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枝に下げられたネックレスは3本。木の実が日の光でピカピカと輝いて、それこそ本当の宝物のようだ。

「俺の経験上、こっちの方がとりやすいはずだ」

 ぺたんと地べたに広がった標的は、分散しやすい子供の集中力をだましてしまうことがある。尖った部分、ただその一点のみに集中させるほうが、本当は子供向きなのである。それに、これは小さな女の子の腕力を想定して、最前列に置いた。難易度としては一番低い。

実は美也子は、サービスで最初の一本、二本を配ることを提案した。祭りの人ごみの中にネックレスをつけた子を実際に歩かせて、宣伝効果を狙おうというのである。覚えはないだろうか? ちゃっちいビニール製の人形などが、祭りの喧騒の只中、すれ違う人の手の中に在ると、とてつもない特別な宝物のように思えて欲しくなる、あの気持ち。その効果を狙ってのことだったのだが、ギャロはそれを許さなかった。

輪投げはちょっとした賭け事だ。金を払ったからといって必ずしも欲しい物が手に入るわけではない。かと思えば、支払い以上の幸運を手にすることもあって、そのゲーム性こそが子供を惹きつけるのだ。だから景品を手にするのは勝者のみ、というルールを曲げるわけにはいかない。

「でなきゃ、輪投げ屋だかアクセサリー屋だか分からなくなっちまう」

 それに子供たちが欲しがるのは、具体的なモノではないとも。

 なるほど、確かに祭り屋台の景品に心惹かれるのは、それが戦利品であるからだ。確かに、勝ち誇った表情の子供の手の中にある物こそ魅力的に見える。

 それでもギャロは美也子の意見をないがしろにしたわけではない。むしろ素晴らしい考えだと賛同し、最初の一本をとらせやすいように工夫をこらした。飾り台一つとっても実際に作ったのは三台。その中から実際に輪を投げて選び出し、位置や角度も散々に調整した代物だ。

「心配するな。アイディアは悪くないんだ。あとは客しだいさ」

 ギャロが美也子の髪に触れようとしたそのとき、いのしし頭の親子連れが店先にあらわれた。小さな女の子を抱いた父親だ。

「へえ、最近は女の子向けの景品なんかも置くんだねえ」

 父親が目を留めたのは、もちろん、飾り台にさがったネックレス。小さな女の子が声をあげる。

「ぱぱ、あれ、とって」

「よしよし。おう、おやじ、あれは木の枝にひっかければいいのか?」

 願ってもない展開だ。小さな子供でも狙えるように調整したのだから、オトナならなおのこと、簡単だろう。それに、ちょっとした手心を加えてやってもいい。それはルールとは別問題の、サービスってやつだ……。


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