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#90 私は嬉しい


「……よしっと。」


 書き終えた紙を再度見る。挨拶がひらがなで書かれ、その横に時間帯、ひらがなの上にはちゃんと発音を書いておいた。言語学習のとっかかりに挨拶を覚えるのは良くあることだと思ったからこれだけでも覚えてもらおう。

 シャリヤはその紙を見て目を輝かせていた。


"Harmie es fqa?"

"Ers salaruavo. Nihona'd lkurftless io furnkie salaruavo fal liestu."


 シャリヤはそれぞれの挨拶を自分のノートに写していた。


"Mal, Liestu es 1:20 fal no mag elx deliu mi lkurf Kongnichiwa?"

"Ja."


 こくこくと頷いて、理解していくシャリヤを見ていると自分より異世界語の飲み込みが早い気がしてくる。まだ、挨拶とかそれくらいしか教えてあげてないが、シャリヤは地球に飛ばされても堅実に言語を覚えて暮らしていけるだろう。


"Cenesti? Mi vxorlnes karnicitj lkurferl fal nihona'd lkurftless."


 シャリヤは蒼い目を輝かせながら訊いてきた。自分の話す言語とは全く別の言語にそんなに興味があるのだろうか。


(まあ自分も大概だが。)


 答えたかったが、訊いている内容の内の一単語"karnicitj"が良く分からなかった。手元にある辞書をすぐに引いて、理解しようと思った。しかし、目の前にシャリヤが居るんだから、彼女に訊けばいいと辞書を閉じた。


"Xalijasti, <karnicitj lkurferl> es harmie?"


 シャリヤは問いを聞いて、"hnn......"と唸りながら、天井を仰いて考えている様子だった。そんなに難しい質問なんだろうか、とも思ったが、逆に簡単すぎたり、抽象的すぎる概念で説明しづらいのかもしれない。


"Ers lkurferl zu als larta qune."

"Ar, firlex."


 "karnicitj"は「有名」という意味か。多くの人が知っている言葉、ことわざや詩とかそういう感じのことを訊いているんだろうか。国際語的な日本語のほうがシャリヤに伝わりやすいかもしれない。


(国際語的な日本語ってなんだ?)


 ゲイシャ、フジヤマ、ハラキリ……? 何も知らないで「腹を切るのが私たちの文化です。」とか言われたら、シャリヤにどう思われるか分かったものではない。顔を蒼くして震えながら自分のおなかに刀を突きつけようとするシャリヤの姿が脳裏に一瞬映る。惨い想像に総毛立った。ハラキリはやめておこう……。

 ここは無難に世界が評価した日本の意識を取り上げよう。


"<Mottainai>...... es karnicitj lkurferl'd panqa."

"Mottainai...... Hame fqa'd lkurferl es?"


 シャリヤは興味津々に身を乗り出して訊いてきた。

 しかし、自分は説明するための語彙力を持っていない。「まだ有用なのに無駄にしてしまい嘆く」ということを真っ直ぐ説明できるだけ語彙力が無かった。実演するのがよさそうだ。

 シャリヤを呼んでキッチンに連れてくる。冷蔵庫らしき戸を開けて中にあるものを物色する。手当たり次第に空になっているバッグに食品を突っ込んでいく。何をするのかとシャリヤは怪訝な様子だったが、食品でいっぱいになったバッグをゴミ箱に放ろうとした瞬間、驚いた顔で翠を止めに掛かった。


"Mili cenesti! Cene miss nat knloan fqass mal cene nat lus jiejut! Shrlo ny xynakarif lus plax!"


 シャリヤは慌てて翠の手にあるバッグを取り上げて言った。いきなり》ことをし始めた翠を得体の知れないものを見るような目で見てくる。心が少し傷ついたが説明のためだ。

 シャリヤの言葉の"nat"は「まだ」、"jiejut"は「バッグ」、"ny xynakarif"は「無駄に」だろうと直感的に感じた。たしか"ny"は反対語を作る語だったはずだ。ならは"ny"を抜いた"xynakarif"は「有用に」だろう。


"Ja, Deliu larta xynakarif lus mors ad knloanerl. Fi larta es niv fqa'i, nihona'd larta lkurf <mottainai>."

"Firlex......"


 どうにか分かってもらえたらしい。シャリヤも翠が本気で冷蔵庫の中にあるものを手当たり次第に捨てようと思っていたわけではないことに気付いて胸を撫でおろしていた様子だった。


"Ers vynut lkurferl ti. Pa, edixa mi ekce jusnuk mels co'd eso."

"...... nace."


 謝りながら考える。"jusnuk"は以前フェリーサに驚かされたときに聞いた言葉だ。「驚く」とか「いたずらされる」とかそこらへんの意味なのだろう。

 確かにいきなりこんなことをすれば驚くのも無理はない。ばつが悪い気分だ。


"Pa, nihona'd lkurftless es vynut lkurftless. Edixa mi firlex."

「え?」


 窓から夕陽が差し込む。傾いた太陽が照らすシャリヤの銀髪はセピア色の部屋の中でオーラクリスタルのように淡く色付いて、オパールのような独特の光を放つ。蒼色の瞳はこちらを懐かしむように見ていた。


"Mi lersse co'd lkurftless mal elx cene miss lkurf fal viestiest. Mi vusel."


 その瞳がじっとこちらを見ているのを見ると、気恥しくなって目をそらしてしまった。目をそらした先には時計が掛けられていた。


(部屋に時計ってあったんだっけか。)


 よく見ると"jeska'd lertasal"と文字盤の真ん中あたりに小さく刻まれていた。時刻は6時半、食堂が開く時間まで残り30分だった。

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