黄金の森で! 拠点探し!
森へと向かう道すがら、俺は前にエバから聞いた話を思い出していた。
ここ、ミトランシェは、凸型の形をした大陸らしい。正確には、四角形の部分は丸くなっているらしいので、鍵穴を逆さにした形、ということだろう。
そして俺たちがいるエデンの国は、その四角形のちょうど右上の部分。そこから下、つまり南に行くと黄金の、さらに南下すると神隠しの砂漠。そこから北西に進むと蒼炎の火山があり、北には光の海があるそうだ。そして、最後の目的地の闇の渓谷は、凸型の上の出っ張り部分にあるらしい。
ここからならそれなりに近いが、光の海側から行かないわけは、切り立った崖に阻まれて、それこそ空を飛んだり、強靭な足腰をもった生き物でなければたどり着けないとのことだ。
なので、効率を考え南の黄金の森から順に、大陸を一周するような形で竜を狩りに行くことになった。
そして今、荒れ果てた黒土の大地から、緑豊かな森の入り口にたどり着いたのである。
「うおおおお! 久々の緑だー!」
「ふぉっふぉっふぉ、はしゃぎすぎて気を抜くなよ。ほれ、あそこを見てみぃ」
俺はメーロンの指差す方向へと視線を向けた。そこには気持ち良さそうに空を飛ぶ2匹の翼竜の姿が見える。
青い空を眺めながら、エデンの国にはなかった、青臭い植物の匂いがしていることに気がついた。
「あれがどうかし……」
いいかけた瞬間、森の中から巨大な竜の頭が伸びて、翼竜を丸のみにした。
そして相方を失った翼竜は、悲鳴にも似た叫び声をあげて遥か彼方へと飛び去っていったのだった。
「……なぁじーさん」
「なんじゃー?」
「やっぱり、いくのやめね?」
「ふぉっふぉ、ダメじゃ」
ですよねー。そう心の中でつぶやきながら、俺は前を進むメーロンの後ろを重い足をひきずりながらついていった。
森の空気は、じめじめとしめってとても重々しい。
一息、肺に空気を入れると、胸がきゅっと締めつけられ、俺の心臓が鼓動を強める。
これが、『空気が濃い』というものなのだろうか?
それとも、至るところで行われる食物連鎖の危機感を、俺の本能が感じ取っているのだろうか。
「まずは、拠点作りですね。エデンの国のような、あまり外敵のいない環境であれば場所選びは簡単でしたが。今回はそうもいかないでしょう」
「そのとおりじゃな。拠点は、水場から離れた場所、なおかつ周囲が見渡せる場所がええのぉ」
周囲が見渡せるってのは、だいたい意味がわかるけど。水場の遠くがいい?
ああ、そういうことか。
「そっか。水場の近くだと竜とか獣がよってくるんだな?」
「ほ、よく気がついたのぉ! お主にはやはり、サバイバルの才能があるようじゃ」
「あんまりうれしくねーなその才能。どうせなら偶然おっぱい揉んじゃうような才能が欲しい」
「それはワシも常々思っとる」
「お二人ともおバカなことを言っていないで、早く拠点になりそうなところを探してください。急がないと、日が暮れてしまいますよ」
「「はーい」」
結局、拠点になりそうな場所が見つかったのは、とっぷりと日が沈んでからのことだった。




