エデンの国で! 異世界に感動!
「いてて、急に立ち止まるなよ」
どうやら行き止まりまで来たようで、メーロンの前には積み上げられた石の壁が行く手を阻んでいた。
石の壁からは幾筋もの光が漏れ出しており、どうやらそれほど頑強なつくりではないようだが一つずつどけるとなるとなかなか骨がおれそうだ。
「おお、すまんすまん。さて二人とも、ちょっとさがっとれ」
「何をするんだ?」
「こうするんじゃよ!」
メーロンは右手にもった杖を掲げた。杖の先端に取り付けられた丸い水晶がみるみる緑色の変わっていき、そして、
ズドォォォォォォオオオン!
不意に、杖から凄まじい衝撃波が放たれ、石の壁を吹き飛ばした。出口からは、温かい日差しが差し込んできて、薄暗かった通路を照らし出す。
「ふぉっふぉ、うむ。体調は万全じゃな」
「すげぇ……」
俺は、今目の前で起きた出来事に唖然として、口をぽかんと開けて立ち尽くしてしまった。
「ふぉっふぉ、こんなことで驚いていたら、この先身が持たんぞ、救世主殿。それに、いずれはお主にも使える力じゃ」
「俺にも使える力……」
「まぁつらーい特訓に耐えたらの話じゃがのぉ! まぁ心配するでないわ、エバは防御魔法も身体能力上昇魔法も使える。滅多なことがなければ死にはしまいて! ふぉっふぉっふぉ!」
せっかく高揚していた気分が、メーロンの言葉で一気に冷めてしまった。そんな俺のことを知ってか知らずか、彼は勢いよく外へと飛び出していった。
「よっしゃ! ワシいちばーん!」
「ガキかよあのじーさん」
く……! 俺が一番乗りしたかったのに……。
「まぁまぁ、メーロンも、久しぶりの外で嬉しいのですよ。私には気持ちはわかりませんが、状況的にそうだと推察します」
まぁそれもそうか。あのじーさんは、俺なんかよりずっと長い間あの部屋にいたんだもんな。ずっと、一人で。
それがどれくらい寂しいことなのか。実家に引きこもっていた俺にはよくわかる。理由は全然違うけど、メーロンは自分以外が死んで、俺は、目標を見失って……。
って、感傷に浸るなんて俺らしくないな。まだ、少し、混乱しているのかもしれない。
「おーい! はよこんかー!」
「今行くよー!」
メーロンに催促され、俺は、光の中へと一歩踏み出した。
「う、ぉぉぉぉおおおお! すげぇ!」
太陽の元にでたのは、およそ4日ぶり。それだけでも十分感動できるというのに、俺の目の前には、あまりにも雄大な自然が広がっていて、その力強さに思わず圧倒されてしまった。
視界の左側には、深い緑色の森が見えて、その右隣には、黒い煙をもうもうと吐き出した火山が見えた。火山の上空を何匹か鳥のような生き物が飛んでいるようだが、あれが竜なのだろうか。さらに顔を右に向けると、そこには真っ青で広大な海がどこまでも広がっていた。
空を見上げると、大きな翼が生えた、プテラノドンのような生き物が飛んでいる。その翼の色は鮮やかな赤色で、俺たちの旅立ちを祝福するように大きな鳴き声をあげた。
「すごいじゃろう? 美しいじゃろう? これがこの世界、ミトランシェじゃ!」
下からメーロンの声が聞こえて、視線を下げる。そこには、満面の笑顔のメーロンが自慢げに手を腰にあてて立っていた。
しかし、足元に広がる台地をみて俺は驚いた。どこも黒と灰色に塗りつぶされているのだ。それが、ただの地面の色ではなく、焼け焦げた木や、崩壊した建物の残骸だということに気がつくのに、それほど時間はかからなかった。
鼻から吸い込んだ空気もどこか淀んでいて、先ほどメーロンの言っていた死の土地という言葉を、俺はようやく理解した。
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