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王女様が現れる

ごめんなさい、短いです。



結局。

漆田が俺たち全員に知らせておきたかったことは、大したことではなかった。


『この世界にも米がない』


確かに知っておきたかったことだし、ショックと言えばショックだが、もうすでに二年間も食べていなかったのだ、それが更に伸びるだけでそこまで問題だとは思わない。

……まあ、何人かは泣くほどショックを受けていたが。


そんなことより、漆田の方が問題だ。

まさかあそこまで狂ったやつだとは思わなかった。

……いや、「帰れない」から狂ったのかもしれない。


そこのところは当人にしか分からないが、少なくとも今までは俺たちに分かるようなあからさまな態度はとっていなかった。

俺たちに気をつかう余裕があったんだろう。

それが、無くなった。


つまりあいつは、先ほど聞いたようにもう俺たちはどうなっても構わないと思っているということだ。


なぜそれを柚子希にだけ言ったのかは分からない。

もしかしたら良心の呵責があったのかもしれないし、柚子希だけは別と見ているのかもしれない。


どちらにせよ、俺は関係無いだろうし、むしろ漆田が勇者を始末するとしたら俺は筆頭候補だろう。






……なんせ、結果的に魔王を殺したのは俺なのだから。







話し合いーーと言いながら俺は最初以外発言しなかったがーーが終わって、夜。

俺は割り当てられた王城の一室で、柚子希が来るのを待っていた。


あの後、ひとまず解散した俺たちは、再度情報交換をするためにこうして集まる約束をしたのだ。


情報交換するような大事な情報は、話し合いの時点で話しているべきなのだが……漆田の狂った笑みを見た俺は、方針を変えた。

知ったらまずいような情報は、もちろん俺もいくつか調べている。

そんなものをあいつに教えたら、冗談ではなく勇者を始末しようと考え出すかもしれないと思ったからだ。


そして、柚子希も同じような判断をしたため、秘匿した情報をお互いに交換しようとなったわけである。


「……にしても、遅いな」


すでに夕食から三時間。

幸いにも存在していた風呂に入って来るとしても、やけに遅すぎる気がする。

いい加減待ちくたびれて、もうこの際寝てしまおうかと考えているとようやくノックの音が聞こえた。


「和輝君?柚子希です、開けてもらえますか?」

「ああ、開いてるからそのまま入ってきて」

「分かりました」


失礼します、と呟いて、こんな時でも礼儀正しく入ってくる。

そんな柚子希に苦笑いするが、後から続いて入ってきた人物の姿に俺の笑みは固まった。


「……おい、柚子希」

「なんでしょう」

「白々しいぞ。わかってるだろ」

「……これには、わけがありまして」

「そんなことわかってる。お前は理由もなくこんなことしないだろ。そのわけを言え、って言ってるんだ」


気まずそうに俯く柚子希。

その後ろには、ここにいてはならない人物ーー






ーー王位継承権第二位、アルテミシア王女が立っていた。







「それで?どうしてここに王女様がいらっしゃるんだ?」


目だけはアルテミシア王女の方に向けながら、柚子希にそう問いかける。

気まずそうにしたまま、柚子希は答えた。


「えっと、ですね……。まず大前提として、アルちゃ……じゃなくて、アルテミシア王女様の事をどれくらい知っていますか?」

「うん?そうだな……」


アルちゃんとはどういうことなのかとか、質問返しするなよとか色々言いたいことはあるが、それを言っても話は進まないので黙っておく。


「まず、女」

「王女様って言ってるんですから当たり前です」

「もしかしたら女装してるかもしれないだろ?」

「一体どんな理由があったらそうなるんです?」

「それはほら、やんごとなき事情ってやつが……」

「ないです。とにかくアルテミシア王女様は女性です」


さっさと話を進めろ、とばかりに睨みつけられる。

ちょっと洒落にならないくらい怖いので、大人しく従うことにした。


「……身長154㎝、体重47㎏。年齢は16歳で、スリーサイズは」

「待ちなさい、なんでそんなこと分かるんですか!?」

「さあ?」

「さあ!?さあってなんですか!」

「いやだって、気づいたらわかるようになってたし」


これは本当だ。

俺はこの世界に召喚されてから、鑑定のような能力を自然に身につけていた。


「……なるほど。何かおかしいと思っていましたが」

「どうしたんだ?」


一人でに頷く柚子希の事が気になり、問いかける俺。

顔を上げた柚子希は、先ほどまでの切羽詰まった表情とはまた違う意味で真剣な表情をしていた。


「その能力は、こちらの世界に来てから身についたんですよね?」

「ああ。勇者だった頃はこんな便利な能力は持ってなかった」

「ですよね。なら、間違いないです」

「何がだ?」


ふんふん、と興奮気味な柚子希に少し引きながら聞く。

そんな俺の様子には気づかずに、柚子希は無駄に溜めを作ってから言った。


「……貴方のその能力は、こちらの世界に召喚されたことで手に入った【勇者技能リミテッド・ブレイバー】です!」

「……え?」


マジで?



タイトルにあるのに一言も喋らない王女様。

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