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 彼らは旅芸人の一座だ。祭りから祭りへと流れる旅を暮らしとしている。今回も次の興行先であるセーブターの町へ向かう道途であった。池の端で馬たちを休憩させている間、ギャロは祭りで商う細工物の材料を探しに出た。そこで倒れている美也子を見つけたのだ。

 移動の手段であり、旅家でもある質素な箱馬車に美也子を連れ帰ったギャロは、素直に異世界から来たと語る彼女を笑わなかった。もちろん蔑んだりしたわけでもない。

 彼がくだした判断は……

「それはよそで言うなよ」

「やっぱり、信じられない?」

「そうじゃない。そういう事例は昔話にも良くあるし、公式の記録も残っている。現に醜怪種の始祖は、そうやって渡ってきたとも言われているからな」

 公式に記録まで残されているというのに、なぜ隠す必要などあるのであろう。不服に曇った美也子の表情を、彼は聡く汲み取った。

「公式の記録が残っているのは王立の研究機関にとっつかまったからだ。俺は学が無いんで、あまり詳しいことは知らないがな。ひどくエグい人体実験に使われたらしい」

「なんの?」

「あんた達の世界へ渡る方法を見つけるためのだ」

 醜怪種は脆弱な種だ。身体能力は他のどの種族にも劣る。同種だけでコロニーを作らなくてはならないのは、この脆弱さが一因でもある。

 そんな脆弱種しか居ない世界があるのなら、侵攻はたやすいであろう。

「境を越える条件を研究するために飼われて、最後には骨の一本までばらされる。そんな目にあいたいか?」

 フルフルと否定に振られた頭を、水かきを広げた手が優しく撫でた。子ども扱いしてのことではない。彼女には、ギャロをそうさせる何かがあるのだ。

「醜怪種のコロニーから家出してきた跳ねっ返り娘ってことにしておけ」

「でも……」

 その先はどうすればいいのだろう。知るものとて無いこの世界に放り出されたら……

「解ってるから、そんな不安そうな顔するな」

 指先の吸盤が小さな鼻をきゅっと摘んだ。

「座長に話をつけてやる。俺たちについてくればいいさ」


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