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黄金の森で! 碧白き月の晩に!



 その日も、ヴルガーの硬い肉を食べた。最初こそ感動したが、さすがにもう、この味にも飽きたな。せっかくの森だし、明日は食料を探したい。

 その事をメーロンに伝えようと、彼に視線を向けると、メーロンはすでに横になって寝息をたてていた。なにも言わずに寝てしまうなんて、やはり、年寄りには徒歩での旅は辛いものがあるのだろうか?

 そもそも、彼は腰が悪いと言っていたし、こんどエバと一緒にマッサージでもしてやろう。なんだかんだ、文句を言いあいつつもメーロンには助けられているしな。


「さて。俺も寝るとするか―」

「承知しました。見張りは任せてください。あ、ムサシ」

「ふぁ~、なんだー?」

「このお水、いただいてもいいですか?」

「ああ、いいんじゃないか? たぶん明日は水場とか食料探しになるだろうし。使い切っちまってもいいだろ」

「ありがとうございます」

「おー。んじゃ、おやすみー」

「おやすみなさい」


 ……ん? そういえば、エバが水なんてなんに使うんだ? あいつは、そもそも水も食料も必要ないはずだけど……。まぁいいや、明日聞けば。

 そのまま俺は、眠りについた。しかし、それからしばらくして、尿意に襲われて目が覚めてしまった。


「ん~、便所~」

「んごー。んごー」

「いびきでけーな、じーさん」

「ん……………………。ん、んごー」

「無呼吸症候群……!?」


 メーロンの体調は心配だったが、俺にはどうすることもできないので、とりあえず用を足しに林の中に入る。

 夜でも湿気が強いせいか、この辺りは気温が高く感じる。じっとりと汗ばんだ服が気持ち悪い。

 ホーホーと、梟のような鳴き声が聞こえるが、はたしてこの世界に梟はいるのだろうか?


「ううー、でるでる。昨日水を飲みすぎたかなー」


 用を足しているその時、林の奥で、何かが動く気配がした。

 地面から生えた草が、不自然な揺れかたをしたように見えたのだ。

 林の奥は、密集した木々が視界を遮っており、その奥の状況が確認できない。


「なんだ? 獣か?」


 俺は、ズボンのボタンを閉めて、ベルトから剣を抜いた。

 林の奥では、がさがさと何かが動いているようだ。

 どうやら、林の奥になにかがいることは確かなようだ。そういえばエバはどこにいるんだ? まさか、奥にいるやつに襲われて?

 嫌な予感が脳裏をよぎり、先ほどまでの暑さからくる汗とは違う、じっとりとした嫌な汗が背中を流れる。

 俺は、一度大きく息を吸い込んだ。はやる気持ちを抑え、脳に酸素を送り込む。


 重要なのは、エバの安否。それと、敵の確認。


 そう、心の中で呟いて、そして林の中に飛び込んだ。




 林の奥は、少し開けた場所になっていた。生えている草は足首ほどの高さしかなく空を覆う木はない。空からは、満月の光が差し込んでいて、森に漂う草木の花粉のせいか、月は青く輝いていた。

 だが、俺の視界に一番最初に入ってきたものは、月の光などではなく。肌色。

 視界に収まるものは、たわわに実った大きな胸とその胸元で光る深緑の水晶。白くくびれた腰。それと……、ボーガン。


「うおお!? え、エバ!? おま、なんつーマニアックな格好をしてんだ!」

「ムサシでしたか。驚かせてしまい申し訳ありません。ところで、マニアックとはどういうことでしょうか?」



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