表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

異世界冒険

つまらない。

私、皇時雨(すめらぎしぐれ)は教室の窓から空を眺めてそんなくだらないことを考えていた。

考える時間さへ無駄なのに。

「おい」

後ろから話し掛けられる。

私は静かに無表情で振り返る。

「ちゃんと宿題やって来たのか?」

あぁそうだった。

記憶にぽっかり穴が開いたように忘れていた。

嫌なことは忘れる。当たり前のようになっていた。

「…まさか忘れたとか?」

忘れたことは事実、私はゆっくりと頷く。

「はぁ!?何忘れてんだよ!ふざけんなよ!?」

机の椅子を思いっきり蹴られる。

その衝撃で私は椅子と地面に叩き付けられる。

痛い。

ずきりと痛むこの感覚。

毎日のように付けられる体の傷。

「なになに?何の騒ぎ?」

「聞いてよ!あのブスが宿題忘れたんだよ!?」

「うわぁ無いわー自業自得だわぁ…」

「だからお仕置きしてんの!」

「いいね!私も混ざるよ〜!」

ザワつく教室で浮く独りの私。

誰も助けてくれない理不尽な世界。

私はただただ蹴られて殴られて…

そんな私の毎日。

前に殴られた傷がずきりと痛む。

私はいわゆるいじめられっ子と言うものだ。

何も考えちゃいけない、感じちゃいけない。

「ほんっと時間の無駄。」

「居なくなれば良いのにね。」

「早く死んじゃえよ。」

毎日のように聞こえるその言葉。

私は不良品、失敗作の玩具。

皆が居る玩具箱には帰れない独りの玩具。

"早く死んじゃえよ"

きっとそれは私の救いなのだろう。

死ぬ。それはきっと怖いこと。

でもそんなこと関係無い。

楽になれればそれで良いんだ。ただそれで。

「何ボサッとしてんだかな。」

思い蹴り。

でもこれで最後なんだ。

これで全てリセット出来るんだ。

楽になれると思うと思わず笑みがこぼれてしまう。

ー放課後だ。

放課後に全てをリセットしよう。

私は誰にも気付かれないようにそんなことを考えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


放課後、私は屋上に独り立っている。

辺はもう暗い。

私が居ることはもう認識出来ないであろう。

私はゆっくりと下を見下ろす。

誰も居ない昇降口。小さい明かりがついている教室。…落ちたら私の姿は先生に見えるのかな?

見ていてくれるかな?惨めな玩具の末路を。

私が死んだら誰か悲しんでくれる人は居るのかな?

……いるわけないか。

私は考え事をしている。

時間の無駄なのに。もう居なくなるのに。

「…皆さんさようなら。私は最初から存在して居ませんでした。」

誰にも届かない声。

手すりを握りしめ最後の私の声を聞く。

そして私は、逆さに落ちていった。

何も考えず私は落ちていく。

落ちていくのは早い筈なのにとても遅く感じた。

でも時間は簡単に流れ行くようで、

ぐちゃっ!

とても鈍い音。

私の体が地面に叩き付けられる音。

私の血が地面に少しずつ少しずつ広がっていく。

意識が遠のく。

『君は死なせない。』

脳内で響いた謎の声。

何処か懐かしいこの声。

聞いたことも無い筈なのに。

『君は私が守るから。』

私の意識は完全に途切れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ