黄金の森で！ ラルガーという竜！
「うおおおおおおい！？ なんだよあいつらめちゃくちゃこええ！」
「黙って走ってくださいムサシ！ 舌を噛みますよ！」
「ほおおおおおおおおおおお！ 嫌じゃ嫌じゃ死にたくないいいいいいいいい！！」
「おい！ その言葉あのじーさんにも言ってやれよ！」
俺たちは今森の中をひたすら走っていた。当然、みんなが一斉にランニングに目覚めたわけではない。そもそもランニングなんてペースじゃない、全力疾走だ。
「ガウウウウ！」
「ガルゥウウ！」
俺の背後からは、草木を踏みにじる音と、どう猛な鳴き声が聞こえていた。
というのも、食料を探していたらこの森に生息する小型の竜、『ラルガー』の巣に誤って足を踏み入れてしまい、巣でのんびりと昼寝をしていたラルガーたちを起こしてしまったのだ。
まぁ、もう少し詳しく言うとメーロンがずんずん進んでいったら、崖から落ちてそこがラルガーの巣だったのだが。
当然、自分たちの巣に無断で入ってきた獲物を、彼らが見逃すはずもなく。今まさに、命を懸けた鬼ごっこの真っ最中というわけだ。
「クッソ！ あいつらいつまで追いかけてくるんだよ！？」
「ラルガーは、小型とは言え非常にどう猛な竜です！ ヴルガーと同じく翼は退化していますが、その代わり前足が大きくなるように進化しました！ あの足から繰り出されるネコパンチは大型の竜ですらダメージを負うほどです！ そして、その前足による跳躍は、木の上にいる獲物を捕らえたり、逃げる獲物を飛び越え、群れで囲って狩りをすることにもつかわれますうううううう！」
「もーいいから！ 説明はいいから走れ！ うおおお！？」
俺の右脇を、一頭のラルガーがすり抜けた。どうやら、今エバが言っていたように、前足の跳躍で一気に距離を詰めてきたらしい。
虎のような見た目の竜が、俺と並走して何度も噛みつこうと牙をむいてくる！
「うおおおお！？ よ！ ほ！ はああ！」
ガチン！ ガチン！ ガチン！ っと、ラルガーの牙が宙を噛む。
今のは神回避！ 神回避だった！
「もうすぐ森を抜けます！ ムサシ！ 耐えてください！」
「ぐおおおおおお！ 死んでたまるかああ！」
「むしろ死ねええええ！ 死んで囮になれえええええ！」
「ふざっけんなクソジジイ！ てめぇ救世主になんてこと言いやがる！」
「知るかバカモンが！ セカンドメシア召喚じゃっちゅーのおおお！！」
「ジジイイイイイイイ！！ だいたい、おめーがラルガーの巣に落ちるからこうなったんじゃねーか！ おめーが囮になれよおおおお！」
「知らんもーんねー！ だれにだって間違いはあるわいバカモンが！ そもそも老人をいたわらんかああああああ！」
「こんだけ走っといて何が老人だジジイイイイイイイイイ！」
俺は、隣を走るメーロンと左肩をぶつけながら、森の中を走り抜ける。
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