表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/377

#100 ファイクレオネ


"Edixa klie!"


 気づいたときにはもう図書館の前にまで来ていた。日々の運動不足が祟ったのか少し走っただけで息が上がっていてフェリーサに付いていくので精一杯だった。それまでどこを通って来たのかすら良く分からなかった。

 腰に手を当てて息を整えている翠に対してフェリーサは全く疲れていない様子だった。走って気分が高まったのか、ぴょんぴょん飛び跳ねていたが、翠の様子を見て心配そうにこちらを伺った。


"Co es vynut?"

"Ja, lecu tydiest."


 こんなフェリーサが図書館でものを教えるとは、あまり想像できなかった。ただ、以前フェリーサに驚かされたのもこの図書館だし、時々フェリーサも本を読みに来るのだろう。


(本当に本を読むような人間に見えないんだけどな。)


 翠はレトラの図書館の三階を常用していた。そこにはリネパーイネ語の詳解辞書があったし、他にも言語学習の資料になりそうなものが多くあったからだ。二階には一回入ったきりでそれ以降全く行ってないし、一階は本が少なく、学習施設じみていたので用がある時以外は深く奥に行ったことはなかった。

 フェリーサが嬉々として翠を連れて行ったのは一階の奥の方であった。照明の明るみが直接当たらない場所で、木製の壁や床、書庫の暗がりはまるで森の中での木の陰になっている地面のようだった。


 フェリーサはそのうちの一つの書庫、"Stydyl"と書かれた書庫にある本を見上げていた。どうやらお目当ての本を探しているようだが、自分にはさっぱり分からない。書かれている言葉が難しいだけでなく、背表紙が上の階にあるような本よりも古い感じがした。深緑か茶色の本が並んでいるうちの一冊をフェリーサは引き抜いて近くのテーブルに置いた。フェリーサが座った席の隣に自分も座った。


"Fqa'd kranteerl es harmie?"

"Hnn? Fqa'd kranteerl lkurf mels faikleone'd stydyl zu es misse'd unde."


 「ふーん」と曖昧な相槌を返す。

 正直"stydyl"も"faikleone"も"unde"も詳細義を理解していないので本質的なことは何一つ理解していない。"faikleone"が"yuesleone"に似ていることからの類推で、国や地理について教えてくれるのかもしれないとは思ったが、それも推測にすぎない。

 フェリーサは本を開いた。最初の方にある目次を細い指がなぞる。そして、目的のページを見つけたところで開く。


"Fqa es faikleone, xij jazgasaki."


(ふむ……。)


 フェリーサが開いたページにある図を指で囲うように指して言う。背もたれに寄っかかって、興味深く図を見ているこちらを驕った態度で見ている。物理的には自分より背が低いはずなのに、上から見下ろされているような気がしてきた。まあ、フェリーサのことだから子供らしいといえばそれで終わりなのだが。


 多分、この全体が"faikleone"で、その書き方からして地図なのだろう。等高線などがないような簡単な地図で陸地は緑色で、海は水色で色が塗られている。地形のことを言えば地球の地図とは大きく違った地図だ。異世界なのだからそれはそうなのだが、いざ見てみると違和感しか感じない。


"Mal, harmue miss mol? Yuesleonesti?"

"Ers xale fqa?"


 地図中央から少し東よりの入り江の上に指が置かれる。フェリーサは地図の10cmほど上を指で指していた。違和感を感じて、その直下に地図の紙に触れるように指を置いてみた。


"Fqa es niv?"


 フェリーサは首を振って否定した。それに加えて少し悲しそうに眉を下げた。


"Edixa fqa'c molerss veles retoo xemen vykota'st. Mag, Als mol fal fqa."

"Mili...... veles retoo?"


 また面倒な話が始まっているような気がした。地上で"xemen vykot"に多くの人が殺されたから皆がここユエスレオネに逃げてきたということまでははっきりわかる。だが、フェリーサが指で指し示した意味を素直に取るなら、ここにいる人間は空中に住んでいるということになる。ファンタジーの「ファ」の字もないところにそんな事実があるのは疑わしい。あまりにもファンタジーすぎて逆に眩暈がする。


"Mal, xemen vykot es harmie?"

"...... nace, selene mi celes xelo."


 完全にフェリーサは意気が削がれていた。明るく咲いているひまわりが一瞬で萎れて光を失うように感じた。それほどに"xemen vykot"は酷い存在なのだろう。翠も多分実体を見るべきではないし、見せるフェリーサのほうにも精神的苦痛を与えることになるだろう。


"Fqa ad no dalion es fai fentexoler......"


 フェリーサがぼそっと小声でつぶやくのが聞こえた。

 辞書で書いてあった通り、リパラオネ教徒とその異教徒との戦いは長らく続いていると考えてもおかしくない。その戦いの中で多くの人が死んでいく間にここユエスレオネに逃げてきたという構図が見えてくる。


"Merc, felirca es niv ai'r'd larta? Ai'r es harmue?"


 空気がすっかり悪くなってしまったから、話題を変えようとフェリーサのことについて訊いてみることにした。シャリヤやエレーナはフェリーサを"ai'r"の人間だとたびたび言っていたがそのアイルとはどこなのだろうと以前から思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Xace fua co'd la vxorlnajten!
Co's fgirrg'i sulilo at alpileon veles la slaxers. Xace.
Fiteteselesal folx lecu isal nyey(小説家になろう 勝手にランキング)'l tysne!
cont_access.php?citi_cont_id=499590840&size=88
― 新着の感想 ―
レトラは地下にあるっぽいですけど、地上じゃなく、空中に都市があるのかしら。地上は人が住めなさそうに思えます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ