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(冗談じゃない!)

 守ってやらなくてはいけない。ゴーリだけじゃなく、他の男たちからも。

美也子が男に振られたばかりだというのは、道中に聞いた身の上話で知っている。振られたばかりの女はチョロイ。別に馬鹿にしているわけではない。経験から学んだことだ。

 昨日まで耳元で囁かれていた愛が消えた喪失感は大きい。気の強い女ならなおのこと、表に弱みを見せようとしないぶん傷は深いのだ。そこに優しい言葉のひとつでも贈ってやれば、失った愛の代用を求めて簡単に体を擦り寄せる。

(だから、守ってやらなくちゃならん)

 美也子が男に媚びる姿など見たくない。あれは気の強いところがいいのだ。逆風に向かう花のように、揺すられながらも決して折れない、凛とした風情がいい。

 その花を誰かに手折られないためになら、どれほどウソを重ねても構わない。

「あれは俺の女だ。手を出すなとゴーリに言っておけ」

「だからさあ、仮祝言でも挙げちまえば、とりあえずあんたの女ってことになるだろ。表向きだけでも、さ」

「う……」

 土緑色の顔がぱあっと紅潮した。

「ミャーコがいいって言うんなら……俺は構わない」

 女衆は色めき立つ。

「さっそく準備しなくちゃ」

「ドレスは、私の若いころのがあるよ」

 嬉しそうな声をあげる座長に向かって、男衆が笑い含みの声を投げた。

「座長、あんた、自分の体格考えなよ」

「何言ってんだい。私だって若いころは濡肌種の華と呼ばれてたんだよ!」

「それにしたって、ミャーコとあんたじゃタッパが違うだろうよ」

 こうなってしまえば話は早い。祝い事の準備に手馴れた連中なのだから、当たり前だ。夕食には豪華な宴会料理が並び、とっておきの酒樽があけられた。


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