってきてしまいました…。
直していいんだろうか……。冒頭の修正後は、アクセスがそんなに変わらなかったですし、ぼちぼち修正に入るかもしれませぬ。




