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没2  作者: 零眼のメルト
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キネベス家鎮圧作戦 前編

さて、ここがキネベス家の豪邸か。立派に構えたその建物が一体何から出来てるのかを暴く。それが今回の第一目標だ。そして、消えたベヒタスの行方の手がかりも見つかるかもしれない。俺たちの乗ったワゴンが豪邸の前に止まった。ウィールロックの機動部隊の隊員がインターホンを鳴らし、内部との接触を試みている。

「吾大さん、奴らはどう出ると思います?」

「ううん、少し読みづらいな。これだけ広いとどこにあっちの部隊が隠れてるかも予測出来ん。若しかしたらこちらにミサイルを打ち込んでくるかもしれん。」

この場には異様な程の緊張感が流れていた。若しかしたら今この瞬間にも何かが近づいているのではないか。何か撃ち込まれるのではないか。そもそももう、手遅れなのではないか。様々な不安が入り乱れていた。しかし、俺たちの前に現れたのは、不気味な程に笑顔を作ったキネベス財団総管理職タタリ=キネベス、そしてその妻ユーリ=キネベスであった。

「よくぞ参りました、我が家へ。こんな沢山の人々がここに来てくださるなんて。」

「あらあら、皆さん武装がとても固くて。物騒ですね。ここらで無法人が暴れ回っているのですか?」


───────────────────


向こうは上手くやってるかな。私は息を止め、透明化の能力を使ってキネベス家の豪邸の庭を疾走している。ウィールロック機動部隊から頂いたジェットシューズはとても早く動ける。後ろからテイリーさんが付いてきている。彼女の黒血能力「増強」によって彼女にも透明化能力が効いている。警備に当たっている人物の側を通り過ぎるが、そのもの達は強めの風が吹いたくらいにしか感じていないだろう。そろそろ息が辛くなってきたが、もう豪邸の壁はすぐ側だ。私は壁についたあと、芝生に伏せて息を整えた。

「ありがとうございます。知夏さん。」

「どうってことないよ、ふう、それにしてもこのジェットシューズいいですね。」

「ありがとうございます。それでは向かいますか。」

私たちは壁沿いに進んでいった。小さな警備員用のドアを見つけた。手の方のマークがついている。厄介だな。手に埋め込む式のIDカードを扱った電子ロックだ。私たちは盗賊でもなければ解体屋でもない。ただドアを開くだけでそこにいる人間の手首を切り落とす事なんて出来っこない。私たちは長めの草の中に身を隠した。あくびをしながらダラダラと警備をしている、恐らくゴロツキだろう、が徘徊している。

「うぃ〜っす、俺休憩イイっすか〜?」

「ん?お前確か俺がいた時よりも前からいたよな。」

「おうおう、そうよそうよ。」

「んじゃ、よくね。」

「おー!あざーす!!」

一人の男性が扉に向かう。

「テイリーさん、行きますよ。」

「了解です。」

私は息を止めてドアによった。その男が手をかざした。するとドアが開き、侵入した。少し走り、廊下の角を曲がったところで周りを確認し、息を吸った。

「何とか入れたけど、問題はこれからよね。」

「はい、ですが、とてもいいものを持ってきていますよ。」

テイリーさんが笑顔で腕を差し出した。腕の装甲が開き、小型の銃のようなものが出た。

「コレは小型パルス発生機。コレを電子機器に向かって照射すれば大体壊れるわ。」

「凄い…そんなものがあるなんて…。」

「意外ともう殺し屋とかの闇の職業の中に広まっちゃってるらしいけどね。」

そう言ってテイリーさんは天井に向かってそれを照射した。その刹那、バチンという音と共に証明が消えた。

『緊急事態発生、エリアEにて大規模停電発生。他エリアとの隔離及び復旧を行え。繰り返す…』

凄い、なんて効き目なんだ。たった一発で。

「知夏さん、行きますよ。」


───────────────────


革靴とハイヒールの足音が廊下に響く。俺は多分とても異様な状況下に置かれている。今ここでとっ捕まえてもいい。しかし、ここまで平然とされていると、キネベス家は『白』、つまり俺達が罪のない人間を捕まえようとしたとなってしまう。今や、この世は世界中心機関が纏めている。そこが信用を失えば、第3の悲劇が起きてもおかしくない。何分くらいか、歩いて辿り着いたのは

「さあ、部屋につきました。要件を聞きましょうか。」

テテチさんが前に出た。

「あなた達には2つほど聞きたいことがあります。一つ目は『ベヒタス』、2つ目は『アルタ』、及び『ウィール消失事件被害者』についてです。」

キネベス家の二人は笑顔を崩さない。テテチさんの手が後ろで組まれているが、こちらに手のひらを向けている。何だ?何か書いてある。

『dangerous』

彼女のグローブには黄色いインクでそう書かれていた。俺は咄嗟に岩石化した。その瞬間部屋の両隅の壁が開いた。大量の銃口がこちらを向く。

「殺れ」

ヘヘッという気味の悪い笑い声をゴロツキの一人が上げた。しかし、彼らが銃を放つ前、と言ってもコンマ1秒の差だが、ウィールロック機動部隊の隊員が全員外側に向かって何か丸い塊を投げた。そして何か電気のようなものがドーム状に俺たちの周りに出来た。銃声がおぞましい程に鳴り響くが全てその電磁の壁に阻まれて落ちる。

「金属じゃなければ、大丈夫ですよ。」

テテチさんがこちらを見て、言った。海汰が持っていた槍を投げた。槍は銃の弾とは違い、そのまますり抜けて行った。その槍はゴロツキの一人に命中した。ウィールロック機動部隊の隊員は全員銃を構えた。俺も両腕を岩石化し、構えた。ヴンッという音とともにその電磁のドームは消えた。その直後に機動部隊の一斉射撃が始まった。俺は盾を持ってたり、銃じゃどうにもならんやつを弾き飛ばした。海汰も槍で近接攻撃をしたり投げたりしている。数分後、ゴロツキもほぼ全滅させた。そこまで苦労するほどでもなかった。さてと、キネベス夫婦を探すか。もう決定だ。奴らは「黒」だ。俺が歩み出そうとした時、後ろから異様な気配を感じた。振り返ると、そこには見知らぬ青髪の女性がいた。俺は即座に銃を構えた。

「お前は誰だ。手を上げろ。」

女性はゆっくりとこちらを見て立ち上がった。完全に囲まれている状態であるのに、余裕な態度が見て取れる。手には機動部隊の用いていた電磁バリアの装置を持っている。突然それをこちらに投げつけた。そして俺の前で炸裂した。岩石化で防いだものの、体が痺れている。機動部隊が銃を撃った。しかし、その弾は奇妙なことに女性の周りをくるくる回り始めた。そして弾は動きを止めたかと思うとそのまま下に落ちた。その女性は静かに見回した。張り詰めた空気の中、女性だけがゆったりと動く。女性は歩き出した。隊員の1人が銃を構えた。その瞬間廊下の電気が消えた。またついた頃にはその女性はいなくなっていた。一体何者なんだ。

吾大と海汰、そしてテテチ率いるウィールロック機動部隊の前に現れた謎の女性。彼らの運命はいかに。次回へ続く

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