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人間の島

作者: 酢と冷房

あるところに一人の青年が居た。この男、かつては神童とすら謳われた者であるが、今はすっかり落ちぶれ元は彼と同じ若しくそれ以下であった人間どもを見上げ黒い物に包まれ立ちすくむだけの者に成り果てていた。

そんなある日、彼の元へ一通の手紙、この時彼は激しく驚愕した。そもそもにすっかり落ちぶれ底の方を這いつくばっていた彼に手紙を送る者など居ないというのもあるが問題はその手紙の中身だったのだ。

 「初めに、私は神である。我々人間は文化の変化などによりすっかり人間らしさを欠いてしまった。故に人間らしい人間を集め人間らしい人間の島を作る。」と

 いくら落ちぶれたと言えど彼は本来頭の良い人物である。

いきなりこんなにも胡散臭い手紙、誰が信じよう。そもそも神というものが先ず信用ならないと感じた。

 しかし、これまた不思議な物で有る。この日から起こる摩訶不思議な出来事、そして世の中の要人、企業の最高権力者、所謂成功者と呼ばれる立派な人々がこの手紙に導かれかの人間の島へと消えているらしい。

正直なところ、偉い人間が半強制的に連れ去られるというのは聊か物騒な気もしたが、名の価値にこだわりそれ以外は二の次という彼にとっては全く気になるものでなかった。

 これは本物だと確信した男はその長年使用しておらず誇り一つない埃をかぶったその脳を回し始めた。

 まず男は立派な人間に成るにはと精一杯考えた。結果彼は様々な汚い事に手を染めたものの、たった半年でそれまでの彼とは見違えるほどの金持ちへと大成した。

すると突然目の前に海が広がり、そして一隻の金色に輝く船が現れた。

 「おお、これで私も人間の島に行ける。」

彼は念願叶ったりと叫び、船にのりこみ波に揺られて幾時間、やがて岸が見えてくる。

その岸に見えるは前述の成功者が大勢。彼もそのひとりに成れると胸を弾ませる。しかし、その瞬間、そう言ったもの以外の有名人も多数居る事に気付く。やれ、汚職事件で脚光を浴びた政治家だの、殺人犯だのと言った具合に。しかしその殺人犯の中にシリアルキラーが居ないのをみてその疑問は確信に変わる。人間らしい人間の島、彼は漸くその意味を咀嚼し、後悔したころにはもう遅い。

 その神は神と言えど、極一部除き人間の本心をみる力などなかったのでこうして人間らしい人間をあぶりだしたのだと。

彼は陸におろされたのち、ただ茫然と自分の元来た方を見つめるのだった。


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