表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/93

35

 あんなに泣いたからだろうか、眠りが浅い。

 指先まで重く感じるほどの眠りに体は支配されているのに、ぼんやりと覚醒した意識は彼の寝息を感じている。薄く目を開けば、いびきに揺れる大きな胸があった。

 濡肌種である彼の体温は少し低い。だが、心地よい温度だ。

 偽とはいえ、夫婦となった初めての夜なのに、何も無かった。今こうして抱きしめてくれているのも、父のように安らかな愛情で、なのだろう。

(お父さんってほどの年じゃないし、お兄ちゃんって呼ぶのも微妙かな)

 明日から、なんと呼ぼう。

(「あなた」って呼ばせては……くれないんだよね)

 だから「ギャロ」。今までと変わらない呼び方。

 それでも心は少しだけ近づいたと、そう思いたい。だって、今までよりも近くに彼の呼吸を感じる。

 どうせもとの世界に戻れないのなら、ゆっくりでいい。少しずつ彼の心に近づいていこう。いつの日か、本当に妻として認めてもらえるように。

(少し寝よう)

 そうと決めたなら、明日から色々とやることがある。まずはこの世界のことを覚えなくてはならないだろう。言葉も、文字も、風習だって、学ぶべきことは色々ある。

 この旅座の中できちんと生きていくための手立ても。

 少し沈み始めた意識の中に、いびきの音が心地よく響く。

(お休み、ギャロ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ