黄金の森で! ノコギリ!
なんとも微笑ましい光景に、俺もメーロンも自然と頬が緩む。あ、わかった。俺たちって親バカ気質なんだ。
「それで、当面の作戦はどうする?」
「うーむ、まぁ、まずあの黄金の果実の木がフォレスディエナと関係していることは、間違いないようじゃしなー。とすると」
「片っ端から、切るか」
「そうしたいところじゃが道具がない。せめて斧でもあればいいんじゃが……。お主の剣では、さすがに切り倒すことはできんじゃろう。いくら酸で溶かすことができるといっても、切れる数には限りがあるしのぉ」
それもそうだ。それに、酸のカートリッジは今現在、唯一の攻撃系だ。余計なところでつかって、数を減らしたくない。
ほかには、敵を追っ払うための、ゲキシュウ草カートリッジがあるけど、木を切るのにはやくにたたないしなぁ。
やっぱり、木を切るって言うと、斧とか。あとはノコギリか? ノコギリ……。
そうだ!
「ああ、俺またひらめいちゃったよー。どうしよう、自分の才能が恐ーい!」
「うわ、その言い方むっちゃくちゃ腹立つのぉ! こう、煮詰めた雑草でも飲ませたくなってくるわい!」
「そんなことしたら、竜の糞を口に突っ込むからな……。ほら、この間、たくさんラルガーを狩ったろ? それに、ヴルガーも。その時、何かに使えるかもしれないと思って、牙とか爪とか剥ぎ取っといたろ? あれでノコギリを作るんだよ!」
「おお、なるほどのぉ。それは名案じゃな。して、どうやって作る?」
「え、そりゃー、骨を薄く切ってだな……」
「お主のぉ、そもそもどうやって薄く切るんじゃ? その剣で切ったところで、ぽっきり折れるのが関の山じゃろうて。それに、ノコギリっちゅうのは、刃の先端を少ーしだけ曲げるか、三又にして、刃の幅よりも切断幅を大きくせにゃならん。そんな繊細な工作が、ここでできるわけがなかろう」
「うう……」
し、知らなかった。ノコギリって単純そうに見えて、実はすごい技術の塊なんだな……。
「ふぇひまふよ」
「え?」
「ふぉふぉひひ、ふふへまふ」
「とりあえず、一回食うのをやめろ。行儀がわるいぞ」
そういうと、エバは、ごくんと小さな喉をならし、飲み込んだ。
「ぷは……。申し訳ありませんでした。それより、ノコギリですよね? 恐らくそれなら、作れますよ」
「本当かエバ! どうやって作るんだ!?」
「しかし、フォレスディエナの鱗がもっと必要です。最低でも、あと五枚は必要かと」
「うむ、それならここにあるぞぃ! 拾える限り拾ってきたからのぉ!」
メーロンの懐から、ぼろぼろと鱗が出てきた。
黄金の果実の時といい。このじーさんは本当に何でも拾ってくるな。




