表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/377

#78 ˈnjuːməɹəl


 ヒンゲンファールさんの生態、それは基本的に図書館に住み着いているということが一番の特徴として挙げられよう。忙しくぐるぐるレトラの街を歩き回っているレシェールとは違い、エンカウント率が高いという事実は非常に重要なことである。と、自分の考えを反芻しながら図書館までの道を歩いていた。


 ヒンゲンファールに数詞のことについて学べとイェスカに言われてしまった直後、シャリヤに「すぐにでも行ったほうがいい。」みたいな雰囲気で部屋を追い出されてしまった。しかし、今一つ腑に落ちないのはイェスカが何故ヒンゲンファールの名前を知っていたのかというところだ。流石に慰問に行くたびにその地の人間の名前と素性を全員覚えるとか、そういうことはないだろう。ないと信じたいが、ではなんでヒンゲンファールだけその素性を詳しく知っていた?最後に聞いたイェスカの発言の最後の部分は語彙力が無くて理解できなかったが、"ci"を多用していたことを鑑みると「彼女」が指すものはヒンゲンファールであると考えるのが自然だ。


(はあ……)


 頭を振って疑問を振り払う。

 多分、個人同士の人間関係ってこともあるだろう。あまり深追いしない方がいい気がする。


 そんなことを考えながら道を歩いていると、図書館が見えてきた。ドアを開けて、中に入ると緑色のかごを持ちながら書庫整理を行っているヒンゲンファールが見えた。図書館に入ってきた翠を見て、笑顔で振り向いて手を振ってくれた。


"Salarua, hingvalirsti."

"Salar. Jol edixa Irfel jeska klie?"

"Merc, ja."


 ヒンゲンファールはイェスカがレトラに来ていることは理解しているようだ。自分の回答に対して、顔をしかめている様子だった。まあ、ヒンゲンファールさんは普段は騒がしいのは苦手そうだけどだからそんな感じなんだろう。銃を片手にフィシャに詰め寄って、その後戦おうとしたのは、騒がしいのが苦手の範疇に収まるかは知らないが。


"Mi veles lkurfo <deliu co veles kantio dieniep hingvalir ler>."

"dieniepesti?"


 いきなり外国人に数詞を訊かれたら、そりゃ驚くだろう。だが、あれだけイェスカに持ち上げられたのだから語れるだけ語ってほしいとも思った。

 地球の言語の数詞に関しては面白い話がいくつもある。

 例えば、タミル語の"?????"は兄弟言語の分類であるドラヴィダ語族の兄弟として分化する前の元々の姿であるドラヴィダ祖語では数詞"*cay"に中性語尾"-tu"が付いた形が元になっていると言われている。このドラヴィダ祖語の"*cay"は"*kay/*key"と関係があるといわれている。つまり、手から五という数詞が出来たかもしれないのだ……とインド先輩が言っていた。

 こういう話は面白いですむが、フランス語では何故か途中から20進数で数を数え始めるし、ドイツ語は確か21とかは(2*10)+1の順番じゃなくて1+(2*10)の順番で言うし、もし、リネパーイネ語でそういうことがあったら面倒だ。ただ今まで数字を読んできて、何か違和感があったことは無いので多分10進数だろう。少なくても10を「イチゼロ」とは読まないだろう。


"panqa, qa, dqa, iupqa, neoqa, xantaqa, xenqa, lekqa, fentiqa, anpanqa"

"Hm"


 ヒンゲンファール女史はかごを下ろして両手をこちらに向けて指を折りながら発話していた。指折りと数詞が対応しているところを見ると指を追って数えるという方法は地球人と同じような感じなのだろう。つまり、さっき言われた十個の数詞は一から十までの数詞だろうか。

 最後の"anpanqa"は"panqa"によく似ている。頭についているanは十の位を表す接辞なのだろう。これが前の方について十を表すなら、廿を表すには"qa"に"an-"をつけて"anqa"だろう。


(試してみるか。)


 家を出る時に鞄に入れておいた手帳とペンを取りだして、記憶に沿って"2"と"0"を書く。ヒンゲンファールさんは何を書いているのかと気になったのか首を傾げて横から覗き込んでいた。


"Fqa es anaqa."

"Anaqa......"


 "anqa"と"anaqa"はよく似ている。だが、多分どっちで言ってもいいのだろう。

 というのは、以前から気付いている緩衝音が挟まれた形が"anaqa"で挟まなかった形が"anqa"だろうからだ。緩衝音の仕組みはまだしっかり良く分かっていないけど、多分もう少しリネパーイネ語が読めるようになったらリネパーイネ語の文法書を一読してみるのもいいかもしれない。インド先輩みたいに専門用語バリバリの本を読んでも分かる気はしないが、図とかを見つけてその周りだけでも理解できれば、更に自然に話せるようになるかもしれない。


"Lecu klie xe fqa'd snutok. Mi kanti et."


 ヒンゲンファールは図書館のドアを指さして言った。部屋を移動して本格的に教えようということなのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Xace fua co'd la vxorlnajten!
Co's fgirrg'i sulilo at alpileon veles la slaxers. Xace.
Fiteteselesal folx lecu isal nyey(小説家になろう 勝手にランキング)'l tysne!
cont_access.php?citi_cont_id=499590840&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ