エデンの国で! 500年!
「それ、今思いついただろ」
「失礼な! 半分本当じゃ!」
「半分かよ! もーいいよ、肉よこせ肉!」
俺は、メーロンの手から肉を奪い、思いっきりかぶりついた。
口の中に広がる肉汁と、少し焦げ臭い、濃厚な肉の香りが胃袋をこれでもかと刺激する。
いままでずっと非常食の乾燥豆だっただけに、そのうまさは格別だった。
「うんんめええええええ! くっそうめぇよ!」
「ほっほ、よかったのぉ。そんなに喜べば、エデンの国の民も喜ぶわい」
「むぐむぐ、なんでだ?」
「そりゃー、ヴルガー達はエデンの国の民を糧にしているからのぉ」
「んぐ……、それって……」
つまり、今俺の食ってる肉は……。
「おいおい、どうした? まだまだたんとあるでのぉ。いっぱい食え」
「お、おう!」
まぁこの際細かいことはいいにしよう。俺が今食ってるものが、何を食べて成長してきたかなんて関係ないさ。
図太く行こう、図太く。
俺は、次の肉に手を伸ばし、再びかぶりついた。
あらかた肉を食べ終わり、焚火に当たりながら一息ついた。
周囲はすっかり夜の帳が下ろされて、木が燃えるはじけるような音だけが時折聞こえてくるだけだ。
エバはせっせと今日使ったボーガンの手入れをしていた。
どうも、今日撃った時に、やや右にずれてしまうとのことなので、その調整も兼ねているのだろう。胡坐をかいた彼女の柔らかそうな膝の上には、広げられた布巾と、様々な工具が置かれていた。
というかスカートの……中が……みえ……。
「ムサシ、地面に頭を擦り付けてどうしたんですか?」
「お、おお。その工具はどこから持ってきたのか気になってさ?」
「いや、頭を擦り付けとる理由にならんじゃろ、それ」
「るっせ! 大地が俺を愛してやまねーんだよ」
「これは、武器庫にあったものを拝借しました。後々必要になると思いまして」
「なるほどなー。エバは本当に優秀だな。俺はそんなの全然思いつかなかったよ」
「エバが優秀なのは当然のことじゃ。なんせわがエデンの国の最高の技術者たちが作った最先端の魔導兵器なんじゃからのぉ。彼女の胸にはめられた魔導エンジンは、竜人族の秘宝を加工して作られた最高クラスのもので、日と月の光さえあれば、今後500年は可動し続けられる代物じゃ」
「500年!? すげぇな。500年後なんて想像もできねーや」
「まぁそんなに長生きできるとしたら、あとは竜人族くらいじゃろうな」
竜人族もそんな長生きなのか。この世界はスケールが違うな。
500年後か……この世界はどうなっているのだろう?
人類は、復興できているのかな?




