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勇者達の戦いの終わり

「二回召喚される勇者」と「クラスで召喚」は見てもクラスで二回召喚されるのって見ないなあ、という思いつきから書いた作品です。遅筆ですがなるべく早めに更新していけるように頑張りますので、宜しければ見ていって下さい。



その日、その時、その場所で。

ついに彼らはその使命を果たした。


「……や、やった……のか?」

「あ、ああ……」


どこか現実感がなく、本当にやり遂げたのかを確かめあう彼ら。

しかしそれも数秒の事だった。


「「「ううぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」


僅かな空白の後、示し合わせたように叫び出す。

その声には、隠しようの無いほどの歓喜が込められていた。


「やった、やったぞ!」

「ついに魔王を倒したんだ!」

「もう、もう戦わなくてもいいんだよな!?」

「帰れるんだよなぁ!?」


その言動から察せられるとおり、彼らは魔王を倒しに来た勇者達だった。

その数30人。

勇者、それも物語で見るような異界の勇者である彼らは、2年もの時をかけてようやくその使命を果たすことに成功したのだった。







数日後。

30人の勇者達は、「召喚の間」と呼ばれる彼らが召喚された場所に集まっていた。


「それではこれから【送還の儀】を行います。準備はよろしいですか?」


僧侶のような格好をした老人が、少し寂しそうに告げる。


【送還の儀】。

その言葉が示すとおり、彼らはこれから元の世界に戻ることになる。


「はい」


最も老人に近いところに立っていた青年が、同じように寂しげに言う。

年単位でこの世界に止まっていたため、その姿はこの世界に訪れたころよりも格段に大人に近づいていた。

もう少年と呼ばれることもないだろう。


その事が微かに心に刺さったが、それに気づかないふりをして青年は続ける。


「みんな準備は出来てるみたいですし、始めてください」

「畏まりました」


口を閉じ、一気に真剣な表情へと変わる老人。

そこからは寂しさなど微塵も感じさせることなく、順調に儀式を進めた。


「……それでは、いよいよお別れです」


そうして暫く呪文を唱えたところで、老人が表情を和らげてそう言った。


いよいよ送還されるらしい。

そのことを悟り、なんとも言えない寂寥感を感じる面々。

帰れることは何よりも嬉しいが、2年もいただけあって、この世界は第二の故郷と言えるほどに去る事が惜しくなっていた。

それこそ、涙を流す者が出てくるくらいに。


しかしそれでも、帰らないわけにはいかなかった。

元の世界には親や友人、恋人が待っている。

他にもそれぞれ思い残している事があるのだ。

たとえこの世界で新しく出来た友人を置いてでも、帰らないという選択肢を選ぶことは出来なかった。


「今まで、ありがとうございました」


万感の思いを込めて、先ほどの青年が言う。

それを聞いて涙を流しそうになるも、どうにか堪えて老人は言った。


「……こちらこそ、ありがとうございました!我々は、勇者様方に助けられたことを一生忘れません!」


そうして、一度大きく頭を下げた後、老人は言った。


「【送還】!」


その言葉をキーに、勇者達の足元に浮かんでいた魔法陣が輝き出す。

召喚された時とは違って派手な演出に少し慌てる彼ら。


最後の最後に締まらない彼らを見て、微かに笑みを浮かべる老人。

その口元が小さく動いた瞬間、一際強く魔法陣が輝き、勇者達はその場からいなくなったのだった。







「ーー残念です」


そう老人が呟いた事に、勇者達は誰一人として気がつかなかった。



評価、ブックマークなどして頂けると作者のやる気が出て早く投稿するかもしれません。

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