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黄金の森で! 老兵、落ちる!



 再び探知を再開したエバは、彼女から見て左斜め前で動きを止めた。


「この先に、多数の微弱な魔力が確認できます。おそらくこの先にフォレスディエナがいると思われます」

「でかした! それじゃー、そっちに行くとするかのぉ。ちょうど、南西の方角じゃな」


 メーロンは、エバの示した方向へとずんずん進んでいく。このじーさんは、度胸があるのか単なる無謀なのかこうやって先陣切っていくのが好きなようだ。

 ただ、昨日のように竜の巣に落っこちる様な事だけはしないで欲しいのだが。


「おい、じーさん、どんどんいくのはいいけどよ、また昨日みたいに……」

「ふぉおおおおお!」


 目の前からメーロンの背中が消えた。あれ、これ、デジャビュ。


「ジジイイイイイイイ!」

「ムサシ! 早く助けないと!」


 エバが、消えたメーロンの後を追って林に駆け寄っていった。かがんで下を確認するエバの肩越しに俺も覗いてみると、そこには小さな崖。とまではいかない、段差があり、その下の黄色い地面の上にメーロンが大の字に倒れていた。

 付近を確認しても、どうやら竜はいないようだ。


「おーい! 大丈夫かじーさん! じーさん?」


 おかしい、返事がない。目は開いているし、口はパクパク動いているから気絶しているわけじゃなさそうなんだが。

 というか、じーさんめちゃくちゃ汗かいてないか? 


「む、ムサシ! 大声を出してはいけません!」

「むぐぅ!」


 エバに抱き寄せられ、口を手で覆われてしまった。というか、顔の左側に、妙に柔らかい感触がする。


「むぐぅ! むぐぅぅ!」

「しー、静かにしてください。今メーロンが倒れているのは、メガスラルガの背中です」


 め、メガスラルガ!? というか息が苦しい! 鼻を! せめて鼻を開放してくれ!


「むむぅ! むぐぐぅう!」

「ええ、一刻もはやくメーロンを助けなければいけませんね。しかし、どうしたらよいのか」


 ちがーう! そうじゃない! お前のでっかい手をまずどけろおおおおお!


「むぅうううううう!」


 腕を振りほどこうと、頭をぐりぐりとうごかした。しかし、一向に解放される気がしない。


「あ……、そんな……う、動かないでください……」

「ぶふぅ!」


 ば、バカ! 貴重な酸素を無駄に吐かせるなよ!?


「ふ、ほおおおおおおおお!」

「メーロン!?」

「天より参られし、裁きの火よ。千里まで響き渡る神のいかづちよ。暗雲の空の光。身を焦がす白き弓矢。獣の叫ぶ声。焼き、貫き、広がるその力をもって、我に仇なす邪悪をうちはらわれん」


 メーロンの杖に、黄色い光がスパーク音を響かせながら収束していく。やがて、光は、完全に杖の中に納まった。



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