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黄金の森で! 悶絶ぅ!



「くっせええええええ!?」


 翌日、俺達は水場を探して森の中を歩き回っていた。そして、小川を見つけ、その近くに生えていた、妙に鮮やかな青色の草を調べていたところである。


「それは、ゲキシュウ草ですね」

「げ、ゲキリュウ草!? 確かにこの臭いなら竜もイチコロだな!」

「いえ、ゲキリュウではなく、ゲキシュウです。すごい臭いという意味の方です」

「ふぉっふぉ。ふっはいほぉ」


 メーロンはあまりの臭いに鼻をつまんでいるようだ。しかし、その気持ちもわかる。とてつもない激臭で、俺の目からは涙が出てきた。なんといか、腐った魚に馬の糞をぶちまけて牛乳をトッピングしたあと、一カ月ラフレシアの中で熟成させたような臭いだ。


「一説によると、その植物は、すべての動物の嫌う臭いを持っているそうです。そのため、その植物が生えている付近にはほとんど獣や竜は近寄りません。誤って口に含んでしまうと、あまりの臭いで気絶してしまうそうです。いわゆるシダ植物系で、種を使わず、胞子によって交配します。暗く、土壌が豊かでかつ、気温の高い場所にしか咲かないため、この森の中でしか見ることができない貴重な植物であり、先ほど言った通り、強い臭いによって外敵から身を守ります。ですが、ポロポロという草食の獣だけは例外で、このゲキシュウ草を食べたり、体に塗りつけて、その匂いの力を借りて外敵から身を守ります。また、ポロポロは非常にグルメで知られており、様々な香草を食べることから、その肉は非常にジューシーで『森の極上ディナー』とも呼ばれており……」

「も、森の極上ディナー!? そいつはどんな奴なんだ!?」

「は、ええと。あれです!」


 エバが指さした先には、豚の鼻の部分に丸い甲羅をつけたような動物がいた。緑色の丸々とした体は、いかにも『おいしそう』なビジュアルである。


「肉! おいしい肉ぅ!」


 俺は剣をもってすかさず、ポロポロにとびかかった。すでに俺の鼻はゲキシュウ草に慣れている。よってお前たちの防衛術は俺にはきかん!


「あ、ムサシ! 待ってください!」


 ポロポロは、俺に気がついた瞬間、逃げるようにして尻を向けてきた。いける! この距離なら確実に一太刀浴びせられる! そう思った、次の瞬間。


「ぷぎぃぃぃ!」

ボシュウウウウウ!



「これは!? くっさああああああ!?」


 ポロポロの尻から放たれた黄色いガスは、ゲキシュウ草に負けず劣らず強烈なにおいがした。といか、ベクトルの違う激臭だ。ゲキシュウ草が生もの系の臭いなら、こちらは硫黄系の臭いだ。とんでもなく体に害のありそうな刺激臭がする。


「ああ、だから言ったのに。ポロポロは、腸の中に小さな袋を持っていて、その中で様々な植物を発酵させているのです。そして、外敵に襲われたときに、相手に向けて放ち撃退します。中には、毒草を発酵させたものもいるので、今回はラッキーでしたね」

「ふぇんふぇんラッヒーひゃないひょぉ」

「ふぉっふぉっふぉ。マヒへふっふぁいほぉ。ごめん、吐きそう。うげぇぇ。えほ! げっほごほ!」


 俺は、ツーンと痛む鼻を抑えながら、林の奥に逃げていくポロポロを見送った。次こそは、次こそは絶対仕留めてやるからな!

 あと、メーロン、吐くくらいならどっか行ってろよな……。

 エバが、メーロンの背中をさすり始めていた。


「ふぁんへ、ヘバはへいひなんは?」

「あ、防御魔法を使ってます」

「俺たちにも使えよ!?」

「てへへ、エバったらドジっ子。めっ! だぞ、エバ!」


 彼女はコツンと自分の頭を叩いて舌を出していた。なんでこの子はいちいち古風なんだ。

 これが、昨日の話の結果なのか。それとも、もともとエバが持っている機能なのかはわからない。もしかしたら、単にそういう演技だったり、和ませるためのプログラムみたいなものかもしれない。

 けど今、俺にわかるのは、彼女はとても楽しそうに笑ってるってことだけだった。



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