第1.5章 1幕 【第1章 エピローグまで読破済】
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「はぁ…」
シラは冷えた風を感じながら息を吐く。もうすぐ冬が来るな……と冷たい指先を両手で温める仕草をした。
「どうかした?」
隣を歩くレインが少し不思議そうにシラの顔を覗き込んで来る。
「あ、いえ……少し寒くなってきたなって」
「ああ、夕暮れになると冷え込むな」
レインはそう言いながら夕焼けに染まる中庭を眺めた。彼の横顔をシラは見つめる。
この穏やかな時間がずっと続けばいいのに……と思う自分は我儘なのだろうか。穏やかな日々がこのまま続けばいいのにと……。
「寒い? 部屋に戻るろうか?」
レインはシラを気遣って微笑む。
シラは「そんなこと無いです」と口にしたかったのだが、実際指先が冷え始めていた。
何かを言おうとしたシラの顔をレインは不思議そうに見つめる。
右目の金色の瞳が綺麗だ……とシラも彼の目を見つめた。
「手、貸して」
突然、彼は自分の手をシラに差し出す。
「え?」
シラは急な彼の言葉に首を傾げた。
「貸してみて」
レインの笑顔につられ、シラは胸元で握っていた両手を彼に差し出した。
差し出したシラの手をレインは自分の両手でそっと包み込む。
「わ! レインの手、暖かいです!」
シラは彼の大きな手とその温もりに驚いた。
「氷結系の能力者は周りの温度を変化させるのに長けてるから、逆に自分の体温は高いらしいんだ。俺も人より少し体温が高いから……」と、彼は笑う。
そんなレインの言葉を聞いているうちにシラの指先はあっという間にポカポカと温かくなった。それは彼の体温以外に、自分の鼓動が速くなっているのも関係しているのかもしれない。
心臓が自分でも分かるほどにドクンドクンと大きく動いているのが分かる。
すると目の前の彼は少し頬を赤らめ笑い「どうしよう」と口にした。
「成り行きで君の手を握ったけど……どうしよう。恥ずかしい」
彼の顔が夕焼けに染まったように赤くなる。
そんなレインを見てシラはクスクスと笑った。シラにつられてレインも笑う。
「さ、部屋に戻ろう。風邪でも引いたら大変だ」と、レインはシラの手を離した。
名残惜しそうに離れる彼の大きな手。
そんな彼の手を自分が追い掛けれればどんなによいだろうか……。
そうい思いながらシラは暖かくなった指先を自分の両手で包み込みながら「はい」と彼に微笑んだ。
あの時、その手を掴んでいれば……運命は変わっていたのかもしれない。そう思うのはもう少し先のお話。




