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廃城で! 一悶着!

【ムサシ】






「よくぞ無事、魔導兵器の封印を解いたのう。誉めてつかわそう」

「死にかけたのはアンタのせいだろーが。てか寝てんじゃねーよ」


 俺は、エバを起動したあと、メーロンの元へと戻ってきた。帰りは普通に、エバのいた部屋から直通の梯子がかけられていたのだ。

 ちなみに、行きもこの梯子を使ったのだが、不思議なもので俺が降りた先は、あの無限通路だったのだ。これが魔法、というものの力なのかもしれない。

 メーロンはというと、うつぶせで床に寝転がりながら威厳たっぷりのセリフを吐くという実に滑稽な姿でお出迎えしてくれた。先ほどのお礼に踏んづけてやろうかと思ったが、さすがに老人にそんなことをするほど、俺も鬼じゃない。



「この姿勢が一番楽なんじゃよ。ところで魔導兵器はどこじゃ?」

「私なら、ここに」


 隣でエバが答えた。

 流石に裸のままでは目のやり場に困ってしまうので、今は俺の着ていた青いジャージを羽織らせた。

 それでも、裾から伸びる足が視界にちらついて、どうにも直視できないが。

 あと、裾からちらりと見える尻とか、あと足の裏とか直視できない。チラッとみるのが精いっぱいだ。



「おおぉ、ワシの腰を治してくれ。もう痛くて痛くてかなわんのじゃ」

「申し訳ありませんが、それはできません」


 ふおおおぉぉぉ!? そんな深々とお辞儀をしたら、裾からしし、尻が!?


「ほ!? なぜじゃ!? お主に搭載された魔力エンジンならば、治癒魔法の一つや二つ簡単じゃろう!?」

「たしかに、私は治癒魔法が使えます。が、しかし、私の主人はムサシですので、それ以外の方の命令を受けることはできません。……ムサシ? 私の足元になにかありますか?」


 エバは、くるりと振り返り、俺を見つめた。先ほどまで下げていた視界の中に、緑色の水晶と大きな谷間が入り込んできた。


「ぶほぉ! きゅ、急に振り返るなよ! ていうか、え? 主人って俺?」


 いかんいかん、チラ見で助かった。怪しまれたくらいですんだようだ。

 二人の会話は、ほとんど耳を通り抜けていたが、重要な部分は聞こえていた。どうやらエバは、起動させた者の命令にしたがうらしい。

 俺にだけ従う美少女ロボット……。

 え、これ最高じゃね?


「かー! なんじゃこのポンコツつっかえねー!」

「キレすぎだろじーさん……。てか、ようは俺が命令すればいいんだろ?」

「そうです。あなたが、私のご主人様なのです」


 ご、ご主人様……だと……。なんて素晴らしい響きなんだ! 


「なら、はよう指示を出してくれ!」

「しっかたねーなー、おいエバ……。あいや、まてよ?」

「はよしてくれー」

「おいじーさん。治す前に俺に言わなきゃならないことがあるんじゃないか?」

「お願いしますムサシ様。どうかこの憐れな老いぼれを助けてください」

「手のひら返すのはや! あんたホントに王様!? って違う違う違ーう! そうじゃなくて、俺が元の世界へ帰る方法だよ! まずそれを教えてもらうのが先だろ」

「うっ」



 おい、なんだ今の呻き声は。よく見ると、顔から引くくらい汗かいてるし、嫌な予感しかないんだが。



「おい、まさか……」

「お主が帰る方法は……無い」

「は?」




 無い? なにが? 帰る方法が? 俺は家に、帰れない?

 数秒間、部屋の中に静寂が訪れた。蝋燭の燃えるかすかな音と、部屋の隅に積み上げられた麻袋から香る、干し草の臭いだけが、俺の感覚を刺激する。



「そんなのありえないいいいいい! てめぇジジイ! 騙しやがったな!」

「いやいやいやだって、まさか召喚したやつが早々に帰りたがるなんて思わんじゃろうが! 送り返す方法なんて後で探せば良かろうとおもっとったんじゃー!」

「ムサシ、この老人をどうしますか?」

「埋めよう」

「御意に」



 エバは、軽々とメーロンを持ち上げて、肩にのせた。

 自分よりも一回り以上小さいエバが、大の男を持ち上げる姿は、言い表せない迫力がある。


「あ、ちょちょちょまーった! あるある! 一個あるぞお主が帰る方法が!」

「ちょっとまったエバ。とりあえず話を聞こう」

「承知しました」


 エバは、ぴたりと足を止めた。

 そもそも、この子はどこに埋めるつもりだったんだろう? 壁、か?


「いちよう話は聞いてやるけどな。もししょーもないことだったら今度こそ埋めるからな。壁に」

「お主、なかなか容赦ないのう。もっと老人をいたわらんか」

老若男女ろうにゃくなんにょ全人類平等主義なんだよ」

「恐ろしい男じゃ……。さて、問題のお主が帰る方法じゃがの。この世界の創造主にお願いすればなんとかなるやもしれん」

「創造主?」



 つまり、神様、ってことか? 

 俺の頭の中には、それこそメーロンのような、立派な白髭をたくわえた、白髪の老人を思い浮かべた。


「おい、まさか神頼みすればなんとかなるかもなんて言うんじゃないだろうな」

「違うわい。正真正銘、本物の創造主の元へ行ってお願いするんじゃよ!」

「はぁ? 何いってんだ? 神様がその辺にいるって言うのかよ?」

「うむ」

「やっぱり埋めるか」

「何でじゃ!?」


 いやだってそんな方法、荒唐無稽すぎるだろ。本気で神様がいると信じるとでも思ったのか。


「ムサシ、この老人のいっていることは、正しいかもしれません」

「おぉ、さっきはポンコツなどと言ってしまってすまなかったのぅ。あと、ワシの名はメーロンじゃ」

「エバ、それってどういうことなんだ?」


 俺が尋ねると、エバは肩に乗せたメーロンを床に落とした。

 くぐもった呻き声がが聞こえたが、とりあえず気にしないことにした。


「その説明のためには、まずこの世界の成り立ちから説明しなければなりません。これを見てください」


 エバの胸元の水晶から光が出て石の壁に向かっていった。

 そこには、子供の落書きのような絵で描かれた二匹の蛇が写し出されており、一方は白、もう一方は黒だ。


「なんだこの落書き?」

「失礼な! 私が作った絵本ですよ! 私の脳内イメージを、画像にして映し出しているのです!」


 あ、エバが描いたのか。この子はあまり絵心がないな。

 それより、エバの脳内イメージだって? なんだか心配になる発言なんだけど……。


「あー、すまん。で、これがこの世界の成り立ちってことなのか?」

「その通りです。オホン、あーあーあー」

「え、どうした急に」



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