エデンの国で! じーさんみてみぬふり!
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※ ※ ※
【サラ】
「顔色が悪いよサラ」
空から照りつける灼熱の太陽が、私たちを焼きつける。
幾度か、意識が飛びかけるも私は必死にそれを繋ぎ止めていた。
「私なら、大丈夫です。あなたこそ、運動が苦手だったはずですが、大丈夫ですか?」
「僕なら平気さ。今までさんざんいろんなところを歩き回ったからね。それは君だって知っているだろ?」
「そうですね。あなたが白の蛇の神託を受けたと聞いたときは、口から心臓が飛び出すかと思いましたよ」
「ふふ、君が冗談を言うなんて、珍しいね。いるかい?」
彼の差し出した水を、私は拒んだ。砂漠で水は貴重なものだ。それに、旅人の身である私たちにとって、次にいつ補給できるかもわからない。
軽い気持ちで飲んでいいものでは決してないのだ。
「いいえ、それはあなたが飲んでください」
「僕ならさっき飲んだから平気だよ」
「ならば、子供たちにあげてください」
「君は頑固だな」
「それはお互い様でしょう、アブラム」
私は、砂丘の頂上から空を見た。
遮るものはなにもなく、ただ私たちの砂を踏む音と、時おり聞こえる翼竜の鳴き声だけが、虚しく聞こえている。
この旅に意味などあるのだろうか?
本当に、約束の地はあるのだろうか?
そもそも、私たちはやっとの思いで辿り着いた砂漠の国を追い出され、再びもとの大地を目指している。いったいどこが目的地で、何を成せばよいのか、私にはわからない。
ただ刻一刻と消耗する体と心だけが、今の私を形作る全てなのではないだろうか。
ふとした考えは心に沈みこみ、そのまま浮き上がることはなかった。
今はただ、前に進むだけ。それだけなのだ。
※ ※ ※
【ムサシ】
「なんかさっき爆発音が聞こえたんじゃが。大丈夫じゃったか?」
装備を整えたあと、メーロンと合流した。どうやら彼にもさっきの爆発音が聞こえていたらしい。
「ああ、大丈夫大丈夫。エバがアフロになったくらいだ」
「いや、全然状況が読めないんじゃが。まぁ隠れてて正解じゃったかの。ふぉっふぉ」
「隠れてたのかよ! 助けにこいよ!」
信じられないことを平気でいうなこのじーさん!
「いやだってワシ王じゃし。家臣たちが命がけで救った命じゃぞ? 大事にせんといかんのじゃ」
「その大事な命が勝手に召喚した俺のことはどうでもいいってのか!?」
「そうわ言っとらんじゃろう。まぁこの辺りにいる竜や獣などたかが知れておるしの。それくらい自分でなんとかできんようじゃったら、この先足手まといじゃわい」
「うぐっ。でもよぉー」
妙に辛辣な言い方に、若干腹を立てるも、言っていることは間違っていないので反論はしないことにした。
「ああ、そうじゃ。今周辺を見回っていたら、ヴルガー共がうろついておった。せっかくじゃから試し切りにそいつらを狩ってくるとええ。そうじゃのう、5頭くらい狩ってくるんじゃ」
「ヴルガーってなんだ?」
「ヴルガーとは、闇の渓谷周辺に生息しているといわれる小型の竜です。主に動物の死肉や小動物を主食としています。翼は退化して、前足と同化していますが、夜間に木の上などの高いところから滑空して、獲物を仕留めます。また、地上での動きは俊敏で、狭い隙間などの暗闇を好みます。また、ヴルガーの表れる場所には必ず死体があるので、『不吉な残飯喰い』と呼ばれることもあるそうです。さらに、過去には……」
「あーストップストップ。もう大丈夫だ。それより、今の俺でもそのヴルガーってやつは倒せそうかな?」
「問題ないと思います。小型の竜は、子供でも狩ることができるくらいですから」
話を中断させたからか、エバの口調はやや冷たかった。
だが、子供でも狩れるときいて、少しだけ安心した。それなら俺でもなんとかなりそうだな。