廃城で! 設定変更!
「おお、変えられるとも。『優しい近所のお姉さんモード』、『ドジっ子で照れ屋さんなメイドさんモード』、『にゃんにゃんネコ妹モード』の三つから選べるぞい」
「なんかすっごいかたよってねー!? なにその選択肢! 願望丸出しかよ!」
「いやー、ちょっと技術者共に無理を言いすぎての。だいぶ精神的にまいっとったみたいでのぉ」
ブラックすぎるだろこの王国! 王様が王様なら国民も国民ってか!
というか、それでもわざわざその3つにはしないだろ……。絶対制作者の趣味だ……。
そもそも変える必要あるのか? あんまり愛想は良くないけど、いまでも十分いい子だと思うけど。
……まぁ、ものはためしってやつか?
「んーじゃあ、とりあえず『優しい近所のお姉さんモード』で、俺の能力を見てもらおうかな」
「承知しました」
エバは、すーっと息を吸い込んで、にこりと笑った。
おお、さっきまでの能面みたいな顔と違って、表情ができると一気に雰囲気が変わるな。
普通の女の子みたいだ。
「ボク~? お姉さんにボクのこと教えてもらいたいな~。あんなところや、こ・ん・な・ところとか」
「……え、なにこれ?」
「優しい近所のお姉さんじゃな」
「お姉さんかこれ!?」
「ふぅ~」
「あはぁん……、ってやめろ!」
エバは、俺の胸をぐりぐりと人指し指で押したあと、突然耳に息を吹きかけてきたのだ。
思わず変な声がでちゃったじゃないか……。
「あはぁんってお主。ぷぷ」
「笑ってんじゃねーよ! っていうかこれ『近所の優しいお姉さん』じゃなくて、ただの欲求不満な女じゃねーか!」
「お気に召しませんでしたか?」
「召さねーよ! 次! 『ドジっ子で照れ屋さんなメイドモード』!」
そもそも従者なんだからはじめからこれが正解なんじゃないだろうか。
ただ、『ドジっ子』って部分が気になる……。嫌な予感しかしない。
「承知しました」
堅苦しい返事の後、エバの頬にはみるみる赤みが差してきた。
そして拳を握りながら、両手で口元を隠しもじもじとしている。
お、おお。なんかこれいいな。こう、恥ずかしがってる感じがなんとも。
「あ、ああ。そんなに見ないでくださいご主人様ぁ。恥ずかしいですぅ」
「おぉ……。じゃあ、さっそく俺の能力を見てもらおうか」
「ひぇ、ご主人様の、能力を見るんですか?」
「そうだ、どうした早くしてくれ」
「そんな、ご主人様の太くてたくましい能力を見るなんて。私には恥ずかしくてできませぇん」
「なんだよ太くてたくましい能力って! あるかそんなもん! いいから早く見ろって!」
「いや、やめてくださぁぁぁい!」
ヒュン! ボゴォォ!
「へ?」
エバが拳を突き出した瞬間、彼女の肘から先が俺の後方へと飛んで行った。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこには壁にめり込む彼女の右腕が突き刺さっていた。
あれがもし、俺にあたっていたら……。考えるだけでも背筋が凍る。
「ああ、ごめんなさいご主人様! もう、エバったらドジっ子! てへ!」
しゅるると、ワイヤーに引き戻されて、エバのもとに右腕が戻る。
そして、小さな赤い舌を出してウィンクした。
「てへじゃすまないよこれ! あたったら顔面吹き飛んでたよ! おいじーさん戦闘力は無いんじゃなかったのか!?」
「ああ、それは空を飛ぶ翼竜を捕まえるために搭載したんだがの。これは、武器として使えるかもしれん」
「感心してる場合じゃないからね!? お前ら救世主の命軽く見すぎ! 次! 『にゃんにゃんネコ妹モード』ぉ!」
「あ、まだ続けるんじゃね」
当たり前だ! ここまで来たら最後まで確認してやらないと気に食わん!
「承知しました」
正直、一番怪しいモードだが、果たして。
エバはすっと目をつむり、そしてその場に座り込んだ。
「ど、どうしたエバ、大丈夫か?」
さっきの一件からかなり警戒はしているが、肩を震わせながら床に手をついているエバの様子が、徐々に心配になってきた。
俺は警戒したまま、彼女に近づいた。
「にゃ~ん」
にゃ~ん?
「にゃああん!」
「うおお!?」
突然、ネコのような鳴き声を上げたエバに押し倒されてしまった。
エバの胸が、俺の体と挟まれて押しつぶされて柔らかくてって、なにこの状況。
あああ、ていうか俺のジャージからなんかいろいろこぼれそう!
「え、エバ? おいどうしたんだ? ていうか、胸しまえ胸!」
「な~」
「ええ!? は、ははは! くすぐったいから! やめろって!」
押し倒されて身動きの取れない俺を、エバは躊躇することなく舐め出したのだ。
少しざらざらした舌の感触が、なんとも言えずむず痒い。
というか、胸の感触とか、顔にかかる熱い息の感触とか、いろいろまずいんだけど!
「見事なネコじゃな。ネコ妹じゃ」
「どこが!? ただのネコじゃん! いやネコですらねーよロボだよ!」
焦りからか、自分でもよくわからないことを口走っている気がする。
「お気に召しませんでしたか?」
俺の上で普通の状態に戻ったエバが不思議そうな表情をしていた。
か、顔の距離が近い。彼女の金色の瞳と、紅色の唇に思わず吸い寄せられそうになる。
というか、彼女の重みとか柔らかさのせいで、心臓が、祭り囃子の太鼓並みにドンドコ脈を打っていて、どんどん顔が熱くなってきた。
い、いかんいかん。仕事しろ理性!
「め、めーしーまーせーんー! っていうかお前実は演技しているだけだろ!? もうデフォルトでいいから早くどいてくれ!これ以上はまずい!」
「なにがまずいんですか?」
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