憤怒と悲哀
この世界は闇で満ちている。それをたたっ斬るのが私の仕事。
刀、それは美しく、力強い芸術品。輝き、その鋭さは一種の美と言えるだろう。しかし、罪深き芸術品である。その刀身は全てを斬る。命の在る無しに限らず、まるで元からそこに何も無かったように通り過ぎる。しかし、それも時代の移り変わりによりかわっていく。それは一つの目的が欠けたまま存在し続けてきた。
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ここはキメダ村。実質的には無国家地区ではあるが、旅の宿としてが始まりでおおよそ1000人程の地区へと成長をした。そこの公園で遊ぶ子供たち。親はそれを見守る。この時代では珍しい程の平和さである。しかし、血にまみれた鳥がそこに落ちてきた刹那、全ては恐怖と怒りに包まれる。バイクに乗った暴走族が銃を暴発したり、得体の知れない液体をばら撒く。親は投げ捨てられ、殴られる。子供は次々に袋の中に入れられる。この地獄絵図のような状態は無国家地区では、極一般的な情景である。彼らは自分の村が襲われることの無い、平和な地区と思ってきた。それは、全くの間違いであった。
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「これは…とても酷い。」
刀を二本腰に付けた女性が言う。
「白透知夏さん、残党に気をつけながら、状況を確認しましょう。」
女性は怒りと悲しみの目の色を変えず、込み上げる気持ちを飲み込みながら歩き始めた。正義感という言葉は彼女の代名詞である程に彼女の正義感は強い。その腰に付けた刀は幾万の悪を成敗した。茶髪のショートヘアーが建物の残骸の中で風に吹かれる。彼女は過去に酷い仕打ちを受けた。だから、苦しみは知っている。もう繰り返したくない。人が傷つく度にそう思っている。感情を押し殺しながら生存者がいないか歩く。
バサッ
俊敏な動きで動く者があった。知夏は瞬時に息を止め、透明になった。不思議そうに覗き込んだその正体は、一人ぼっちになってしまった少女だった。
知夏は息を吐いて、可視化する。そして少女に寄り添う。
「大丈夫。もう大丈夫だよ。」
「お母さん、お兄ちゃんが…」
知夏はその空虚に満ちた少女の眼を見た。そして抱きついた。
「ごめんね。本当に…ごめんね。」
後悔先に立たず




