黄金の森で! 突き刺され、刃!
赤黒い口の奥は、どこまでも暗く、あそこに入ってしまえば確実に命はないだろう。
避けることもできないこの状況で、なぜか俺の頭は、熱に浮かされたような高揚感と、目の前の出来事を見極める冷静さが同居している。
俺の左手は、自然と剣を手放し、そのまま流れる様な動きで腰に差したカートリッジを取り出した。
「これでもおおおおお! くらいやがれえええええ!」
俺は、カートリッジをもった左手を前に突き出し、そして、風の弾丸にのせて打ち出した。
ひゅん、っと風を切る音とともにカートリッジはまっすぐフォレスディエナの鼻の穴に入り込む。
その瞬間、こちらに向かってきていたフォレスディエナの動きが止まった。
「ブォォォオオオオオオオ!?」
苦しそうな声で鳴いたフォレスディエナは、その苦痛から逃れるためか、首を大きくくねらせる。
水晶が見えた!
あとはこのまま、突っ込むだけだ!
右手の剣を構え、風圧による目の乾きにも耐え、ぐんぐん近づいてくる水晶からけっして目を離さなかった。
「うおおおおおおおおおおお!」
ついに、剣の切っ先がフォレスディエナの水晶に触れた。キンっと、甲高い音が響き、剣はそれ以上進まない。
それでも、メーロンの風も、俺の意思も、前へ前へと進もうとした。
自然と、俺の右手は雷撃魔法を発動し、弾けるような音を鳴らしながら、剣から黄色の光が放たれた。
「いけええええええええええ!」
俺が叫んだ瞬間、一際大きなスパークを見せ、俺の視界は真っ白になる。
なにも見えない。けれど、俺は自分の進むべき方向を決して間違えなかった。ただ、まっすぐに。切っ先を相手にむけて! ひたすら前へ! 前へ!!
そのとき、めきりと軋む音がして、少しだけ切っ先が入った。
「ブモオオオオオオオオオオオオオ……ーー!」
爆弾でも落ちたような叫び声で、耳が痛い。
目は見えないし、音もまともに聞こえない。でもだからこそ、右手だけに神経を集中させることができた。
俺は、肩から押し込むようにして、右手の剣を水晶へとねじ込んだ。
「これで終わりだああああああああ!」
一度進みだした剣は止まることはなく、深々と水晶の中に突き刺さる。
俺の腕は感じていた。
脈打つフォレスディエナの鼓動を。
湖面に突き刺したかのような、硬さと柔らかさを。
水晶からでているのか、異常なまでの熱を感じる。
ああ、コイツも生きているんだな。ただ、己の本能に従って、外敵である俺たちを倒そうとしているにすぎないんだ。俺たちがしていることは、本当に正しいのか?
ただ懸命に生きているだけの命を奪うことが、本当に正しいのか?
ふと頭の中を、そんな考えが浮かんだ。
それでも、俺の剣も、体も、熱くたぎった心も、前へ進み続けた。背中を押されているからじゃない。
お前が生きようとしているように、俺たちも、生きるために進まなくちゃならないから。
だから、ごめん。と、心の中で呟いた。
そして、剣の柄まで突き刺さったのか、ついに俺の前進は……、止まった。




