捕獲作戦の開始
ウィール連合国消滅事件は環境にも大きな影響を与えた。
私たちは宿屋を借りてそこに荷物を置いた。私のワゴンは目立たないようにsubteamのエンブレムは外してある。きっとsubteamの存在が分かればここから逃げるか、余程の悪党だとこちらにも盗みをするかもしれない。タブレットの電源を入れて、他の部屋にいるメンバー全員にボイスチャットを繋げた。
「荷物は必要最低限にして出発します。武器もあまり大切なものや、奪われると厄介な物は持っていかないように準備をして。」
バラバラなタイミングで返信が返ってきた。
全員を私の部屋に集めた。
「今日の作戦は少し危険を伴うけど気をつけて。まずゲインスはこの村の医療施設で待機してそこの手伝いをしつつ、被害者が出現した時に早期に治療し、記憶が新しいうちに状況を聞き出して。」
「了解、リーダー。」
ゲインスは医療道具を持ち、早足で出発した。
「ケイ君はパルクールとか出来る?」
「やったことは無いですが、多少なら出来ると思います。」
私はうなづいて知夏に渡した機械と同じ、但し改良済みの物をケイ君に渡した。
「これは何ですか?」
「それはジャンプ力を増強したり、落下した時に怪我一つせず着地できるようになる補助装置よ。」
「あの時は落下時の着地しかなかったじゃないですか。」
知夏が私に言った。
「ごめんね。あれまだ試作段階だったの。」
知夏は恐らく落ちてアレに助けられたらしく、その時のことを思い出して冷や汗をかいている。
「話を戻すと、ケイ君は建物の上から下にバレないように監視をして欲しいの。もし不審者がいたら捕獲をして。」
「了解です。」
ケイ君は元気に返事をし、麻酔弾の入ったスナイパーライフルを持って出発した。
「残りのメンバーは出来る限り少ない荷物で地上を探索するわ。それでは私達も出発しよう。」
不審者の捕獲作戦が開始した。
私は防弾用の服を下に着ているが、武器は持たずに出てきた。能力だけを用いて護身をするつもりだ。恐らく客が多いからか、バザールは賑わっている。私はそこを避けて細い路地へと入り込んだ。少し周りを気にかけながら歩いていった。ケイ君が、不審者を発見したと報告していた。その場所に向かうことにした。被害者の殆どはこういう場所で発見されている。私が角を曲がった時に何かの気配を感じ、咄嗟に隠れた。それはこちらに気づき、ゆっくりと近づいてくる。勿論狭い路地で逃げ場も無く、隠れられる物も無い。私は両手に電気を貯め、備えた。出てきたのはガラの悪い2人の男だった。
「おう、ここはこんなカワイイ子がいちゃ駄目だろ。」
「俺達が恐ろしさを教えてやろうぜ。」
2人は汚く笑って、私に飛びついてきた。私は両手に貯めていた電気を一気に放出した。上手く当たって2人とも気絶した。音が大きかったらしく、細い路地の向こう側から沢山の人が除いていた。
「すみませんが、運ぶのを手伝って貰えませんか。私はsubteamの赤切ねいです。」
そう言うと他の人たちは快く受け入れてくれた。あの2人を病院に警察付きで送ってやることにした。その時、知夏から連絡があった。
『ケイ君が倒れていた。例の被害者たちと全く同じ状態で。犯人は逃げたみたい。』
私は急いで病院に向かうことにした。さっき仕留めた2人はただのゴロツキだったらしい。地元の人に協力してもらい、病院に着くと、既に気を取り戻したケイ君と心配そうに見つめるゲインスと知夏がいた。
「大丈夫?ケイ君。」
「何とか、大丈夫です。」
「どんな状況だった?」
ケイ君は少し頭を抱え、話し始めた。
「建物から建物に移りながら上から見ていたら、誰かが倒れている人の荷物を漁っていたんです。そこで僕は報告し、銃を構えました。その時突然大きな音がして……」
ケイ君はより頭を強く抱えた。
「大丈夫、無理しないで。」
「はい。………あの後多分何か恐ろしいモノが襲いかかって来た気がします。」
「ごめんね、ケイ君。きっと大きな音は私が起こしたものです。」
「いいえ、大丈夫です。」
私はとんでもない失態を起こしてしまった。依然犯人の実態も分からないまま、捜査を続けることになった。
窮地に立たされたsubteam。犯人の実態を掴むことが出来るのか。次回へ続く




