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黄金の森で! 加工も自分の手で!

「私は、近くに仕掛けた罠を確認してきます。ムサシも、もうおやすみになられた方がよいのでは?」

「いや、まだ眠れそうにないから、武器の手入れをしておくよ。試しておきたいこともあるし」

「そうですか? 承知しました。それでは行ってきます」

「あ、エバ。その前に、俺に防御魔法をかけてくれないか?」

「え? いいですけど、どうかしたんですか?」

「ああ、ちょっとな。頼む」

「承知しました」


 エバが俺に向けてかざした手が、ぼんやりと黄色く光はじめて、その光が俺の体に纏わりついてきた。


「ありがとう。けど、不思議だよな魔法って。どんな理屈なんだろ?」

「魔法にはまだまだ未知の部分が多いですからね。ただ、防御魔法にも種類がありまして、例えば風の魔法の場合は、体の表面に圧縮した空気の層を作って攻撃を反発するそうです。炎や雷の場合も、どちらかといえば与えられた衝撃に対して反応するものが多いようですね」

「ふーん。エバのこの防御魔法は、どんな理屈なんだ?」

「私の場合は、体表面の硬質化と、痛みなどのマイナスの感覚の軽減です。平たく言えば、身体能力上昇魔法の一種、といったところでしょうか。私は、基本的に回復か索敵の魔法しか使うことができないので、魔法の種類も肉体に直接かかわるものが多いです」

「そうなのか。そういえば、前にメーロンが言っていたけど、適性のない魔法は使えないんだったっけ?」

「いえ、人の場合は、向き不向きはありますが修行すればある程度は使えるようになるそうです。私の場合は、そもそも、そういった魔法以外を使えるようにできていません」

「ああ、そっか」

「それでは、私はもう行きます。ムサシも、あまり夜更かししてはいけませんよ」

「母ちゃんかよ……。わかったよ、気をつけてな」

「……とがいいです……」

「え?」

「なんでもありません。それでは行ってきます」


 エバは、ゆっくりと立ち上がり、肩にボーガンを背負い、林の中へと入っていった。俺はその背中を見守ったあと、道具袋から、瓶を一つ取り出した。

 瓶の中には、鮮やかな青い葉が入っている。ゲキシュウ草だ。

 エバが言っていたが、この葉には、竜や獣の嫌がる臭いが含まれているらしい。今日ラルガーに追いかけられた時には、そんなこと思い出す暇もないくらい焦っていたけど。 

 つまり、うまく剣に装填できれば戦いたくない相手と対峙したときに役立つのではないかと考えたんだ。

 ただ、このままじゃカートリッジに入れることができない為、すりつぶす必要がある。


 しかし、なんの対策もせずに瓶の蓋を開けてしまえば、この間の悪夢を再び見る……、いや嗅ぐ羽目になるので、エバに防御魔法をかけてもらったのだ。

 防御魔法を使えば、臭いを感じなくなる。というわけでもなく、体への負担が減るというか、嫌な感じが軽減されるのだ。

 あれ? そういえば、いちよう防御魔法をくらっていることにもなるから、俺自身も使えるようになってるのかな? 今度試してみよう。

 そう思いながら、俺は、蓋を開けた。う、魔法で軽減してもやっぱり少しキツいな。耐えられないほどじゃないけど。


「くっさああああああ!? ななな、なんじゃ!?」

「あ、わりぃ。メーロンのこと忘れてた」

「おおおお主!? 人が気持ちよく寝ているときになんちゅーこと……。おうぇぇえええ」

「うおおおおお!? ここで吐くなよ!」


 寝ていたメーロンがあまりの臭いに飛び起きて、そして吐いた。その後もしばらく臭い臭いと一悶着あったが、なんとかゲキシュウ草を加工して、瓶に詰め込むことができた。

 しかし、その代償として、メーロンの機嫌はすこぶる悪くなってしまったのだった。

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