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アシィのお楽しみ




 本日の天気は快晴で、洗濯物が良く乾いた。シスカを手伝ってアシィも一緒に片づけをしていた。

シスカはここに来てから一番アシィの傍についてくれている女性で、きつめな顔立ちとは反対に大変面倒見が良い人だった。<踊る猫の髭>では家事を一手に引き受けていて、ディグラムですら逆らえないことがあるらしい。

 家事の手伝いがしたいと言い出したアシィに頷いて、やり方の分からない彼女に一つ一つ丁寧に教えてくれたのも彼女だ。おかげでここに来た当初は洗濯を取り込むことすらやったことがなかった彼女が、今では包丁を使って料理の手伝いができるようにまでなった。


「さて、この後は夕飯の買い物ね。アシィも一緒に行きましょう?」


 洗濯物を全て片付けると、シスカが買い物籠を取りながらアシィを誘った。


「行きます!あ、でもディグラムには?」

「ディーグに許可をとってあるから大丈夫よ。荷物もちにアサファも一緒よ?」


 買い物に行くなら、ディグラムに断らなければならない、と言ったアシィにシスカは問題ない、と笑った。

 身を隠しているアシィの立場としては、外を歩き回らないに越したことはない。どこで敵に見つかるか分からないのだから、当然の用心だ。 

だが、それではあまりにも窮屈だとシスカがディグラムに直談判し、ディグラムも確かに、と条件をつけて同意をした。その条件とは出かけるときは、必ずディグラムに許可を取ること、ラスアを除く誰かが二人以上一緒であること、帰宅時間は遅くならないことなどであった。もちろんそれに異論があるはずがなく、それ以来買い物などにシスカは一緒にアシィを連れて行ってくれていた。

 初めて買い物に出かけたときアシィは一緒に出かけたラスア、シスカ、ロイグランが唖然とするほど浮かれて、嬉しそうだった。

 これまで王宮で生活を送り、ほとんどそこから出たことのないアシィにとって初めて歩く街は彼女の好奇心を大いに刺激した。一緒にいるラスアたちにあれ何、これ何?と急がしく聞き、興味深そうに店頭に並んだ商品を見つめていた。


「それじゃあ、支度をしましょうか。あまり遅いとアサファに怒られてしまうし」

「はい!!」


 元気の良いアシィにシスカがくすっと笑いをこぼした。二人でシスカの部屋へ向かう。護衛のためアシィはシスカの部屋で寝起きを共にしている。当然彼女の衣服などもシスカの部屋に置かれていた。

 部屋に入るとアシィは可愛らしい花柄のワンピースから、男の子が着るような色合いをした緑のロングシャツとシンプルな茶色の長ズボンへと着替える。アシィが着替えを終えるとシスカが少女をドレッサーへと座らせ高く一つ結びにしているふんわりとした髪をといて低い位置で結びなおす。結んだ髪の上から薄手のパーカーを着て伊達眼鏡をかけ、ベレー帽を被り、最後に財布やハンカチなどが入った小さなウェストポーチをつければ可愛らしい男の子の完成だ。

 まさか、王女がこんな格好をするとは想像し難いだろうというシスカの見立てはあたった。遠目にはアシィだと気づきにくく、以来これが外出時の出で立ちとなった。本人は始めて着る男の子の服に嫌がるどころか喜んでいて、全く問題は起こらなかった。

 室内の戸締りを二人で確認し、書店へ向かう。三階の事務所に入るとアサファが待っており、二人に気づいてソファから立ち上がった。


「お待たせ、アサファ」

「ああ」


 シスカに声をかけられてアサファは立ち上がると彼女から買い物籠を受け取る。

アサファの短すぎる受け答えに、アシィは始め途惑ったものだが、しばらく生活を共にして彼が極端に言葉の少ない人だと分かってからは気にならなくなった。無口ではあるが、アシィが分からなかったり失敗したりして困っていると、何も言わずに助けてくれたり頭をなでて励ましてくれたりととても優し

くしてもらって、すっかりアサファに懐いてしまっていた。


「それじゃ、ディーグちょっと行ってくるわ」

「いってきます」

「はい、気をつけて行ってらっしゃい」


 いつもの指定席であるソファで本を読んでいるディグラムに挨拶をして、三人で連れ立って事務所から出た。

 



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