#61 業者が必要ね
"Mi tisod eso ci fea notul......"
ヒンゲンファール女史の身支度を待って居る間、フェンテショレーが何なのか知っておこうと思って本を漁っていた。ただ、やっぱり予想通り内容は良く分からなかった。鳥の紋章が幾つかの本の表紙で共通していたところを見るとどうやらフェンテショレーは鳥の紋章を使うようだった。そういえば、フェンテショレーの兵士たちの胸にもこの紋章を模したバッジが付けられていた気がしなくもない。本の中の図を流し読みして解釈できたことは、それとフェンテショレーと対峙する人間たちの旗のようなものだった。フェンテショレーと対立する人間は"yuesdera"だとか"xures"だとかいうらしい。"duxiener"とも書いてあったが正直文字を読んで、関係があるのか良く分からなかったし、ユエスデーアやシューエスが何なのかも良く分からなかった。前者が青色の旗を用いていて、後者が黄色の旗を用いているようだった。
共に図書館の向かいのフィアンシャに向かう。未だに謎の踊りを続けていた。ヒンゲンファール自身が何も説明をしてくれていないから、踊りが気になってしまう。いや、ここのヨークオラはもうどうでもいいからさっさと手紙の内容が何を指し示していたのか知りたいところだ。
フィアンシャの施設の中に入ろうとすると一人の人影が見えてきた。
"Jol cege'tj co en el fi'anxa?"
人影の正体は、フィシャだった。証人にまで呼び出されて翠の不当嫌疑に迷惑を被った一人であろうが、入ってこようとしたヒンゲンファールに向かって非難がましく嫌そうな表情で話しかけていた。
"Cegsti? Harmie co lkurf? Si celdin xalija decafeleme'tj mag is jatekhnef."
"Mi tvarcar niv ti. Flarska lkurf eso si'st fea ceg. Ol co es la lex?"
ヒンゲンファールの言葉に突っかかるようにフィシャが言葉を被せてくるが、ヒンゲンファールは口論には取り合わないとばかりに手でその言葉を推し止めた。
"Lirs, Lkurfon fabirlsto fuaj mi klie niv jol."
"Ja ja, plax xel jydijerl lu da."
そこまで話すと、フィシャは不承不承という感じで去って行ってしまった。ヒンゲンファールも真顔でフィアンシャの中に入ってゆく。内部に設置されているベンチに座ってしまったので良く分からず同行するしかない翠も目の前で少女たちがこの地域のヨークオラを踊っているのをゆっくり見るしかなかった。一体インド先輩の言ったヨークオラとは結局何だったのだろうか。やっぱり伝統舞踊の抽象的概念なんだろうか、ならば彼らもヨークオラ演者ということに……一体何を考えているんだ?
事が進まなさ過ぎて遂に変なことを考え始めてしまった。つまり、ヒンゲンファールが何を考えているのか良く分からないということだ。確かにフィアンシャに入るなと置き手紙には書いてあったが、フィアンシャに入ってそのまま謎の伝統舞踊を見ながら何もしないなんて。
そんなことを考えているうちに、ヒンゲンファールは怪訝な顔で地面を見つめていた。
"Cenesti...... Fqa es harmie......?"
「何って地面ですよ、お姉さん」と答えかけて止める。がたごとと床下から大きな音が鳴っていた。そういえば、以前もフィシャさんにこれを訊いて水がどうたらとか言っていたような気がする。
"Mer, Ci lkurf. Fqa es menas...... ietost?"
"Cisti?"
"あっ......Ci es fixa.leijuaf."
ヒンゲンファールは目つきを鋭くして思案顔になる。
"Ci lkurf nesnerl volesal?"
「え?」
残念ながらヒンゲンファールの質問が良く理解出来ない。ヒンゲンファールも低い声で尋ねたのちにそれに気付いたのか、ため息をつく。ともあれ、このフィアンシャに関して持っている情報は図書館の目と鼻の先にあり、時々地下から大きな音が響き、フィシャ・レイユアフという人物がいて、白い大きな布が目の前に吊るされていて、屈強な民兵が翠を捕まえた場所と言うことくらいだ。
"Hingvalirsti, mi xelvin firlex niv."
"Hmm...... Selene ci klie duxiener menas ietost. Mi tisod la lex."
翠がいきなり軽い調子で話し始めたヒンゲンファールに驚いていたが、次の言動に驚かざるをえなかった。
"Mili plax. Cenesti."
そう言い残してヒンゲンファール女史は翠をおいてどこかに行ってしまったのであった。




