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#40 任意の北ソト語が読めないのでア

"Or, Edixa cene cen firlex liparxe!"


 同じ食卓についたレシェールはシャリヤの話を聴いて感心したようにそう言い返した後、手元の布で口元をぬぐった。

 シャリヤの部屋には多分催眠ガスのようなものが撒かれていて、一度寝ると数時間寝続けてしまうらしい。さすがに催眠ガスは無いだろうが、それでもあの陽気と脳の疲労の中で寝続けない人間は居ないだろう。結局のところ夕飯の時間まで寝続けて、シャリヤに起こされて眠気が頭の上を彷徨っている状況で食堂まで連れていかれ、食べ物の匂いで遂に空腹が想起されて、さっぱりと起きて今に至る。

 眠気が強すぎて何が何だか良く分からなかったから、シャリヤに食事を色々と運んでもらってしまった。出来るだけ迷惑は掛けまいと思っていても相手がなんでも世話をしてくるのだとこちらは何もしようがない。ありがたいことではあるがどうしても申し訳なさが積もってくる。

 色々な形があるにしろ、来客への世話が好きな民族というのは往々にしているわけで、インド先輩も良く「タミル人は客人をもてなすのが本当に好きなんだ。」という話をしてきたものだ。シャリヤたちがそういった人懐っこい民族なのか礼儀を重んじる民族なのか色々な形があるだろうが、個人に民族性を完全に当てはめることはあまり良くないだろう。そういった傾向がある、程度ならわかるがシャリヤが例外だったりもする。日本人がいくら「時間に厳しくて、他人に礼儀正しい民族だ」と言われていても翠自身が本当にそうなのかと言われると少し自信がないし、「お前ら~民族は〇〇だから――だ!」というのは常識的に考えてヤバい人だ。異世界ファンタジーではエルフ族は何とかだの、ドワーフ族は何だのとかいう偏見が実際に性格として現れた上で、その例外が主人公の元にやってきてハーレムを構成する第一歩となったりするが、人類の性格や情動はそんな簡単じゃないなんてことは分かり切ったことだ。


"Ja, pa si cene niv naston firlex lineparine gelx deliu mi ekcelton kanti la lex."

"Ja, jexi'ert."


 レシェールはそう答えてコップの水を飲みほした。

 どうやら、リパーシェは読めてもリネパーイネ語はまだまだだということを言っているのであろう。それはそうだが、まあこれで第十三回国際言語学オリンピック団体戦問題のガチプロtouristを現実に実行することが可能であるわけだから、これから飛躍的に言語能力が向上するはずだ。


 かの団体戦の問題は、南アフリカを旅行中の観光客の話である。彼は現地の言語を全く知らなかったが、ある書類を北ソト語で記入する必要が出た。不幸なことに通訳者がおらず、北ソト語の詳解辞書、つまり北ソト・北ソト辞書があるのみだった。観光者はその辞書に目を通すと北ソト語を理解できるようになり、書類を全て記入できた。さて、それでは問題です……という問題なのであるが、答えを聞くとなるほど言語パズルだという感想しか生えなかった。


 翠がこの言語パズルをリネパーイネ語に対して出来るかどうかということは確かに疑問もあったが、さすがに単語集や辞書がある環境で、その上色々な意味でtouristではなくここで暮らしていく必要があるときに自分から勉強が出来ないのには不便も不便である。出来るか出来ないかより、今は何でも試してみる時期だろうし……


(リネパーイネ語をいきなり話せるようになったらシャリヤたちを驚かせることも出来るはずだしな)


 そういえば、完全に忘れていたが図書館か本屋かがレトラのどこにあるか全く知らない。今聞いておいて食後に行くのも良いかもしれない。しかし、どのようにして訊こう。

 本屋を表す単語も場所の疑問詞も知らない。無理やり表して通じさせるか。


"Lexerlsti, kranteerl mol fal harmie?"

"Ar? La lex es harmie'd kranteerl?"


 うーん、やはりうまく通じていない。確かに図書館や本屋なんかが無くても、本があるところに連れて行ってもらえればいいわけだが。何か特定の本のありかを聴いているみたいな感じになっている。


"Selene mi lersse lineparine mal selene mi akranti kranteerl."

"Ar, selene co tydiest krantjlvil?"

"Krantjlvil......?"


 意図が通じたらしくレシェールが納得しているのを見て、思わずそのまま返してしまう。


"Ja, kranteerless mol fal krantjlvil."


 レシェールは懐からレトラの地図らしきものを取り出して、翠の前に広げた。自分の住んでいる町という実感は異世界であるのに加えて、来てから数日も経っていないからか無いが、確かに製菓材料店だったり、走って幻を追っていた時の大きい道などがあってレトラだと分かる。

 レシェールはその"krantjlvil"への道順を丁寧に説明し始めた。

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