25/93
25
翌日から、美也子は『先生』になった。
こういった旅回りの座には子供がつきものである。もちろん旅中で生まれた子供もいるが、大半は一座に引き取られた孤児たちだ。
これが実に良く出来た救済のシステムだということを、美也子はつい最近知った。
身寄りも無く、働く術すらない子供に徒弟として寝食の保障を与える。軽業などは幼い頃からの修行が将来の芸に大きく関わってくるのだから、一座としても無駄な投資というわけではない。そんな子供たちの面倒をどこまで見るかは座長の性格によるところが大きいが、少なくともこの座では座長自らが教鞭を取って、最低限の読み書き計算を教えている。
美也子は算数の助手として抜擢された。
文字が見慣れない形だという以外の法則はあちらと同じだ。即ち十進法であり、乗除算、加減算も知っている。数字さえ覚えれば、子供の算術を教えるには困らない。