表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/93

33

「あんまり無茶するなよ。腰でも痛めたら、馬車旅はつらいぞ」

 「わっしょい」と大きな声が上がり、ギャロは担ぎ上げられた。実に手荒な祝福だ。

「ほら、花嫁さんも」

 女連中は美也子の手を引き、背中を押す。逃れようなどありはしない。ギャロと美也子は馬車の中に放り込まれてしまった。いつもは六人ほどで雑魚寝する賑やかな箱中も、二人では広すぎるぐらいにがらんとしている。

 ギャロはぼんやりと座っている美也子に声をかけた。

「おい」

「はいっ?」

 よほど緊張していたのだろう。驚いた顔と素っ頓狂な声。

「何もしない。そんなに怖がるな」

「そうよね、やっぱり」

 美也子の肩から力が抜ける。それは安堵というよりも、落胆のように見えた。

「この世界に来てから、ずっと思ってたの。醜怪種って言うぐらいだもん。やっぱり醜いのよね、私」

「そうじゃない。お前は本当にこの世界のことが解かってないなぁ」

 言葉を選ぶ隙を作ろうと、ギャロは大きく息を吸う。迂闊に褒めれば、このまま流れにのって抱くハメになりそうだ。それは本意ではない。

「醜怪種って呼び方は、他の種族から身を守るためのものだったと考えられている。自分の容貌を見せないために、醜い面をつけて暮らしていたからだとも云われていてな」

 ギャロは美也子の白い頬を見た。馬車の薄明かりにさえ染まる、柔かそうな頬を。

「つまり、そうまでしなきゃならんほど美しいんだ。神の次に美しい生き物、といわれている」

 なるほど、美也子は美しい。おそらく醜怪種の中でも、相当に美しい部類に違いない。だからなのだろう。触れたいと思うのも、不埒な行為に沈めてしまいたいのも……自制のきく俺ですらこうなのだから、誰かが守ってやらなくちゃならん、とギャロは思った。

「この婚姻は本当に形だけのものだ。都合のいいように使ってくれて構わない。つまり、気に食わない男に口説かれたら、既婚者だって言っちまえ。だけど、お前のメガネに叶う男がいたら……」

 そういえば、冗談めかしてはいたが、玉の輿狙いだと言っていたっけ。

(それまでの間でいい)

 抱いてしまおうか、仮初めにも夫婦なのだから。

(だめだ。それは俺の流儀に反する)

 ギャロは美也子の前にどっかりと腰を下ろした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ