三國圭「ロスト・エイジ」×大橋なずな「Blue Skyの神様へ」本編、第1章 エピローグまで読破済
皆さんおはこんばんにちは!大橋なずなです。 三國圭様とのコラボ企画小説の公開です。
今回はブルスカの主人公レインがロストエイジの世界に迷い込むという設定の作品と、三國様のロストエイジ主人公セロがブルスカの世界に迷い込むという設定の作品をそれぞれの作品ページで公開するというちょっとなろうでは珍しいコラボを企画いたしました。
本編の合間にお読み頂ければ幸いです。
※あらすじ※
最神であるシラの熾天使の騎士に任命されたレイン。ある日、レインが目覚めるとそこは知らない森の中!?しかもその森はどうやらモンスターの巣窟のようで……。ロスト・エイジ本編冒頭、セロの眠る地下研究施設に迷い込んだレインの運命は!?
※本編、第1章 エピローグまで読破済の方はネタバレせずにお読み頂けます。
コラボ企画のお相手三國圭様の「ロストエイジ」版コラボ小説。そちらは私作品ブルスカの世界を素晴らしいクオリティで再現して頂いてます。そちらも合わせて読んでみて下さい!
三國圭様「ロストエイジ」セロ編はこちら
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作品URL↓
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2017.8.30 本編より移動
※第1章エピローグと第2章プロローグの間に起きたお話です。
身体がフワリと浮き、その足はゆっくりと地面を踏みしめた。地面は少しぬかるんでいて、バランスを崩しそうになる。空気が澄んでいる。凛とした無の空気……。
レインは地面を踏みしめると、閉じていた目をゆっくりと開けた。
「ここは……」と、目の前に広がる大森林を見つめ声を出す。
湿度が高く、草花が生い茂る地面はぬかるんでいる。少し前に雨が降ったように感じ取れた。天を見上げる。そこには何メートルにもなる木々達が空を覆い、曇天の灰色が見えない程だ。木々はどれも一直線に伸びていて、レインが住む天界の城や、中界軍などで見たことが無い植物のようだ。
レインは大きく深呼吸をしてその場の空気を吸う。
「知らない空気……」
背中に生える翼を大きく広げる。翼は湿った空気を切り裂いた。
「ここはどこだ? 俺は……」
レインは今までの記憶を思い出そうと頭を触る。
髪はつむじ辺りは若草色だが毛先に行くにつれて、深緑へと色が変わっている。グラデーションになった髪に天使の特徴である長く尖った耳。左耳には赤のピアスに黒のカフス。服装はいつも着ている中界軍の黒に染まった軍服だ。
そっと触った頭にレインはハッと目を見開く。
「左目が……見えている?」
そう、数日前に自分の守るべき女性に捧げた筈の左目が見えている。レインはそのまま左目で掌を見つめた。金色に輝くその瞳はしっかりと自分の掌を見つめている。
「怪我が治っている? いや、そんな……左目は完全に取り除いたのに」
レインはその不可思議な現象に茫然とその場に立ち尽くした。
「どうなっている……」
その言葉を発した瞬間「……ッ!?」
レインは澄み渡った空気に淀む何かを感じ取り、腰に挿した刀の柄を握った。
何かがいる。人ではない……何かが。
腰を低く保ち、左足を半歩後ろに下げ戦闘態勢になる。
その不穏な気配は後ろから……いや、左右。違う、ここ周辺に数えきれないほどに感じた。レインは金色の瞳をぐっと細め、全神経を尖らせる。
すると、不穏な気配が木々の影から姿を現した。
それは人? いや、人ではない。人の形をした何かだ。引きちぎられた衣類を纏い、裸足で歩く。髪はすり減り、目は赤く腫れていた。口元はだらしなく開き、歯は抜け欠けている。
1匹……2匹……3匹。数えられない程になり、レインの周りを取り囲みだす。
そして、次の瞬間!!
「ギイイイイイイイッ!!」
そのうちの1匹がレインに向かって雄叫びを上げながら飛び掛かって来る。レインは素早く腰に挿した日本刀を抜き、その身体を受け止めた。グッと力を入れ撥ね返す。そいつはレインの反撃にドサリと地面に倒れ、その反動で左腕が本来曲がるべきでなない方向へ曲がり、ぶらりと垂れ下がった。しかし、それは痛みを感じる素振りを見せることなく素早く立ち上がり、再びレインの方を向く。
「アンデッド……」
レインは目の前に広がる敵勢に向かって名を呼んだ。
「ゾンビってやつか」と、言葉を噛み締め刀を握る。
人間の頃に映画などで見た事があるが、実在しているものを見るのは初めてだ。それぞれ個体によって服装や顔つきが違い、一瞬人間かとも思ったが……モンスターの一種だと確信したレインは構えた姿勢をさらに低くしていく。
そして、グッとしならせた身体を跳ね上げ、その場にいたゾンビに刀を振るう。一度に数匹を薙ぎ倒しながら敵勢の中へ踏み込んだ。
ゾンビの身体はもろく、一振りで腕や足が切り落とされる。ドサドサと斬り付けられたゾンビはその場に崩れた。しかし、その死骸の上を次のゾンビが歩き、こちらに向かって来るではないか。
レインは刀を数回振り回し、軽い呼吸をしながらステップを踏んだ。そして一気に敵勢を蹴散らす。
軽いステップを維持しながら、左右に揺れるように斬り込む。その度にゾンビの血しぶきが空を舞う。
何体倒しただろう。レインは刀の血を払いながらゾンビの死骸の上にストンと軽いステップで立ち止まった。
「キリがない」
辺りを見回す。その数はまだ数えられないほど多い。
レインは数を数えるのを諦め、ゾンビの軍勢の中へ走り込む。そのままゾンビの中を走り続け、大きくそびえる大樹に跳んだ。身体を反転し、木の幹に両足を付けるとグッとしならせバネを使うように反動を付ける。そしてレインは一気にスピードを上げ、ゾンビの中へ斬り込んだ。
バッサバッサと倒れるゾンビ。
レインは勢いを失うことなく、向かう先にある同じように佇む別の大樹に足を付ける。
「この空気なら行けるか?」
レインは大樹を大きくしならせ、翼を広げた。そして次はゾンビに向かわず、木々の遥か上に見える空へ飛び出した。
空気を割き、木々を抜けた先でレインは翼を思いっきり羽ばたかせてみる。自分がいた天界では本来使えない飛行能力を使い、空中で体勢を立ち直らせた。
「やっぱり、ここは天界じゃないんだ」
レインは翼を使い、木々の下に渦巻くゾンビ達を見下ろす。
「ならここはどこなんだ? なんで俺はここに」
そう言葉を発した瞬間! その場に突風が吹き荒れる。
レインはその風に巻き込まれ上空へと飛ばされた。
「ッ!!」
歯を食いしばり、翼をはためかせる。その風の起こった方を向いたが……「キーーーーーーッ!!」
獣の雄叫び、大きな翼の音がけたたましく鳴り響く。その雄叫びの主は気が付けばレインの真正面に居た。
「ッ!!!!?」
大きな口ばしがレインを覆い込むように襲って来る。レインはその口ばしに刀を向け受け止めた。
「鳥!?」
到底鳥とは呼べないその獣は、大きな翼と口ばしを持っていた。ドス黒い色をした毛に赤い目。カラスに似ている。しかし、大きさはレインの3倍ほどだ。
「この世界には凶暴なモンスターしかいないのか!?」
レインはそう叫び、口ばしを撥ね返した。
そして、翼を使い間合いを取る。
血走った目をこちらに向けた鳥の形の獣は、一瞬の間も開けることなくレインに向かって来る。
レインは刀に能力を溜め込み、口ばしの攻撃を受け止めた。だが、力に押される!!
「くっそ!!」
そう叫び、さらに能力値を上げる。すると獣の口ばしが徐々に凍り始めた。
「凍れ!!」と、レインは一気に能力値を最大に引き上げる。
獣の顔まで氷が行き届く。しかし、鳥の獣は攻撃を弱める気配を見せない。
「こいつもアンデッドか!?」
レインの刀を握る手も自らの能力で凍っていく。
と、獣は顔の周りを凍らせられた為、重みに耐えられなくなったのか、レインを道ずれに地面の方へと落ち始める。
「チッ!!」
レインはそのまま獣と一緒に下降していった。
このままでは獣と共に地面に激突してしまう。レインは左手を落下していく地面の方へ付き出し、能力を発動させる。そして大樹を一気に凍らせ、そのまま地面を冷却した。
激突寸前でレインは刀を離し、受け身を取る。
バリバリバリ…………!!!!
激しい音と共に木々達が砕け散る。その中をレインは転がり込むように落ちた。
キンッーー! レインの刀が自分の足元の氷に突き刺さる。
レインは素早く身体を起こし、片膝を着く。そして共に落下した獣を見つめた。
「やったか……」そう声をしたが、それと同時に雄叫びを上げながら顔を覆っていた氷を弾き砕いていく獣の姿が現れる。
さらにその後ろにゾンビ達が群れを成してこちらに向かって来るのが見えるではないか。
レインはその状況に目を背けることなく前を向き、足元にある刀を握ろうとゆっくり体勢を変えた。
ジリジリと右手を刀に向かわせ、その間も自らから能力を発動させ続け辺りを冷却していく。
「…………?」
ふと掌に違和感を感じる。レインは神経を自分の足元に向けた。
「空気が……下から抜けている」
レインは手を伸ばしたその地面をそっと撫でる。
するとそこにはぬらるんだ地面ではなく、冷たい硬いものが存在しているのが分かった。
草や土に隠れて見えないがそれは……。
「鉄?」
レインは敵の行動から目を離さずにそう吐いた。
そう、鉄の扉だ。何かを隠すように自分の真下には鉄の扉が眠っている。
レインはそのまま刀を握り、氷から抜き立ち上がると鳥の獣とゾンビ達を睨み付けた。
能力を発動させ一気にその場を冷却してく。雨上がりの森林の為、その冷却された空気に存在する水分が霧を作り出す。辺りは徐々に濃い霧に包まれていった。
敵の姿が霞みがかった瞬間、レインは素早く地面にある扉をこじ開け少しの間からすり抜けるように中へと入って行った。
ドーーーーンッ。重みのある扉はレインが降り立った頭上で大きな音を立てて塞がれる。その扉の動きに合わせて埃が辺り一面に舞った。
レインは軽い足取りで地面に着地すると刀を握り直し辺りを警戒する。
「明るい?」
地下に潜ったはずなのにその場が明るい。レインはその正体が自分の頭上にあるのを確認した。
「電気……」
そこには見覚えのある蛍光灯の光がレインに降り注いでいた。
「電気や鉄の扉が存在する……人類が生活しているって事か?」
レインは独り言を言いながらその場を見回す。今自分がいるのはどうやら地下に繋がる階段のようだ。蛍光灯の明かりは途中までしか届いておらず、その先は暗闇の中に消えている。
レインは刀を鞘にしまうと、壁に手を当てながら下に続く階段を降り始めた。
「まさかこの下に人類の生活している街が存在してました……なんてな」
レインは昔人間の頃に見た映画のワンシーンを思い出しながらつぶやく。しかし、どこの世界に迷い込んだか検討も付かない今の現状ではあり得る話だ。頭の中で様々な仮説が浮上する。
レインは一呼吸置くと、一段一段踏みしめながら階段を降り始めた。コツン、コツンとレインの足音だけがその場に響く。
程なくしてレインの足先は階段を降り切ったようだ。暗闇の中で空気が淀んでるのが分かった。広いフロア―のようだが障害物が多数ありそうだ。数歩歩き出すと、壁に当てた手に何か機材のようなものに当たったのを感じる。
「電気系能力は俺の専門外なんだけど……なッ!」と、レインは最後の言葉と同時に身体の中に電流を起こしその機材に電流を当てた。
バチバチバチッッ!!
大きな音と共に天井にある蛍光灯が一斉に光り出す。そして一定の点滅を繰り返しながらそのフロアー全体に明かりが灯された。
「こ、これ……」
レインは目の前に広がる数々の物体に目を奪われる。
散乱したデスク。パソコンのような電子機器にホワイトボードや地面に振りまかれた資料……。
「何かの研究施設か?」
レインは何者かに荒らされたように散らかっているフロアーを警戒しながらゆっくりと歩き出した。
辺りは埃が溜まり、倒されたデスクを指でなぞるとくっきりと跡が残る。荒らされてからかなりの年月が経っているのか? レインは辺りの光景を眺めながら思考を巡らせる。
早く脱出しないと……人の気配も無い場所で、このままここにいても今の状況から抜け出せそうにない。
しかし、最程の扉からという訳にもいかないだろう。
「空気が悪い」
レインはそう言って大きな溜息を付いた。外と打って変わって中の空気は重苦しく、しかも乾燥している。レインは数回咳をして先を急ぐことにした。
次の階段が見える。「さらに下か……」と、レインは溜息を付きながら階段を降り始めた。
すると……ガタッ。小さな物音がしてレインは階段の下を睨みながら刀の柄を握る。
「ウゥ……」
うめき声が聞こえる。先ほど聞いたものに近い。
「地下にもアンデッドがいるってことか……」
レインはゆっくりと刀を抜きながら下の階を慎重に覗き込む。
しかし、次の瞬間!! ドドドオオオンッッ! という音と共に上のフロアからアンデッド数体がレインに襲い掛かってくるではないか!?
「……ッ!!?」
レインは後ろからの急な攻撃に反応が遅れていまう。人型のアンデッド数体はそんなレインの腕や足に勢いよく噛みつく。
「イッッつ!!」
その人間離れした顎の力にレインは小さく悲鳴を上げ、歯を食いしばりながら刀でアンデッドの首を斬り落とした。
何体かを一気に振り払い、その場によろめく。レインはよろめいた身体を立て直そうと足をぐっと踏みしめた。しかし噛みつかれた左足に激痛が走り、悲鳴に似た叫びを発しながら、目の前にある階段を踏み外した。
大きな音と共にレインは次の階へと転がり落ちる。階段から落とされたレインは「イッてぇ……」と小さく吐いた。
左腕には大きな歯型がくっきりと残り、左足はさらに酷くブーツが避け血があふれ出している。
「深く持っていかれたか……」
レインは足を庇いながらゆっくりとその場で立ち上がった。
「早くここから移動しないと……」
嫌な予感がする。あの動き。どうやらあいつらは生命体を感知して攻撃してきているようだ。今のレインの状態でこの場に居れば、さらにアンデッドをおびき寄せかねない。
レインは左足を引きずりながらその場を歩き出す。
せめて天井がもう少し高ければ飛べたんだが、そうも言ってられない。
「こんなところで野垂れ死ぬ訳にはいかないんだよ」
レインは少し息を荒げながらそう言葉にする。
一瞬、脳裏にスカイブルーの髪の女性が姿を現す。
「やっと俺の居場所を見つけたんだ……彼女の元に帰らないと」
レインは歩きながら次のフロアーに続く階段を見つめる。
「彼女の隣が俺の……」
近くに散乱してるデスクに手を掛けて体重を預ける。しかし、身体を預けたその足元がグラッと動き出した。そのまま地響きに似た音を立て床がレインごと下の階へと崩れ落ちていく。
いつものレインなら瞬時に反応し、その崩れから抜け出せたはずだが、負傷している状態ではなすすべなく、そのまま下の階へとデスクや床もろとも落とされる。
ドオオオオオオオオオン…………。
研究施設全体を揺れ動かすほどの地響きが起き、辺りは埃やチリが舞うが、その数分後にはまた同じような静寂が辺りを覆った。
「ッゥ……」と、瓦礫が動き、その中からレインはなんとか起き上がる。
どうやらデスクの落ちた場所に出来た隙間によって難を逃れたようだ。レインは痛みに耐えながら抜け落ちた天井を見上げた。チカチカと蛍光灯がその場を照らし、辺りを舞う誇りを光らせる。
レインは少しの間その光景を眺めていたが、ここでアンデッドに出くわす訳にはいかない。
ゆっくりと立ち上がり翼を数回動かした。そして今のフロアーを見つめる。そこにあったのは……。
「培養器……?」
目の前にある大きな卵型の機械を見つめレインはそう吐いた。
人間の頃にテレビで見た記憶がある。ガラス張りの容器に数々の繋がっているパイプ。その容器の中には濃い橙色の液体がボコボコと気泡を循環させながら何かを守っているようだ。
レインはその光景に目を奪われる。
すると能力分の電力を使い果たしたのか、天井を照らしていた蛍光灯が数回の点滅の後に消えてしまった。
辺りはその橙色の液体に照らされ不気味に光る。
レインは左足を引きずりながら動き出す。左腕に一瞬激痛が走り、顔を歪めながらその培養液に近づいてみた。
と、濃い色をした培養液の中に何かが居るのに気が付く。
「……ひと?」
レインはその培養器にたどり着くとそっと右手をガラスに添えてみた。
そこの中にいるのは自分とそう歳の変わらない青年の姿をした人物。純白の髪色が培養液に揺れ動く。青年の口には覆うようにしてマスクが付けられており、酸素を送り込んでいるようだ。瞼は閉じられ、瞳の色は見えない。
そんな青年の姿を見てレインは何か心の中をかき乱されるような感覚に襲われる。
「お前は……誰だ?」と、口に出す。
「俺は、知ってる……。知っている? 違う、見たことがある……? いや、思い出せない……」
レインは培養器に触れたまま左手を顔に覆った。
思い出せないんじゃない。思い出せるほどこの青年と接触していないのだ……。
一瞬、ほんの一瞬どこかで見た……気がする。本当に? 本当に自分は彼を見たことがあるのか?
レインはそのままその場にうずくまる。記憶が交錯する。
「あめ……雨が降っていた? いや……分からない」
記憶を追い求めても青年の事を思い出せない。レインはうずくまったままゲホゲホと咽せ始める。
突然辺りが騒がしくなり、頭上からパラパラと天井から粉が舞いだす。どうやらレイン以外にも侵入者が現れ、アンデッドと交戦しているようだ。
地響きが聞こえ始める。しかし、レインはその場から動き出すことが出来ずにいた。
記憶をたどろうとすればするほど割れるような頭痛が起こる。
吐き気とめまいが起こり始め、立ち上がれない。
「お前は……一体……」
そう言ってレインは培養液の中で静かに眠る青年を見た。
辺りがさらに慌ただしくなる。警告音が鳴り響き、爆発音が頭上で起こる。
その音に合わせるように培養液の中の青年の瞼がゆっくりと動き出す。
「……ッ!?」
その瞬間、レインは激しい頭痛と共に意識を持っていかれた。
「うぅぅぅ……」
唸り声を上げる。手足がギシギシと痛みを感じる。目をゆっくりと開けるとそこは見覚えのある天井だった。
「お? 目が覚めた!」
そう言って天井を見つめていたレインの視界に黒髪に黒い瞳の同僚が入って来る。
「よっ! どうだった? 感想は?」
そう言って黒づくめの姿に白い翼のヤマトは、唸り声を上げて苦しんでいるレインにニヤニヤと質問してきた。
レインは寝起きに一番見たくなかった顔が覗き込まれた事に不快感を覚えつつ、ゆっくりと起き上がる。
そこは中界軍の能力研究施設の一室だ。辺りは機械化されていない実験器具にカルテや資料が山積みになっている。その端に置かれている仮設ベッドにレインは寝かされていた。
「ああ! お目覚めになりましたかレイン熾天使!」
そう言ってスキップしながら近づいてくるのはこの研究施設長だ。
「いかがでしたか? 我々が開発した枕!」
「まくら?」
レインは寝かされていたベッドにある真っ白のシーツが掛けられている枕を見つめる。
「名付けて『どこでもぐっすり! 能力制御で安眠枕!!』です!」
「お前寝ぼけてるのか? この安眠枕でお前の能力制御がどれぐらいになるか試して欲しいっていう任務に来たんじゃないか」
施設長、ヤマトの話を聞き流しながらレインは大きなあくびをする。そしていつもの癖で、嘗て左目があった場所を覆っている包帯を撫でた。
そう言えば、能力値の高いレインが枕を使って能力制御しながら眠りに就くと本当に安眠できるのかという実験に付き合わされたのを思い出す。
「で? どうだった? ぐっすり眠れたか?」
ヤマトのウキウキした顔に嫌悪感を抱きながらレインは大きな溜息を付く。
「ものすごく疲れた。安眠なんてほど遠いな」
「そ、そんなあ……」
レインの言葉に施設長はガックシと大袈裟に肩を落とす。
「何か……夢を見ていた気がするんだ」
レインは研究施設を見回しながらそう口にした。
「夢? どんな?」
ヤマトの質問にレインは首をかしげる。
「なんだか……こんな感じの研究施設のような。けど、もっと機械化されてて……」
「なんだそれ?」
レインの曖昧は言葉にヤマトはクククッと笑う。
「仕方ないだろ。ほどんど記憶にないんだから。それにものすごく動き回った気がするし……」
レインはヤマトを睨みながら翼と共に大きく伸びをした。
「って事だから施設長。実戦での活躍は見込めないな」と、ヤマトはケタケタ笑う。
「そのようですね。しかし! 諦めませんよ! まだまだ改良してみせますので、レイン熾天使にはこの開発の実験材料……いや、協力者になって頂いて」
「俺はモルモットじゃないぞ」
施設長の言葉をピシャリと斬り、レインはベッドからゆっくり立ち上がる。
「ッ……」と、急に左足に微かな痛みを感じた。その違和感にレインは左足のズボンのすそを捲る。するとそこには薄っすらと……。
「歯型……?」
ヤマトはレインの足に見える赤みを見つめて言う。
「何でこんなところに?」
「俺が知るかよ」
ヤマト、レインは驚きの顔をしながらお互いの顔を見つめた。
「この枕……」とレインが枕を見つめると、そこに一瞬黒い霧のようなのもが見えた……気がした。
改めまして、皆様おはこんばんにちは! 大橋なずなです。
今回の特別企画いかがでしたか?
この数か月間、圭さんとものすごいく多くのメールのやりとりをさせて頂き、とても楽しく創作させて頂きました。ここまでお互いの作品について質問したり、考えたり、深く踏み込むことってないのでとても勉強になりました。いやあ、実に面白かった!!
更に私はイラストも描かせて頂き、今回ロストエイジの主人公セロのキャラデザしたりとお絵かきの方でも楽しませて頂きました。
ここまでお付き合い頂いた圭さんに感謝です。
内容ですが……皆さんいかがでした? ロストエイジの世界感を少しでも感じて頂けましたか?
私はロストエイジの世界観がすごく好きなのでレインがその世界に飛び込めてとても楽しかったです。
ま、怪我とかしちゃいましたけどww
それにレインの戦闘シーンでは、飛行や能力を使った本気モードってなかなか本編で出せないので、これでもかってほど暴れてもらいました。レイン特有のスピード感が少しでも感じて頂ければなって思います。
最後のシーンでレインはセロに会ったことがあるような……ないような、なニュアンスでしたが、これはどういう意味??それは……圭さんが描くロストエイジ・セロ編でリンクしております!
ロストエイジ・セロ編ですが……ここではあまり語れないのですが、ほんっっっとすごい感じで仕上げて頂きました。読んだ時は鳥肌! 自分の描いていた世界観、街並み、空気感を圭さんに書いて頂いて私が読者として読む……。新しい感覚に今までない感動が生まれました。こう……言葉に表せられないって感じですよねwwしかも、レインの過去編とのリンク(3年前のガナイド地区悪魔討伐戦)でとても難しいところをお願いしてしまいました。なのにこのクオリティ!!とにかく!ブルスカを読んでいただいている読者様。是非、ロストエイジ・セロ編もご一緒にお読み頂ければと思います。
では、いつも応援してくださる皆様。ノートで読んでくれる友達。そして今こうして後書きを読んでくださっている貴方。この作品に触れて頂いた全ての方々に感謝しつつ……。