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ギャロが横から口を挟む。
「ジャカジャカの実ってのは、俗称だな。コダマノミって名前の、よく川原なんかに生えている植物でな、芯を引っ張って抜けば、そうやって糸を通せる穴が開く。子供たちが遊びに使うにはちょうどいいんだ」
「これの取れる場所、教えてくれる?」
少女が首を振る。
「今はまだ、青くて使えないよ」
「コダマノミは秋のもんだからな」
「でも去年、集めたのがいっぱいあるから、あげる」
美也子の表情がぱあっと明るくなった。
「ほかにも、どんぐりとか、松ぼっくりとか……ナッツみたいな、硬い木の実……」
ギャロが助け舟を出す。
「クシーネや、コロコルだな」
「そう、そういうものが取れる場所に、案内してもらってもいい?」
蛙頭の少女が首をかしげた。
「いいけど、コダマノミみたいに穴は開いてないよ?」
「それは、このおじちゃんが加工してくれるから大丈夫よ」
「じゃあ、可愛い木の実がいっぱいあるところ、知ってる! 連れてってあげるから、ちょっとまって!」
目玉をぴょこんと動かして、少女は草むらに消えた。おそらく遊び仲間たちに、話を伝えに行ったのだろう……と思ったが、すぐにぴょこり、と草の間から顔を出す。
「おじちゃん、結婚腕輪は木の実なんかじゃだめよ。ちゃんとぴかぴかの石がついたやつじゃなくちゃ」
「ふがっ?」
ギャロは間抜けな声を上げて、土緑色の頬を紅潮させる。少女は「にひっ」と一声笑って、草むらに消えた。