エデンの国で! 防具も選んじゃお!
そういってエバは、俺から剣を受け取り、じっと眺めた。ひとしきり、柄から切っ先までを眺めると、俺に顔を向けて、赤く艶やかな唇を開いた。
「これは、バーリス・ウーズという剣です。峰のカートリッジに、毒草や、火薬を詰め込むことで、切った時にその効果を使えるというものです」
カートリッジに入れたものが剣の内部を通ってこの穴から出てくるってことなのかな。これならカートリッジに入れるものによって、応用も効きそうだし、なかなかいい武器なんじゃないだろうか。
使い方をよく考えれば、さっきの爆発剣みたいなこともできそうだし。
「ですが、これを扱うには、毒草や爆発物の知識がなければなりません。まだこの世界に来て日の浅いムサシでは扱いきれるかどうか」
ああ、それでこれを選ばなかったのか。彼女は彼女なりに、俺のことを考えてくれていたようだ。
でもそれについては、初めから心配なんてしていない。
「それなら心配ないだろ。そういう知識に詳しい従者が、俺にはいるんだから」
俺は、拳をエバに突き出して笑った。今俺、超かっこいいんじゃないか?
「なるほど、承知しました。……ところで、この拳は何ですか? 決闘、でしょうか?」
「いやいや違う違う! 俺の拳にお前の拳をぶつけんの!」
「なんのために?」
「なんのためにって……。とにかくそういうもんなんだよ。友情の証ってやつなの!」
「友情……」
不思議そうな顔で、エバはこつんと俺の拳に自分の拳を当てた。エバの装甲のとがった部分が、ちくりと刺さったので、今後はもうやらないかもしれない。
彼女の手は、思った以上に固かった。
「さて、次は防具だな」
「防具はお任せください! ムサシの選んだ武器の傾向から、最適な防具を選んでみせます!」
「お、おお。じゃあ頼むわ。ついでにお前もそのジャージはやめて、自分の防具を選んで来いよ。あと武器も」
「承知しました!」
いやにやる気だな。急にどうしたんだ? まぁ、今回も変なものが来るだろうし。そのつもりでいよう。
そして再び空を眺めながら待ち始める。東の空から2羽の鳥が飛んできた。1羽はさっきの鳥だろうか? うまいことナンパしやがってこいつめ。
それにしても、エバの奴、今回は妙に長いな、などと思い始めていたら、彼女が地上に出てきた。
「持ってきました!」
彼女は、そういって服を広げた。広げられた服は、深い緑を基調としており、左胸には心臓を守るための金属性のプレートがとりつけられていた。
服そのものも、よく見ると、何かの生き物の皮でできているのか、うっすらと鱗の痕がついていて、手でなぞってみると、ひんやりと冷たく、柔軟な素材でできているようだ。
肩から背中にかけては、短く切ったマントのような茶色の布がついていて、どうやらそれはフードにもなっているようだ。肘から手の甲にかけては、胸と同じ銀色の金属でできている。
ズボンも、服と同じく緑色の生地でできていて、膝から脛は、胸と手と同じ金属製だ。
ブーツは、動きやすそうな、柔らかい黒皮でできている。
「おお、これいいな!」
「お気に召しましたか?」
「ああ! これにするよ! サンキュー、エバ!」
「ありがとうございます」
小さくお辞儀をした彼女の顔は、どこか誇らしげに見えた。




