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黄金の森で! 深緑竜について!



「さて、明日はいよいよ深緑竜フォレスディエナ探しじゃな」


 晩飯の肉にかぶりつきながら、メーロンは唐突につぶやいた。

 ちなみに、今食べているのはポロポロの肉だ。エバの言っていたとおり、柔らかくてジューシーで、様々な香草で包み焼きにしたような味わいのこの肉は、ラルガーとは比べ物にならないほどうまい!

 口のなかで優しくほどけていく食感が、次から次へと肉を口にいれたくなってしまうほどだ。


「んぐんぐ。ずいぶんと急だな。もう少し準備を整えてからでもいいんじゃないか? まだ、この森にもなれてきたばかりだろ」

「それは甘い考えじゃ。深緑竜は、ある時期にしか姿を見せぬ貴重な竜なんじゃ。時期を過ぎると、まる一年は姿を見せなくなってしまう」

「ある時期って?」

「黄金の果実の時期、ということですね」


 エバの言葉に、メーロンは無言でうなずいた。


「黄金の果実ってなんだよ」

「その名の通り、金色に輝く果実です。芳醇な甘い香りを放ち、味もとても甘くておいしいそうですが、その果肉には強力な麻痺性の毒が含まれており、食べたものは数時間は身動きが取れないそうです。そして、動けなくなった獲物を、どこからかフォレスディエナが表れて……」

「食べる、ってわけか。つまり、その黄金の果実とフォレスディエナは共生関係にあるんだな」

「そうですが、私の説明を先に言わないでください!」

「あ、ごめん」


 怒っているのかぴこぴこと、エバの頭についた三角の突起が動いた。ていうか動くんだそれ。


「ふぉっふぉ。深緑竜フォレスディエナは、別名『大蛇竜』とも呼ばれておる。いまだかつて、奴の首から下を見たものはいないほどに長い首を持ち、地面をはいずって獲物を丸のみにするんじゃ」

「体が見えない? ってことは翼は頭に生えているのか?」


 この世界では、翼をもつ獣が竜という扱いになっていることは、いままでの傾向からすでにわかっていた。

 ただ、今のところ翼らしい翼をもった竜は、見たことがないけどな。


「いえ、それが、頭にも翼は生えていません。翼っぽい形の突起があるだけです」

「長年、国の学者共も議論していたがのぉ。まぁ強いし翼っぽいのも生えているし竜でいいんじゃないかってことになったんじゃ」

「テキトーかよ!」


 エバを作った技術者といい、エデンの国の国民はみんなそうなのか!?


「仕方ないじゃろー。竜の生態は未知の部分が多いんじゃ。何をもって竜とするのか、そもそも竜とはなんなのか。ただ一つわかることは、獣や人とは違い、異質なまでの強さを持っているということなんじゃよ。竜としては最も弱いヴルガーやラルガーでさえ、獅子や熊をたやすく狩る。それは、生物としての圧倒的な優位性の表れなんじゃ」

「圧倒的な、優位性……」

「そして、その竜の中にも、さらに生態系のピラミッドがあります。今回、狩猟するフォレスディエナは、この森の生態系の頂点に君臨する竜。これまで人の手で狩った記録はなく。そもそも個体数の少なさや、出現時期の関係で、姿を見ることも稀です。正直、情報が少なすぎて困っています」


「つまり、まずはその竜を見つけ出して、どんな生態なのかを調べるのが先。ってことだな」

「ふぅむ、その通り。見つけるのにも時間がかかるし、生態を調べるのにもすぐには終わらん。しかも、奴が表れる時期は限られておる。それが、ワシが急いでいる理由じゃ。まぁそんなことはいいんじゃが……、お主、恐くはないのか?」

「そりゃ恐いさ。けど、その竜を退治しないと俺は元の世界に帰れないだろ? それに、俺だってもう一人で戦える。しかも、二人共一緒に戦ってくれる。なら、やれないことはないさ。そうだろ?」


「ふぉっふぉ! 頼もしいのぉ、ワシらの救世主様は! ふぉっふぉ! ふぉっふぉっふぉ!」

「く、ははは」

「二人とも、なにがそんなにおかしいんですか? 教えてください!」

「エバにもわかる時がくるさ」

「そのとーりじゃ。さあ、明日は早朝から探索にでかける。わしゃもう寝るぞい」

「わかったよ、おやすみ」


 メーロンはそのまま返事もせずにローブに包まって、あっという間に寝てしまったのだった。



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